「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】 | SFgo 平川 37周目90度コーナー | 4枚目の写真(全6枚)

「「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】」の1枚目の画像 スタートして3-4コーナーに入るところではすでにチームメイト同士の接近攻防になっていた平川と関口。このせめぎ合いの中でいったんは関口が前に出た。この写真の2周目・3コーナーでは平川車のOTS表示LEDが消えているが、これは前回の使用終了から100秒間の作動不可時間・スロー点滅の消灯状態を捉えた瞬間。この先でOTSを発動させ、まずは関口から5番手のポジションを取り返す。後方に続くのは、牧野、大湯。
「「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】」の2枚目の画像 規則上、最も早い10周完了のタイミングでピットに飛び込んできた関口。ここでタイヤを履き替え、車群から一度離れて前が空いた状況でペースアップ、後からピットイン、タイヤ交換する車両・ドライバーがコースに戻ったところでは「前にいる」ことを狙った作戦を選んだ。でもここから27周をこのタイヤで走り切らなければならない。
「「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】」の3枚目の画像 この週末・2戦目、第8戦がスタート。ポールシッターの大湯を先頭に1コーナーへアプローチしてゆくこの瞬間に、すでに赤い野尻車が2番手に上がっていて、スタートで一瞬、蹴り出しが悪かった青のフェネストラズ車の進路をイン側(向かって左)に押さえ込みつつターンイン。その外側斜め後ろにはフェネストラズのチームメイト、山下が4番目のグリッドからマシンを外に持ち出して順位を上げようとしている。この4車に迫るのは黒のチーム・インパル2車、コース中央側に平川、そのアウト側後方に関口がポジションを取っている。
「「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】」の4枚目の画像 JRPが開発中、来年には正式リリースを予定しているアプリ「SFgo」のオンボード映像と車両状態データで、平川の視点から関口との最終ラップ、勝負を分けた90度コーナーの攻防を見る。OTSを使い切った関口に対して、ちょうどこのダウンヒルストレート終端で「残り時間ゼロ」になるタイミングでOTSを発動した平川。さすがに本来の燃料流量90kg/hに対して+10kg/hの効果、すなわちパワーアップは大きく、ストレート後半でみるみる追いつき、並びかけられる速度差で90度コーナーへ。ここで関口はイン側を押さえてアプローチしたので、平川はアウト側から並走状態に持ち込む。オンボード映像では両者の差はほとんどフロントタイヤの直径分で、しかもタイヤとタイヤが接触しないぎりぎりの位置をお互いに保持してブレーキングからターンインへと向かったことがわかる。しかしここでわずかであっても前を取った関口は譲らず、回り込みでは外側に1車幅分を残したものの、そこから立ち上がりに向かって平川の斜め前をアウトへと、ここでの通常のコーナリングラインを描き、平川は縁石を跨いでコースアウトの限界で踏ん張ったが、さすがに脱出加速を強められず、関口車の後方に回るしかなかった。SFgoの車両状態表示については写真内書き込みをご覧ください。
「「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】」の5枚目の画像 優勝した関口が各周回の計時ラインを通過した瞬間を基準に、他の各車がどのくらいの差でその周回を終えたか、各周の順位とお互いの間隔(時間差)を同時に表したグラフ。ギャップチャートとも言う。「pit*(車番)」はそれぞれがピットストップ(タイヤ交換)に入った周回。10周完了でタイヤ交換した関口がその“一撃”グリップを活かしてペースアップしたことで、この時、関口の前方にいた(時間差がマイナス)車両は皆、毎周、関口に差を詰められている。もてぎのSF戦では、ピットロード走行・停止発進によるロスタイムが23〜24秒、タイヤ交換の作業時間と冷間状態で履いたタイヤの温度・内圧が上がり本来のグリップを発揮するまでのロスを合わせて30秒程度を、コースを走る車両に対して失う。そこを考えると、大湯、野尻、フェネストラズの先行グループは、関口のペースアップを確認してからピットストップに動いたことで、ポジションを逆転されてしまっている。その各車がピットインしたところで先頭に立った平川は23〜29周目にかけて関口より速い周回で時間差を少し広げたがピットストップにはまだ十分ではなく、しかしそこでフレッシュなタイヤに履き替えてから野尻、牧野を次々に攻略。最終盤3周で関口との直接対決に持ち込むに至った。つまり関口と平川は、タイヤ交換に関して「対称的」な戦略を採り、しかし37周しての時間差は「ほぼゼロ」だったのである。
「「これこそモーターレーシング!」記憶に残る名勝負 ~両角岳彦のデータと観察で“読み解く”自動車競争【スーパーフォーミュラ2022年第8戦・モビリティリゾートもてぎ】」の6枚目の画像 関口、平川以下、決勝で10位までに入ったドライバー+車両が、37周をどんなラップタイムで周回したかを追ったグラフ。「pit*(車番)」はそれぞれがタイヤ交換ピットストップに入った周回を示す。もてぎは計時ラインがピットロード出口側にあるので、ピットに入った周回のタイムが大幅に延びる。スタートして3〜9週にかけてトップを走る大湯のペースが上がらず、その後方を走る各車も徐々にラップタイムが落ちていっている。ここで平川との攻防・この日1回目が落ち着いて6番手にいた関口+チームはピットストップを決断。タイヤを履き替えて“空いた”ところに戻り、一気にペースを上げた。この12〜15周目の速いラップタイム連発が「鍵」で、大湯に前を押さえられる形で10〜15周を走った野尻+チームは、この関口への“反応”が数周遅れたことで、ピットストップで逆転を許してしまう。その一方で平川は1セット目のタイヤで18〜29周目にかけてタイヤを履き替えている関口とほぼ同じラップタイムを続けている。そして終盤に至ってタイヤ交換した平川、またフェネストラズ、佐藤、坪井はそのタイヤが暖まってからラップタイムを一気に上げている。雨上がりの路面を各車が周回を重ねたことで、後半は路面に「ラバーが乗る」状態になっていったことがうかがえる。
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