新型トヨタMIRAIとレクサスLS、トヨタ・クラウンとの違い、後席の居住性は?

■走りのよさ、カッコよさが追求されたパッケージング、エクステリアデザイン

レクサスLSやクラウンなどに使われている「TNGA(GA-L)」プラットフォームを使って仕立てられた、2代目の新型MIRAI(ミライ)。ボディサイズは全長4975×全幅1885×全高1470mmで、「GA-L」プラットフォームの中でもナロー版が使われています。

トヨタ ミライ
新型MIRAIのエクステリア

「GA-L」でもワイド版を使うレクサスLSは、全長5235×全幅1900×全高1450mm。MIRAIと同じナロー版を使うクラウンは全長4910×全幅1800×全高1455mm。

ホイールベースを比べるとMIRAIとクラウンは2920mm、レクサスLSは3125mm。ボディサイズは、クラウンとLSの中間くらいで、居住性や回頭性に影響を及ぼすホイールベースは、先述のようにクラウンと同じです。

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新型MIRAIのリヤビュー

先代と比べると新型は全長が85mm長く、全幅は70mmワイドになり、全高は65mmも低くなっています。これによりワイド&ローのスポーティなフォルムになり、4ドアクーペのような流麗さを生んでいます。後述するパッケージングを考えると、全高はもっと高い方が有利になりそう。それだけ気合いの入ったエクステリアデザイン、シルエットに映ります。

MIRAIが特徴的なのは、19インチタイヤ(235/55R19)が標準で、オプションで20インチ(245/45ZR20)を設定している点。LSも19インチ(245/50R19)が標準、オプションで20インチ(245/45R20)を設定しています。

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試乗車は「G A パッケージ」。スーパークロームメタリック塗装のアルミホイールと235/55R19タイヤを履く

LS Fスポーツは、フロントが245/45RF20、リヤが275/40RF20が標準。MIRAIと同じナロー版を使うクラウンは、ハイブリッドと2.5L、2.0Lガソリンエンジン車が215/55R17。3.5Lガソリンエンジン車が225/45R18。MIRAIの方が大きなタイヤを履いています。

その狙いは、見た目のカッコよさやグリップなどの走りの面だけでなく、開発責任者の田中義和氏、製品企画主査の清水竜太郎氏によると、フロア下に高圧水素タンクを積むため、少しでも高さ方向の余裕が欲しかったそう。

つまり、FCVならではのパッケージング要件を満たすためともいえます。前後共にボリューム感のある新型MIRAIは、こうした大きなタイヤを履き、パッケージングの面でも工夫されています。

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新型MIRAIのフロントシート

乗降性は、サイドシルがワイドなので足元に気を使う面はありますが、開口部も広くて大型セダンとしては妥当。前席は大きなシートサイズに身を委ねる感覚でかなり快適で、横方向にも十分な余裕があります。後席は足元、頭上共に思ったよりも余裕があり、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後方には、膝前にこぶしが縦に2つ分、頭上には手の平2枚分ほどのクリアランスが残ります。

また、前席の座面下にもそれなりに足が入るなど、足入れ性は良好とまではいえなくても、姿勢の自由度もある程度確保されています(先代は足が入らなかった)。

一方で、先代の4人乗りから5人乗りに乗車定員が変更されている新型ですが、中央席は分厚くワイドなセンタートンネルが鎮座するため、大きく股を開いて座るような姿勢になります。田中義和氏も大人4人がしっかり座れるのが基本としています。それでも、短時間でも5人乗車が可能になったのは朗報で、北米や日本国内の販売現場からもあったと思われる要望に応えた形になっています。

トヨタ ミライ
新型MIRAIのリヤシート

「上げ底」感が高かった先代よりも後席の快適性が高まっただけではありません。ラゲッジスペースは、FCVであることを考えると広くフラットで、荷室容量は321L(先代は361L)。少し狭くなっていますが、9インチのゴルフバッグが3つ積載できるそう。なお、2次バッテリーがある関係でトランクスルーはできませんが、日常使いで困ることはないはず。

FCVを作るうえで、セダンではなく流行のSUVにした方がパッケージングの面では楽だったのでは? と思い浮かびます。田中義和氏は、SUVもまったく考えなかったわけではない、と前置きしつつ、前面投影面積や走りのよさ、静粛性なども考慮。

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新型MIRAIのトランクスペース

さらに、SUV化により、航続距離が1割程度少なくなることをネックと判断したようです。後輪駆動の採用により、走りも訴求する新型MIRAIですから、クルマの基本であるセダンでしっかりと作り込むことを狙ったのかもしれません。

また、MIRAIは官公庁や大企業のニーズが高そうですから「だからセダンにしたのでは?」という質問に田中氏は、「まったく考慮していないとはいいませんが、それはありません」と即答しています。

こうしたニーズに応えるのであれば、「新型MIRAIは、こんなにスリークなデザインにはせずに、もっとセダンらしいフォルムにした」そうです。

※上記写真には、プロトタイプも含まれています。

(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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