■BMWはディーゼル車のみに48Vマイルドハイブリッドを採用
着々とクルマの電動化が加速化する中で、欧州車が採用している48Vマイルドハイブリッドシステムは、最も手軽でリーズナブルな電動化技術と言えるでしょう。
メルセデス・ベンツやアウディ、ランドローバーといったプレミアムブランドではガソリンだけでなく、ディーゼル車にもこの48Vマイルドハイブリッドシステムを採用しています。
しかし、BMWだけは48Vマイルドハイブリッドシステムはディーゼル車のみに搭載し差別化を図っています。
今回は2021年2月に導入された48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したBMW X6 xDrive35d Mスポーツに試乗しましたので、インプレッションを紹介しましょう。
現在では珍しくなくなったクーペスタイルのSUV。このパイオニアと言えるのが、2008年に登場した初代X6です。現行型となる3代目モデルは、2019年12月に導入されました。
現行X6のボディサイズは全長4945mm×全幅2005mm×全高1695mmという圧倒的な存在感を誇ります。そして、この大きなボディで特徴的なのが、クーペらしい流麗なルーフラインです。
またBMWのアイコンと言えばキドニーグリルですが、現行型X6ではBMWとして初めて搭載された、キドニーグリルのライトアップ機能「キドニーグリルアイコニックグロー」を採用。
キドニーグリルを輝かせることで、より立体的に見せると共に、夜間でのドライブなどで、かつてない存在感を演出します。
一方、リアデザインは、細長く伸びたL字型のリアライトを採用することにより、ワイドな印象を与えると共に、縦に厚みのあるどっしりとしたシルエットを形成しています。
インテリアは、ドライバーが自由にカスタマイズすることが 可能な10.25インチのコントロール・ディスプレイと、12.3インチのフル・デジタル・メーター・パネルを装備し、機能性を高めました。
シートは、表面の加工がすっきりと上品に見え、座り心地が柔らかいヴァーネスカ・レザーを標準装備しています。
X6 xDrive35d Mスポーツに搭載されているエンジンは、最高出力286ps・最大トルク650Nmを発生する3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンです。この高トルクのディーゼルターボエンジンに、48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載しています。
マイルドハイブリッドシステムは、高い能力で制動エネルギー回生を行う48Vスターター・ジェネレーターと、それによって発電された電気を蓄積する追加のバッテリーで構成されます。
48Vバッテリーは電気で作動する機能に電力を供給するだけでなく、電力をスターター・ジェネレーターに戻し、スターター・ジェネレーターが電気駆動システムとして作動することで、追加の駆動力の発生のためにもエネルギーを供給し、内燃エンジンの負荷を軽減すると共に、効率を最適化。
さらに、ジェネレーターは電気を使って加速をブースト(最大11ps)することで、発進時および加速中にダイナミックな出力特性をサポートします。 また、コースティング機能も採用することによっても、燃費効率を高めているのが特徴です。
●これってディーゼル? まるでガソリン車のような静粛性とスムーズな走行フィール
実際に試乗してみると、まず静粛性の高さに驚かされます。ディーゼル特有のノイズは全く車内に入ってきませし、振動もありません。元々ビッグトルクのディーゼルターボなので加速性能は優れていますが、マイルドハイブリッドの搭載により、アクセルペダルを踏んだ時のレスポンスが素早くなり、さらにスムーズさが向上。まるでガソリン車のようなフィーリングです。
レスポンス良く、よりスムーズな加速が魅力の3Lディーゼルターボ+48Vのマイルドハイブリッドシステム。燃費性能もWLTCモードで12.4km/Lと優れています。
特に進行方向の信号が赤で、徐々に減速していき、信号が青に変わり再加速するといったシーンでのレスポンスの速さ、加速のスムーズさ、そして高い静粛性はディーゼルエンジンであることを忘れるほどの性能を発揮します。
スタイリッシュなクーペデザインを採用していますが、リアシートの居住性は十分に確保されており、ラゲッジ容量はリアシートを使用した状態で580L。リアシートをすべて畳むと最大で1525Lまで拡大し、高いユーティリティ性を実現していました。まさにX6は、ラグジュアリーさと実用性の高さを両立させたスタイリッシュなクーペSUVのフラッグシップモデルと言えるでしょう。
BMWは電動化の方向性としては、フルEVのiシリーズを続々導入することが発表されています。既存のガソリン車はディーゼルエンジンのみ48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載し、ガソリンエンジンはPHEVというエンジンによって電動化の方向性をエンジンによって変えているのは、走りにこだわるBMWらしさと言えるでしょう。
(文・写真:萩原 文博)