■ちょっと背伸びしてハリアーを購入する20~30代が少しでも買いやすいようにという配慮
6月17日に発売された4代目ハリアー。この元祖アーバンSUVは、トヨタに欠かせないモデルになっています。なにしろ、発売開始から2週間での受注台数は約3.5万台。新型コロナウイルスの影響による景気後退を感じさせない勢いで売れに売れています。
そうした好スタートを切った理由としては、なによりハリアーらしいスタイリングが大いに貢献しているはず。また、パフォーマンスと環境性能をバランスさせた2.5Lハイブリッドと、手の届きやすい価格を実現した2.0Lガソリン車というラインナップにもあるといえるでしょう。
ところで、ハリアーの基本設計といえるアーキテクチャはTNGA GA-Kプラットフォームというもので、シャシーやパワートレインについては、すでに好評なRAV4と共通なことはクルマ好きの方であればご存知でしょう。
しかし、このGA-Kプラットフォームに載せることのできるガソリンエンジンは2.0Lだけではありません。カムリなどで実績のある2.5Lエンジンもありますし、ハリアーやRAV4とは兄弟関係にある海外モデル「ハイランダー」には3.5L V6エンジンを搭載したグレードも設定されています。
ハリアーがプレミアムなSUVとしてキャラ立てするのであれば、RAV4よりも大排気量エンジンを載せるという選択も技術的には可能なのです。ですが、最終的にハリアーのガソリン車は2.0Lエンジンを選びました。その理由はどのようなものなのでしょうか。
ハリアーの開発を引っ張ったチーフエンジニアである佐伯禎一さんに、そうした質問をぶつけてみたところ、次のような回答を得ることができました。
「ハリアーのお客様は、とくにデザインや上質感にこだわりを持っていらっしゃいます。そこで、さらにエンジンを大きくしてしまうと『手の届く高級感』という魅力をスポイルしてしまいます」
ハリアーというとプレミアムSUVという印象で、いかにも余裕のある世代がメインターゲットと思いがちですが、じつは歴代ハリアーのオーナー像を分析すると、意外にも30代を中心とした比較的若い層も少なくないのだそうです。
けっして資金的に余裕があるわけではないけれど、背伸びして「ハリアーを買おう」というユーザーの気持ちに応えることは、とても大事なことです。
そこで佐伯さんたちは「若い人が頑張って手の届くプライスゾーンを目指すことにした」といいます。そうしたときにガソリン車の排気量は2.0Lとするのがベストという結論に至ったというのです。その判断によって、2.0Lガソリン車で299万円から、という手の届くプライスゾーンを実現したのです。
RAV4と同じエンジンを積んでいるからといって、走り味まで同じというわけではありません。RAV4がキビキビ感を重視しているのに対して、ハリアーではスタイリングに通じる上質な乗り味を目指して、アクセルペダルの応答性など細かい部分の作り込みに注力しているといいます。
基本となるアーキテクチャは共通でも、いや共通アーキテクチャで様々なノウハウがあるからこそ、車種ごとのキャラクターに合わせた走り味の作り分けができているというわけです。
(山本晋也)