■2025年末まで従来どおり、ブッフローエ工場で生産
「ALPINA(アルピナ)」といえば、エンジンを中心にBMW各モデルのチューナーとして揺るぎない地位を確立しています。日本でのアルピナ人気も高く、いつかはアルピナに乗りたいというBMWやアルピナのファンも多いはず。1965年1月1日に設立されたアルピナは、2021年には約2000台の車両が本拠地のブッフローエ工場でラインオフされ、お膝元のドイツ、欧州のほか、日本、アメリカや中東諸国も重要な市場となっています。
このほど、BMW AGは、ドイツ本国において「アルピナ」ブランドを取得し、ラグジュアリーカーセグメントを強化すると発表しました。
なお、今回の締結は、独占禁止法規制当局からの承認など、依然としてさまざまな停止条件の対象になっているそうで、株式の取得は含まれないそう。
BMW AGの顧客、ブランド、販売を担当する取締役会メンバーのピーター・ノータ氏は、「ALPINAは50年以上にわたり、ディテールへのこだわりを通じて、最高品質のクルマとして評価されてきました。BMWグループも同じような熱い想いを抱いています。私たちBMWグループは、アルピナの商標権を取得し、この歴史あるブランドをBMWファミリーに迎えることをうれしく思います」とコメントしています。
もちろん、アルピナ側のメリットも大きく、「CASE」の中でも「E=電動化」への転換や世界的な規制強化に少量生産メーカーであるアルピナも対応する必要があります。アルピナの経営陣は、事業を長期にわたって維持できるように戦略的な再編を敢行することで対応する構えです。
アルピナの共同経営者の1人であるアンドレアス・ボーフェンジーペン氏は、「私たちは、自動車産業が直面している課題を早期に把握し、同社とファミリー企業にとって正しい進路を定めようとしていて、新しいページの始まりになります。アルピナ・ブランド、当社自体にも大きな魅力があります。私たちは、ALPINAをどのようなメーカーにも売却はしないという意識的な決断を下したわけですが、そうした決断ができたのは、これまでBMWとALPINAが数十年にわたって共に取り組み、互いに信頼してきたからです。そのため、ALPINAブランドが将来的にBMWグループにより管理されることは、戦略的に正しい判断だといえます」と今回のアルピナ傘下入りについて触れています。
気になるのは、今後のアルピナの行方でしょう。2025年末までは従来どおり、エンジニアリングの専門知識を活かし、これまでの協力関係の枠内でBMW ALPINAモデルの開発、製造、販売を継続するそう。これにより、ベースのBMW車には、エンジン、トランスミッション、シャーシ、エアロダイナミクス、インテリア装備を含めてアルピナのチームによって幅広い変更が加えられることになるそうです。
なお、BMWアルピナ各モデルは、BMWの生産ラインで組み立てられたのち、顧客のオーダーを反映したインテリアなどを含め、車両の最終組立てはアルピナのブッフローエ工場で行われることになります。また、既存のアルピナ仕様のサービス、パーツやアクセサリー事業も長期的にブッフローエの拠点で継続されるそう。
ブッフローエ以外でのBMW向けの既存の開発サービス事業は、両社間の戦略的協力関係の一環としてさらに拡充が図られる予定です。
なお、ALPINAドイツ本社のもう1つのビジネス、ワイン事業も従来どおり行われます。
今回、BMWがALPINAの商標権を取得し、BMW ALPINAの開発、製造、販売は、2025年末で終了になります。BMWは、今後数年間にわたってブッフローエ拠点で働く人員を必要に応じて調整できるよう支援していくそう。具体的には、BMWグループでポストを用意するほか、サプライヤーや開発パートナーでの採用も検討してもらえるようサポートする予定としています。
(塚田 勝弘)