なぜ「カローラクロス」なのか。全幅1800mm超のSUVでも「カローラ」の名前を使った理由とは?

■カローラというブランドを長く続けていくためにはSUVが必要になった、という見方もできる

●トヨタのSUVは全10モデル。カローラクロスの存在する意味とは?

TOYOTA COROLLACROSS
アクティブをキーワードにしたスタイリング。前後フェンダーのキャラクターラインは個性的だ

トヨタから「カローラクロス」が登場しました。すでに海外ではローンチされていたモデルですが、日本仕様に専用のフロントマスクを与えられ、フロントグリルの中央にはカローラに共通のCエンブレムを配するなど、カローラ・ファミリーとして十分に意識されたモデルになっています。

とはいえ、ボディサイズは全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mmとグローバルサイズ。とくに全幅が1800mm超となっているのは、日本のカローラとしては大き過ぎると感じるかもしれません。

それにしても、トヨタの日本向けSUVはこれにて10モデルになります。小さいほうからいえば、ライズ、ヤリスクロスがあって、そこにカローラクロスが加わったというカタチ。さらにC-HR、RAV4、ハリアー、RAV4PHV、ランドクルーザープラド、ランドクルーザー、そしてハイラックスといった具合です。

ここまでSUVラインナップが充実していれば、カローラクロスは必要ないのでは?と思いたくもなりますが、開発者はそうではないといいます。

●カローラクロスはカローラを長く続けていくための戦略

TOYOTA COROLLACROSS mech
基本設計はGA-Cプラットフォームを熟成させたもの。リヤ・サスペンションがトーションビームになっているのが特徴

フロントグリルに「C」のカローラエンブレムを残したのは、カローラ・ブランドを大事にしているからであり、最初からカローラ・シリーズとしてふさわしい価格帯(199.9万円~319.9万円)を念頭において開発を進めてきたといいます。それは『カローラを長く続けていく』ことを考えてのことだったのです。

世界の自動車市場はもちろん、日本においてもSUVは一大勢力になっています。もはや一過性の流行ではなく、SUVがクルマの定番のスタイルになっているともいえます。

今回は、カローラの派生モデルとして生まれたカローラクロスですが、将来的にはSUVスタイルのカローラクロスが本流となり、セダンやハッチバック、ツーリングワゴンが派生モデルになる可能性も否定できません。

ある意味、カローラが一線級のモデルであり続けるためには、SUVをラインナップに加えることは必然なのです。あえて名前は出しませんが、セダンこそ伝統のカタチとばかりにこだわって、そのシェアを失ってきたモデルは枚挙にいとまがありません。このタイミングで、カローラ・ファミリーとしてカローラクロスを登場させる必要があったというわけです。

TOYOTA COROLLACROSS
Aピラーを細くするなど開放感を意識したキャビン。SUVらしい高いアイポイントも魅力

ですから、カローラクロスは「カローラ」という名前に期待する要素を満たすモデルとして開発されました。冒頭で記したように、ボディサイズこそ国内仕様のカローラとして考えると大きい印象はありますが、それはファミリーカーとしての使い勝手を実現するために必要だったからです。

1.8Lハイブリッドシステムは、カローラに期待する燃費性能(FFで26.2km/L)を実現していますが、これもカローラに期待させる性能といえます。それでいて、先進運転支援システムである「トヨタセーフティセンス」は全車に標準装備とするなど、日本のユーザーニーズにしっかりと合致させています。

●顔を日本仕様にしたのはなぜなのか?

フロントマスクを日本仕様に作り込んだのは、海外ユーザーと異なり、日本のユーザーは”カローラ”に洗練や上質を求めるからだといいます。具体的には、海外仕様のデザインは『アーバン・タフネス』を目指したのに対して、日本のカローラクロスは『アーバン・アクティブ』といった風に、デザインキーワードからして変えているのです。

TOYOTA COROLLACROSS
日本のユーザーニーズに合わせたフロントマスクを与えられた。デザインキーワードは「アーバン・アクティブ」となっている

だからといって、オーソドックスに作り込んできたわけではありません。

その象徴といえるのが、ボディサイドを見た時に印象的な前後フェンダーのキャラクターラインでしょう。U字を横にして前後に向き合わせたような造形は、インパクト大。カローラクロスというSUVモデルをカローラ・ファミリーに加えるというチャレンジへの強い気持ちを、スタイリングで示しています。

はたして、カローラクロスは新しいファミリーカーとして日本市場に浸透していくのでしょうか。月販5000台という目標を安定してクリアしていくかどうか、今後の販売状況に注目といえそうです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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