■マツダやBMWも開発してきた水素エンジン
2021年4月22日、トヨタは「水素エンジン」の技術開発に取り組むと表明しました。
国内での水素エンジン開発は、2021年1月に三菱重工エンジン&ターボチャージャが開発を推進していると明らかにしています。三菱重工の水素エンジン(発電用エンジン)の開発は、従来のディーゼルエンジンやガスエンジンを母体とした水素エンジンの開発と実用化に向けた取り組みの一環として、産業技術総合研究所との共同研究で、運転試験を実施しています。
また、マツダも水素ロータリーエンジン(RENESIS水素ロータリーエンジン)を開発し、RX-8、プレマシーを使った試作車をテストしていました。BMWもかつて手がけていた「BMW hydrogen 7」を開発し、リース販売していました。
今回、トヨタは、カーボンニュートラルなモビリティ社会実現に向けて、カローラ・スポーツをベースとした競技車両に水素エンジンを搭載。5月21日から23日に行われるスーパー耐久シリーズ「2021 Powered by Hankook 第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」から「ORC ROOKIE Racing」の参戦車両として投入すると発表しました。
トヨタは、モータースポーツの厳しい環境で水素エンジンを鍛えていくことで、サスティナブルで豊かなモビリティ社会を実現すべく、貢献していくと表明しています。
気になるのは、FCVとの違いです。
トヨタの水素エンジンは、排気量1618ccの直列3気筒インタークーラーターボで、燃料に圧縮気体水素を使います。
トヨタのMIRAIなどに使用されている燃料電池(FC)は、水素を空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させモーターを駆動させるのに対し、水素エンジンは、ガソリンエンジンから主に燃料供給系と噴射系を水素用へと変更。水素を燃焼させることにより動力を発生させます。
水素エンジンは、内燃エンジンでも発生するごく微量のエンジンオイル燃焼分を除き、走行時にCO2は発生しません。水素エンジンにおける水素の燃焼の速さは、ガソリンよりも速く、応答性が良いという特徴があります。優れた環境性能を持つと同時に、クルマが持つ、音や振動を含めた「クルマを操る楽しさ」を実現する可能性を秘めています。
今回の水素エンジンには、昨年9月に販売を開始したGRヤリスなど、モータースポーツで鍛え続けてきた技術も活かすとしています。
安全性については燃料電池車の開発やMIRAIの市販を通して、積み重ねてきた技術・ノウハウを活用するとしています。なお、競技中には福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」において製造された水素が使用される予定。
水素活用の促進によりインフラ拡大を目指すとともに、引き続き経済復興、地域の活性化に向けた取り組みも関係者と推進するとしています。トヨタはこれまでもカーボンニュートラルへの実現に向けて、FCVのみならず多くのFC製品の普及による水素活用の促進を目指し、取り組みを強化してきました。
水素エンジン技術をモータースポーツでさらに鍛えることで、より良い水素社会の実現を目指すと表明。水素エンジンもFCVと同様にコスト、エネルギー効率、技術的な課題もあります。それでも、トヨタがFCVと共に今後市販化に舵を切るのか気になるところです。
(塚田勝弘)