BMW巨艦ツアラー「K1600GT」の新型に試乗。 高速巡航から街乗りまで、6気筒ビッグバイクを感じさせないスムーズさ

■先進の電子制御でパワー特性やサスの動きが絶品

BMWのバイクブランド、BMWモトラッドの大型ツアラー「K1600」シリーズの中で、最もスポーティなスタイルを持つモデルが「K1600GT」。

1648cc・6気筒のビッグエンジンを搭載し、扱いやすく軽快に走れるパワー特性や数々の豪華装備により、長距離ツーリングで快適な走りを実現する人気モデルです。

BMW新型K1600GT試乗
K1600GTのフロントビュー

その2022年モデルに、JAIA(日本自動車輸入組合)主催の輸入2輪車試乗会で試乗してきました。

2022年4月22日に発売された新型では、エンジンの出力特性を変更、最新の電子制御式サスペンションや、フルLEDアダプティブ・ヘッドライトを採用するなど、より装備がグレードアップされています。

さて、実際に新型のK1600GTはどんな乗り味になったのでしょう? 早速レポートしますね。

●BMWのK1600シリーズとは?

K1600シリーズは、1980年代から続くBMW伝統のツアラー「K」の称号を持つプレミアムなモデルです。

ラインアップには、今回試乗したK1600GTに加え、より快適性を追求した「K1600GTL」、低いリヤセクションを持つバガー・スタイルの「K1600B」、K1600Bにトップケースなどを装備した派生モデル「K1600グランドアメリカ」の4タイプがあります。

BMW新型K1600GT試乗
K1600GTのリヤビュー

いずれも、ダイナミックな走りとラグジュアリーな装備を誇り、快適で余裕あるツーリングが楽しめますが、なかでも、俊敏でダイナミックな走りが魅力なのがK1600GT。

1648cc・6気筒という巨大なエンジンを搭載しながらも、スポーティなスタイルや走りが魅力のモデルです。

2022年モデルのK1600シリーズでは、まず、並列6気筒エンジンをアップデート。新しいエンジンコントロールや2つのノックセンサーを採用、ブロードバンド・ラムダ・プローブを2つ追加するなどの変更を行っています。

BMW新型K1600GT試乗
K1600GTの非常にコンパクトな6気筒エンジン

これらにより燃料消費量を抑え、WMTCモード値で16.95km/Lという優れた燃費性能を実現。また、欧州における最新の排気ガス規制ユーロ5にも対応させています。

さらに、パワー特性も改良。最高出力は、従来モデルと同じ160ps(118kW)ですが、最高出力に達するまでの回転数を、以前よりも1000rpm低い6750rpmに設定。最大トルクは従来の17.8kgf-m(175Nm)から18.3kgf-m(180Nm)に増大(回転数は従来通り5250rpm)させることで、よりトルクフルで強力な加速を実現します。

BMW新型K1600GT試乗
試乗車のフロントホイールはオプションの鍛造製を装備

ほかにも、新型では、サスペンションに次世代型の「ダイナミックESA(電子制御式サスペンション調整)」を装備。デイタイムランニングライトを備えた新しいフルLEDヘッドライトには、旋回式の「アダプティブ・ヘッドライト」も採用し、夜間の高い視認性も実現します。

●大柄なスタイルは貫禄十分

シリーズ共通のアップデートが施されたK1600GT。その外観は、ほかの兄弟車と比べるとスポーティですが、やはり6気筒エンジンに大型スクリーンを備えたフルカウルモデルだけに、貫禄は十分。なお、車体サイズは、全長2310mm×全高1440-1600mm×全幅1000mmです。

BMW新型K1600GT試乗
アップライトなセパレート式ハンドルを採用。燃料タンク容量は約26.5 L

しかも、車両重量が350kgもあるということで、停車時の取り回しでは、立ちゴケしないように気を遣います。

実際、車体を起こして押し歩きをしようとすると、動き出すまでが大変。ハンドルがかなり重いし、車体も気合いを入れて押さないと動かない感じ。駐車場などでは、エンジンを始動させて、ゆっくりと取り回した方がよさそうです。

ちなみに、K1600GTには、電動式のバック機能もあります。ギヤはニュートラルのままで左ハンドルのグリップ付け根にある「R」ボタンを押すとバックモードに代わり、セルスイッチを押すとセルモーターの駆動力でバックする仕組みです。

BMW新型K1600GT試乗
バックする際は、左ハンドルのRボタンを押す

国産車でも、たとえばホンダの「ゴールドウイング」などには同様の装備がありますよね。300kgを超えるバイクでは、車体を後方へ押し歩きするのはかなり困難ですから、まさに必需品といえる機能です。

