●電気自動車だから売れたのか? それともテスラだから売れたのか?
そ、そうなの? びっくりしましたよ。9月におけるアメリカの新車販売データを見ていたら、なんとも衝撃的な数字を発見してしまいました。
なんと、もっとも売れているセダンが電気自動車だったのです。現地のベストセラーセダンであるトヨタ「カムリ」でもなく、ホンダ「アコード」でもなく、テスラの「モデル3」。いくらテスラが波に乗っているとはいえ、まさかセダン販売のトップになってしまうとは……。
モデル3の話題に入るまえに、まずはアメリカの新車ランキングについておさらいしておきましょう。
アメリカの新車ランキングはかなり日本的視点から見るとかなり偏っていて、トップ3はセダンやSUVなどの乗用車ではありません。もちろん軽自動車でもありません(そもそも軽自動車という規格は海外には存在しませんが)。
日本の常識(というかアメリカとタイ以外の常識)では考えられませんが、トップ3はピックアップトラックの定位置なのです。2019年の年間ランキングをみると、もっとも売れた車はフォード「Fシリーズ」でその数89.6万台。同時期に日本で最多販売の登録車であるトヨタ「プリウス」が12.6万台ですから、その7倍以上なんてとんでもない数字です(いくら人口が2.5倍あるとはいっても)。
2位はラム「ピックアップ」の63.4万台、続く3位はシボレー「シルバラード」で57.6万台。4位でやっと乗用車となり、トヨタ「RAV4」が44.8万台を販売しました。それにしてもトラックのナンバーワンが、乗用車の人気ナンバーワンの2倍も売れるなんて……。
そんなアメリカのマーケットですが、今年の夏になって「モデル3」の伸びが凄い。2019年の年間販売は16万1100台だったので月平均だと1万3400台ほどになるのですが、2020年夏は7月に3万1208台、8月に2万7740台。そして9月には3万52台と売れまくりなのです。
その結果起きたのが、ランキング急上昇。7月にはトラック3台とRAV4に続いてランキング5位にまで上り、9月もRAV4とホンダ「CR-V」に続いて6位に入りました。
何が凄いかって、セダンのベストセラーカーであるトヨタ「カムリ」(セダン離れとはいえ2019年には33万6978台を販売)を抜いてしまったこと。
あくまで月単位の台数とはいえ、この夏、テスラは北米におけるセダン販売でナンバーワンに君臨。つまりはいま北米でもっとも売れているセダンが「電気自動車」というのだから驚かずにはいられません。
テスラは先日、2020年の第3四半期決算が過去最高の黒字となったことを発表しました。利益が増えた大きな理由のひとつとなっているのが、増強した生産設備の稼働効率が順調に高まっていることで、その結果として市場に供給できるクルマの数が増えたと推測できます。
ただし、テスラが安泰かといえばそれはわかりません。販売台数拡大により、サービス体制の不備や脆弱性などこれまで表面化していなかったことが大きな問題なる可能性もあります。今後の行方に注目ですね。
(工藤貴宏)
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