■日本向け3台の貴重な限定車はドイツと日本と技術が融合
輸入車の限定車や特別仕様車の中には、日本専用のボディカラーや装備などが用意された仕様が時々設定されることがあります。
2020年8月28日、その例にあてはまるユニークな限定車が、BMW 8 シリーズ グランクーペに登場しました。「BMW 8シリーズ グラン クーペ KYOTO EDITION」は、日本の匠とドイツのクラフトマンシップが融合した珍しい仕様です。
販売は全国のBMW正規販売店で2台、BMWオンライン・ストアで1台行われ、限定3台という超レアな仕様でもあります。納車は2020年秋以降の予定とアナウンスされています。
車名に「京都」の地名が入るこの限定車は、BMW Japanが独自に「BMWと日本の名匠プロジェクト」と題して企画したというモデルです。日本が誇る匠の技と、BMWの妥協のないクルマ造りの技術と哲学、そしてオーダーメイド・プログラムである「BMW Individual」に込められたドイツのクラフトマンシップ技術との融合により、世界に唯一無二のラグジュアリー感を実現する特別限定車の第一弾として誕生しています。
具体的にチェックすると、センターコンソールのトリムに、日本の伝統工芸として京都を代表する漆芸家である岡田紫峰氏が手掛けた漆塗り蒔絵螺鈿細工が施されています。煌びやかな蒔絵螺鈿細工は、「駆けぬける歓び」をモチーフに、同限定車のみに特別にデザインされたそうで、見たことのない特別感を演出。
漆は、16世紀にヨーロッパに渡り、当時深い黒の塗料がなかった西欧において、その艶やかな光沢は瞬く間に貴族など特権階級の心を魅了したそうです。
最終的にドイツで漆にインスパイアされた黒い塗料「ラッカー」を開発することに成功し、それがまずはピアノに塗られ、現在BMWの高級インテリアトリムに使われているピアノブラックにつながるという、日欧の歴史を感じさせるコラボレーションになっています。
さらに、トリムと同じデザインが施された、蒔絵螺鈿細工の専用キートレーも設定され、美意識にあふれる特別な8シリーズ グランクーペを所有するオーナーの生活を彩るはず。
加えて、老舗の西陣織メーカーである加納幸と、同限定車のルーフライニングと同素材であるアルカンターラを使った新しい取り組みもされています。
加納幸が持つ従来の伝統にとらわれずに異素材を織り込みデザインを表現するという技術が駆使され、アルカンターラを細い線状に裁断したものを上質な絹糸を使って西陣織の伝統技術で織り込んだクッションが特別装備されています。
新しい斬新なデザインと質感が得られたそうで、日本と欧州の技術共演を演出。なお、アルカンターラは東レが生み出した素材ですから、日本と欧州の新たな融合といえそうです。加納幸との取り組みの背景には、長く培った技術力、そして伝統を生かしながら革新を続けていくBMWとの方向性と一致したためとしています。
なお「BMW 8シリーズ グラン クーペ KYOTO EDITION」は、8月26日よりBMW GROUP TERRACE(千代田区丸の内1-9-2)で展示され、9月19日より京都で開催予定の「KYOTOGRAPHIE 2020」でも展示されるそうです。
同限定車のパワーユニットは、最高出力390kW(530ps)を誇る4.4L V型8気筒BMWツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジンで、高性能Mパフォーマンス・モデル「M850i xDriveグラン クーペ」がベース。
エクステリアには、BMWインディビデュアル特別色である「アズライト・ブラック」が採用されています。
「アズライト(藍銅鉱)」は、日本の伝統絵画にも広く使われる高貴さを放つカラーで、その深みある藍の色合いにクロームのキドニーグリルやウィンドウモールディング、マルチ・スポークの20インチアルミホイールの輝きとのコントラストにより、優雅で美しいスタイリングを醸し出しています。
インテリアには、上記の日本の伝統工芸に加えてBMW M社が誇る高品質レザーの「BMW Individualフル・レザー・メリノ」をアイボリー・ホワイトとタルトゥーフォーとのバイ・カラー仕様で採用。さらに、工場生産ラインオフ後に職人による手作業でステアリングコラムやフロントシート台座部分までレザーで覆う「BMW Individual Manufaktur(マニュファクチュール)」加工が施され、高い品質感と限定感が演出されています。
「BMW M850i xDrive Gran Coupe Kyoto Edition」の価格は、2150万円と特別な限定車にふさわしい設定になっています。
(塚田勝弘)