新型コロナ禍を受けたトヨタの決算報告から解る驚きの3事実!

■トヨタ自動車当期2019年度の決算が80%減収ではない!

トヨタが2019年度の決算発表を行った。2019年度とは、2019年4月から2020年3月までの期間になります。

ネット検索で「トヨタ 決算報告」と入れると、メディアの多くは「トヨタ80%の減収!」などと報じている。しかしトヨタが80%減収と言ってるのは、未だ予想出来ない2020年度のこと。2019年度は1%の減収にしかなっていない。以下、決算発表で解った3つの驚きについて紹介しよう。

豊田章男社長
2020年3月期決算説明会での豊田章男社長

まず1つ目の驚きは「新型コロナ禍による2019年度のダメージが1%しかなかった」ことだ。

新型コロナ禍が本格的になったのは中国で2月。他の地域をみると3月に入ってから。クルマの場合、受注から納車まで1ヶ月ほどのタイムラグがある。したがって客観的に考えてみたら、中国で1ヶ月。その他の地域についていえば、あまり影響なかったということになります。

トヨタ自動車2019年度の連結決算要約
トヨタ自動車2019年度の連結決算要約

トヨタの決算発表を見ると、新型コロナ禍による売上高の減少は3800億円。トヨタにおける2019年度の売り上げは29兆9300億円なので、1,2%程度の減少に留まっている。2019年度は「ほぼ」影響ないということ。

ちなみに同じ日に決算発表を行ったホンダは25%減、マツダは81%減としたが、新型コロナ禍が無くても経営陣の責任問題にしていいほど厳しい決算発表になったと思う。

2つ目の驚きは、2020年度の決算について予想を出したこと。前述の通り同じ日に決算発表を行ったホンダとマツダは2020年度の決算について予想を見送った。

逆に考えると2020年度の予算を組めないということになる。通常なら予想を発表しないと言うことなど考えられないです!

ホンダによれば「前代未聞の状況になっているため不確定要素が多く予想出来ない」。

連結営業利益見通し増減要因
トヨタ自動車2020年度の連結営業利益見通し増減要因

それだけ厳しいのかもしれない。ホンダやマツダに限らず。大半の企業が2020年度の決算予想を見送ることだろう。そんな中、トヨタだけ数字を出してきた。

聞けば「関連企業などで働いている人の生活もある。大雑把になるかもしれないけれど目安を出す責任はあると思います」。その予想が「連結営業利益80%減」です。発表しなくていい数字を出したら足を引っ張られたワケ。

そもそも2020年度は秋まで新型コロナ禍の厳しい影響を受けることは間違いない。なのに5000億円という利益を出すということ自体、凄いと思う! 健全さをマイナス材料にして報じるのだからメディアって底意地悪い?

3つ目の驚きは、利益80%減という数字のベースになった2020年度の販売台数だ。トヨタは下の表の通り全世界販売台数が22%程度落ちると予想した。

連結販売前提台数
2020年度の販売前提台数

販売台数22%減なら収益も22%程度の減少かと思うだろう。けれど80%の減収になってしまうようだ。自動車産業も工場の維持に掛かる費用や、従業員達の給料などの固定費が大きい。

世界の自動車産業の中でも優良な経営と言われているトヨタですら新型コロナ禍でリーマンショックを超えるダメージを受ける。今後、存続すら危なくなる自動車メーカーも出てくる可能性あります。

今後決算を発表する日産や三菱自動車、スズキなどはどうなるだろう?

(国沢光宏)