●意外に良好な足着き性

車体に乗車してみると、意外に足着き性が良好なことに驚きます。身長165cm、体重59kgの筆者でも、片足なら少しカカトが浮く程度ですから、停車時に足を着くときも、バランスを崩すということはなかったですね。信号待ちなどでも、安心です。

BMW新型K1600GT試乗
乗車ポジション。ちなみに、シート高は810-830mm

エンジンを始動し、スタートすると、低速からモリモリと豊かなトルクが発生し、グングンと加速します。しかも、アクセル開度に対し、リニアですが、かなりスムーズにパワーが出る感じ。昔の大排気量車のようなドッカンといきなりパワーが出る感じは皆無で、中低速域でもコントロールしやすく、かなりソフトな乗り味を味わえます。

そして、高速域でクルーズする際は、1648ccの6気筒エンジンによる余裕ある走りを堪能できます。シートのすわり心地もよく、このモデルが得意とする長距離ツーリングでも高い快適性を味わえることが伺えます。

BMW新型K1600GT試乗
最も得意な高速クルーズは高い快適性が魅力

ちなみに、K1600GTには、ウインドスクリーンを上下できる機能もあります。やはり左ハンドルのグリップ付け根にスイッチがあり、電動で稼働する仕組みで、ライダーの体格や風の吹く状況などに応じて調整が可能。これにより、体に走行風を受けづらく、疲労度の軽減に貢献します。

●タイトターンでも軽快

コーナーを曲がる際も、大きな車体のわりには、軽快な旋回性能をみせることも驚きのひとつ。タイトターンをする時でも、あまり重さが気にならないため、市街地の細い路地などを曲がる時でも、スムーズに走れそうです。

BMW新型K1600GT試乗
のんびり走っても楽しいK1600GT

また、ワインディングのS字コーナーを走るときのように、車体を左右に切り返す際も、アクセルのオンオフで車体がうまく向きを変えてくれて、頻繁なブレーキ操作も不要なことも好印象でした。

これは、改良されたダイナミックESAの効果も大きいのでしょう。これは、走行条件や操作に合わせ、自動的にダンピング調整を行う電子制御式サスペンション調整機構です。

加速や減速、サスペンションの状況など、車載センサーがライディング状況を検知して最適な減衰力を提供することで、安定したハンドリングと快適な乗り心地を実現します。

BMW新型K1600GT試乗
K1600GTの試乗シーン

また、ブレーキは、前後ともに重い車体を十分に減速できる制動力を持ち、コントロール性も抜群。さらに、このモデルには、ギアシフトアシスタントプロも標準装備されているため、クラッチ操作なしでシフトのアップ、ダウンが可能な点もよかったですね。

いわゆるクイックシフターと呼ばれる機能で、多くの装着モデルでは、シフトアップの際にエンジン回転数をある程度上げておく必要があります。ところが、BMWのギアシフトアシスタントプロは、エンジン回転数に関係なくシフトアップとダウンが可能。

また、新たにエンジン・ドラッグ・トルク・コントロールを採用したことで、急減速時など、強いエンジンブレーキがかかる時に起こる後輪のロックを制御し、より安全性を向上させています。

●安全性能や快適装備も進化

さらに、K1600GTには、独自のトラクションコントロール機能「DTC」、レイン、ロード、ダイナミックから選択できるライディングモードなどの電子制御システムも搭載。これらにより、天候や路面状況などに応じ、快適で安全な走行が可能です。

BMW新型K1600GT試乗
新型フルLEDヘッドライトには、旋回式アダプティブ・ヘッドライトも装備

また、新しいフルLEDヘッドライトには、旋回式のアダプティブヘッドライトも採用しています。これは、ロービームLEDヘッドライトの照射を、バンク角に応じてカーブに向ける機構。また、ブレーキングや加速といった車両状態に応じて、ヘッドライトユニット全体が自動で旋回(プラス・マイナス2度)する機能も持たせています。

今回は昼間の試乗だったため試すことはできませんでしたが、4輪車でも、高級モデルなどにしか採用されていないアダプティブヘッドライトが付いていることも注目。まさに、プレミアムなモデルならではの装備ですね。

新型K1600GTには、ほかにも、まるでクルマのディスプレイオーディオのような10.25インチTFTカラー・ディスプレイを採用したメーターを採用。オプションでは、新型のオーディオシステム2.0も用意され、走行中でも迫力のサウンドを楽しむことができます。

BMW新型K1600GT試乗
10.25インチTFTカラー・ディスプレイを採用したメーター

このように、バイク旅に最適な走りや豪華装備を持つモデルがK1600GT。ツーリング好きなら、いつかは所有してみたい1台だと思います。価格(税込)は342万1000円です。

(文:平塚 直樹/写真:小林和久)

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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