■4.4L V8による加速も、ブレーキの制動力も「強烈」
2019年10月に8シリーズに加わったグラン クーペは、伸びやかなスタイリングと大人4人がゆったり座れる大型4ドアクーペです。さらに、2020年1月にはBMW M社のノウハウが投入された高性能版の新型「BMW M8 グラン クーペ」が日本に上陸しています。
今回試乗したのは、最上級モデルの「BMW M8 グラン クーペ Competition」。
4.4L V8エンジンは、ノーマルの「M8 グラン クーペ」と同じであるものの、最高出力がさらに25PS引き上げられ、最高出力は625PS(460kW)/6000rpm、最大トルクは750Nm/1800-5860rpm。なお、最大トルクはノーマルもこのコンペティションも同じ。
ボディサイズは全長5105×全幅1945×全高1420mmという巨体で、ホイールベースは3025mmという長さ。駆動方式は、FRベースで4WDの「M xDrive」が用意されています。
分厚いトルクを前後に無段階に可変させると共に、「アクティブMディファレンシャル」が後輪左右間のトルクを最適化して振り分けるというものです。
内・外装の仕立てはレーシーで「ハイグロス・ブラック」のキドニーグリルと専用バッチ、ドアミラーが備わるほか、スポーティかつスタイリッシュな2トーンカラーの20インチMホイールが用意されています。
「Mシートベルト」や「BMW Individualアルカンタラ・ヘッドライナー」、上質なグレーの「BMW Individualアルカンタラ・ヘッドライナー(アンソラジット)」や、「フルレザー・メリノ/アルカンタラ コンビネーションシート」などが標準装備され、アグレッシブかつ上質なムードが漂っています。
試乗した箱根ターンパイクでは、登坂路でも不要に踏み込むと強烈な加速に襲われます。
それでも先述したロングホイールベースのためか、高速コーナリングでも姿勢は安定していて、一級品のスポーツモデルであるのはもちろんのこと、その名のとおり、グランツアラーでもあることが公道でも伝わってきます。
同時に当然ながら公道では、そのポテンシャルを解き放つことは不可能で、「コンフォート」モードのままでも手に汗握る加速が速度域を問わず、即デリバリーされます。「スポーツ」モード以上では、暴力的とさえいえる加速を少しだけ味わえますが、それ以上は場所もドライバーの腕も選ぶのは当然でしょう。
同時にストッピングパワーも強烈。ブレーキ圧が電動アクチュエーターによりもたらされる「M専用インテグレーテッド・ブレーキ・システム」も不用意に踏み込むとガツンと利き、スポーツ走行でも頼もしい制動力が得られそうです。なお、試乗車にはさらにオプション(12万500円)の「Mカーボン・セラミックブレーキ」が備わっていました。
一方、印象的なのは、サスペンション自体は引き締められているもののロングホイールベースもあって、身構えていたよりは「スポーツ」以上でなければ乗り心地は快適。また、「スポーツ」以上にすると、大きさを感じさせないフットワークも披露してくれます。
同モデルで真価を発揮できるのはサーキットになるのでしょうが、大人4人でのロングドライブもこなすグランツアラーでもあります。
なお、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後ろの席には、こぶしが縦に1つ入る程度の余裕があり、5人定員ではあるものの、後席の中央は非常席としても厳しい印象で、実質的には4シーターといえるでしょう。荷室容量は440Lで夫婦2人旅であれば余裕が残りそう。4人での1泊旅行にも応えてくれそうです。
(文:塚田 勝弘/写真:前田 惠介)