■新型コロナウイルスのワクチン輸送にも使用可能
豊田通商、トヨタ、B Medical Systems(ビーメディカルシステムズ)の3社は、WHOが定める医療機材品質認証(PQS)をワクチン保冷輸送車において取得したことを発表しました。3社のうち認証登録会社は豊田通商で、ワクチン保冷輸送車での「PQS」取得は世界初になるそうです。
一般的な新生児用ワクチンは2~8℃での保管が必須で、適切な温度管理の下でワクチンが保管されなければ使うことができません。新型コロナウイルスではもっと低い温度管理が求められています。
途上国では、GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)やUNICEF(国連児童基金)などの国際機関からワクチンの供給支援を受けられる一方で、自国内の病院や診療所まで配送する際に道路インフラが未整備だったり、適切な保冷輸送手段がなかったりするため、輸送中の温度変化が原因でワクチン供給量の約2割(400億円相当)も毎年廃棄されているそう。
そのことも原因の一つとなり、ワクチンで予防可能な感染症により毎年150万人の子どもの命が奪われています。
「PQS」とは、国連の医療機材の調達で対象機材の開発を推進すると共に、品質水準を設けるべく定められたWHO認可による医療機材の認証制度。「PQS」を取得した医療機材は、国連関係機関をはじめ大手NGOや慈善団体の機材選定基準にもなります。
これらの団体が自国で医療機材の認証制度がない途上国に対しても、「PQS」を認証基準とすることで輸送機材提供の支援がしやすくなり、ワクチンの有効利用の改善が期待されます。
この取り組みは、ワクチン有効利用という途上国での社会課題解決への貢献だけでなく、新型コロナウイルス感染症用ワクチンを途上国に公平分配する国際的枠組みにおいても、「PQS」の取得により同ワクチン保冷輸送車が使用可能になります。また、新型コロナウイルス感染症用ワクチンの輸送手段としての活用も期待されています。
今回、PQSを取得したワクチン保冷輸送車は、ベース車にトヨタ・ランドクルーザー78を使い、積載するワクチン専用冷蔵庫は「B Medical CF850」を使用。冷蔵庫容量は396Lで、これはワクチンパッケージ400個分の容量になります。
冷蔵庫は独立のバッテリーにより電源無しで約16時間稼働し、冷蔵庫は走行中は車両から充電し、駐車中は外部電源から充電できます。
3社の役割としては、豊田通商はアフリカにおける事業で培った知見と課題認識力を生かし、PQS認証取得会社としてワクチン保冷輸送車を提供。トヨタは、ランドクルーザー78の車両を提供。「B Medical Systems」は、ワクチン専用冷蔵庫の「CF850」を提供。
豊田通商グループの「CFAO SAS」と、トヨタカスタマイジング&ディベロップメントがワクチン保冷輸送車の架装を受け持ちます。
(塚田 勝弘)