トヨタの定置式燃料電池発電機(FC発電機)の実証運転が開始

■トヨタMIRAIのシステムを活用したFC発電機とは?

燃料電池車(FCV)について語られる際、車両価格の高さ、水素ステーションの普及などが課題として上がることが多々あります。

一方、水素は多様な資源から作ることが可能で、水素と酸素を結びつけることで発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用したりできます。この際はCO2を排出しません。C02フリー水素でのトータル・ゼロエミッション、水素発電などの利点もあります。

トヨタ FC発電機
トヨタとトヨタエナジーソリューションズが共同開発したトヨタFC発電機

化成品部門、特殊品部門、セメント部門などを手がけるトクヤマとトヨタは、FCVである燃料電池自動車のMIRAIに搭載されている燃料電池システム(FCシステム)を活用した定置式の燃料電池発電機(FC発電機)の実証実験を開始したと発表しました。

今回、定置式のFC発電機が山口県のトクヤマ徳山製造所内に設置され、副生水素を使った実証運転は、2022年3月末まで行われるそう。

●苛性ソーダを製造する際に副次的に発生する副生水素を活用

このFC発電機は、MIRAIに搭載されているFCスタック、パワーコントロールユニット(PCU)、2次電池などのFCシステムを活用。高性能かつ安価な機器の製造を狙い、トヨタとトヨタエナジーソリューションズが共同開発したものだそう。

トヨタ FC発電機
FC発電機のシステム構成図

今回、導入されたFC発電機は、2019年9月より愛知県のトヨタ本社工場内で実証運転中の定格出力100kWのFC発電機をベースに、定格出力を50kWに変更。部品レイアウトの見直しなどにより、メンテナンス性の向上などのアップデートが図られています。

この実証運転のポイントは、トクヤマが食塩電解法で苛性ソーダを製造する際に副次的に発生する副生水素をFC発電機の燃料として使うこと。副生水素を安定供給する役割をトクヤマが担い、FC発電機で発電された電力は、定格出力50kWで徳山製造所内に供給されます。

トヨタ FC発電機
FC発電機のシステム構成図

一方のトヨタの役割は、水素使用量当たりの発電量などのエネルギー効率、発電出力の安定性、耐久性、メンテナンス性、海風による塩害の影響などの検証、評価。加えて、副生水素の活用による発電性能への影響や外部から水素を購入した場合と燃料代などの経済性も試算するとしています。

今後トクヤマは、国内有数の高純度な副生水素供給能力を持つ総合化学メーカーとして、副生水素を活用した地域貢献モデル事業の検討を推進するそうです。

トヨタは、FC発電機の普及に向けて、FC発電機の出力ラインナップの拡大、エネルギー効率や耐久性向上、小型化、コスト低減などの商品力強化に向けた研究、開発とビジネスモデルの検討を実施。

両社は、今回の実証を通じて水素社会の実現を目指した取り組みをさらに推進するそう。一般的には、まだ身近な存在とはいえない水素社会ですが、実現に一歩でも近づくには、こうした実証運転が重要になっています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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