■マスク氏の総資産はインドGDPの10%に匹敵する28兆円
世界一の富豪とされるテスラとスペースXの最高経営責任者、イーロン・マスク氏が、SNSサービス「ツイッター」を買収することになりました。買収予想額はおよそ440億ドル(約5.6兆円)。東京都全体の1年間の税収とほぼ同じ金額ですが、マスク氏の資産は推定28兆円(インドのGDPの10%!)とのことですから、痛みはまるでないでしょう(日本の銀行を含む融資団から数日で3兆円が集まったそうです)。
思えば3月25日にマスク氏が「ツイッターは言論の自由を守っていない」とつぶやいたことがすべての始まりでした。4月4日には同氏がツイッター株の9.2%を取得したことが明らかとなり、ツイッター社の取締役に起用されるも、マスク氏がこれを辞退。直後に同氏がツイッターを買収しようとしていることが明らかになります。対するツイッター社は「ポイズンピル(毒薬条項)」というプランで買収阻止に動きますが、どうやらマスク氏を敵に回してまでツイッターを支えようという支持者が現れなかった様子で、急転直下、マスク氏の買収提案を飲むことが決まりました。「金持ちケンカせず」ということわざ通りですね。
●台数でマツダを抜く勢いのテスラも絶好調
ちなみにイーロン・マスク氏がCEOを務めるテスラですが、直近の決算は絶好調。2022年第1四半期には30万台を売り上げ、今年の年間販売台数はマツダを抜くといわれています。
3月末にはドイツ・ベルリン、4月7日にはカリフォルニアに次ぐアメリカ2番目のギガファクトリー、テキサス工場が稼動し、年間生産台数200万台の体制が整いました。BMW(MINIを除く)ブランドの2021年販売台数221万台が見えてくる数字ですね。ツイッター買収を受けて株価が上がれば、マスク氏の借りた3兆円もすぐ穴埋めできちゃう勢いです。
いっぽうのツイッターですが、一時より減ったとはいえ、全世界で2億人以上のアクティブユーザーを抱える世界的なSNS。2021年は前年比37%増となる51億ドル(約5900億円)を売り上げましたが、株主訴訟の和解金や人件費などがかさみ、純損益は赤字とのこと。
とはいえ1日2億件ともいわれるツイート(つぶやき)はデータの宝庫と言われ、すでにあちこちのマーケティングなどに用いられています。ひょっとしたらテスラも、ツイッターでつぶやかれる事故や渋滞の情報を取り込み、自社で手掛ける自動運転「FSD」に反映したりするかもしれませんね。
広告などの収益化などには課題が残るといわれるツイッター。イーロン・マスク氏の今後の舵取りに注目しましょう。
(角田伸幸)