知らないと損!?交通違反の「罰金」「反則金」「放置違反金」の違いは?

■軽微な違反は反則金。罰金刑になると前科持ちに!

「反則金」「罰金」「放置違反金」。交通違反で払うカネ、金銭ペナルティはこの3種類だ。
まとめて「罰則金」とか「バッキン」「バキーン」とか呼び、言われるがままに払うか、とにかく逃れようとするか、どっちかの人がけっこう多いように思われる。

取り締まり
白バイによる取り締まり風景

しかし…。
私はもう40年近く交通違反・取り締まりについて取材・研究してきた。このジャンルは「知らないと損する!」ということがいろいろある。
反則金、罰金、放置違反金、この3種類の違いは、基本中の基本として知っておくべきとかと思う。
以下、本当に基本的なところをご説明しよう。

●刑事手続きをパスするために払うのが「反則金」

たかが交通違反といえども、法律的には「刑事犯罪」に当たる。窃盗や強制わいせつなどと同じく、刑事訴訟法の手続きにしたがって処理される。
(刑事訴訟法:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000131
すなわち、警察官が取り締まった(検挙した)あと、
1、違反は事実か。
2、事実として、処罰すべきか。
3、処罰すべきとして、どれくらいの処罰が相当か。

そこをまず検察官が判断する。検察官が起訴すれば、裁判官が判断する。

しかし、交通違反の取り締まりは件数が膨大だ。検察官、裁判官の負担は大きい。たかが交通違反をいちいち刑事手続きで処理するのは勘弁してくれ…。
そこで1968年7月1日、軽微な違反(=ほとんどの違反)については、
「新しいペナルティ、反則金、これを払えば刑事手続きをパスできます。どうしますか?」
という制度がスタートした。そのことを、いわゆる青切符でまず告知し、運転者に選ばせるのである。反則金を払えば刑事手続きをパスできる。

反則金納付書
違反者が現場で交付された反則金納付書。納付期限は1週間だ。じつはこれは「仮納付」。後日に本納付もできるが、その納付書を郵送で受け取ると、配達証明便の料金822円が納付額に加算される。

1968年当時の日本は高度経済成長期だ。忙しく働く運転者たちは反則金に飛びついた。以来、反則金の納付率が95%を下回ったことは1度もない。
警察庁の統計によれば2018年、青切符の取り締まりは574万3164件。反則金の納付率は98.6%、納付額は約508億2806万円だ。
反則金は警察官の小遣いになるわけではない。いったん国庫に入ってから「交通安全対策特別交付金」として地方に交付され、信号機や標識や歩道の整備などに使われる。

反則金の納付は任意。払わずに刑事手続きへ進んだ場合、ほぼすべて検察官により不起訴とされる。そのことは最高裁の統計から明らかだ。
(関連記事『反則金を払わなければ「ほぼ100%不起訴」! その裏付けデータを公開する!!』https://clicccar.com/2019/11/29/934289/参照)

●「罰金」は刑罰。前科になる

飲酒運転、無免許運転、超過速度が一般道路で30キロ(高速道路と自動車専用道路では40キロ)以上のスピード違反などには、青切符ではなく赤切符が切られる。
2018年の赤切符の取り締まりは24万2638件。赤切符の違反は反則金の対象とされず、必ず刑事手続きへ進む。

そのほぼすべては、略式の裁判により罰金刑とされる。略式は書類のチェックだけで罰金刑を科すための、形式的な裁判手続きだ。
法務省の2018年の統計によれば、交通違反で略式のほうへ起訴されたのは13万8956人。
飲酒運転の常習とか非常に悪質なケースなどは、正式な裁判のほうへ起訴される。その人数は7638人。だいたい懲役刑を科される。といっても普通は執行猶予がつく。

警察庁と法務省ではデータの取り方が少し違うだろうし、件数と人数との違いもあるが、赤切符でも数万人が不起訴になっているようだ。
過去に違反歴がなく、運転免許の更新期限をついうっかり数日過ぎて無免許運転で捕まったとか、高速道路のようなバイパス(一般道路)で30数キロの超過で捕まったとか、そういうのは赤切符でも不起訴になりやすいだろう。

ここで大事なのは、略式の起訴は検察官が勝手に決められないことだ。運転者が「略式でお願いします」という趣旨のサインをすることが必要となる。そのサインをしてしまうと不起訴はない。さくさく罰金刑になる。

罰金は、死刑、懲役、禁錮などと並び、刑法に定められた刑罰の1つだ。
なので当然というか、罰金刑を受けたことも「前科」として記録される。社会生活に影響はないが、次に違反や事故や何かの犯罪で正式な裁判になったとき、検察官からこう言われることになる。
「被告人は交通罰金前科が1犯があり…」

罰金は国庫に入って一般財源となる。2018年度の罰金刑の執行件数は全体で22万1364件。金額は約441億円。件数のだいたい7割ぐらいが交通違反だと言われる。

●「放置違反金」は車両の持ち主が払う。違反者は逃げ得

反則金と罰金は、違反者本人に対するペナルティだ。
それに対して放置違反金は、車やバイクの持ち主に対するペナルティである。

駐車違反のステッカー
放置車両確認標章、いわゆる駐禁ステッカーだ。「警察へ出頭しなさい」とはどこにも書かれていない。いちばん下に、運転するときはこれを「取り除いてください」と書かれている。

たとえばあなたが自分の車で駐車違反をし、黄色いステッカー(放置車両確認標章)を貼りつけられたとしよう。
警察に出頭すれば、原則として青切符が切られ、反則金の納付書を交付される。駐車禁止場所の駐車違反なら1万5000円。違反点数は2点だ。
反則金を払えば刑事手続きをパスでき、一件落着となるが、違反点数はやっかいだ。ゴール免許はアウトだし、免許更新のときの講習時間が長くなり費用も高くなる。任意保険の掛け金が何千円か上がったりする。

ところが、黄色いステッカーには「警察へ出頭しなさい」とは書かれていない。そう、出頭しなくてもいいのである。
自分でステッカーを剥がして知らん顔していると、早ければ1週間ぐらいで警察から郵便がくる。その郵便は、違反者であるあなたではなく、車の持ち主であるあなたへくる。

●「放置違反金」を支払えば違反点数は登録されない

知らん顔していたから、ヤバイことになるのか?
いや、封筒には放置違反金の納付書(金額は反則金と同じ)が入っている。放置違反金は、違反者に対するペナルティではない。車の持ち主に対するペナルティだ。
そして、放置違反金が納付されると、その違反に対する責任追及は終わる。つまり、違反者であるあなたは違反切符を切られることなく一件落着してしまうのである。
当然、違反点数は登録されない。ゴールド免許のままでいられるし、更新時の講習は優良運転者講習だし、保険の掛け金は上がらない。

ただ、同じ車で何度も放置違反金を払うと、その車は20日間とか30日間とか「使用制限命令」を食らう。人に対する免許停止処分に似た、車に対する運転停止処分といえる。違反者は無傷のまま別の車を運転できる。
タクシー会社や運送会社はそれは困るので「お前、出頭して青切符を切られてこい」となったりする。レンタカー会社は「お客様、出頭なさってください」となる。

どうですか、反則金、罰金、放置違反金、ぜんぜん違うでしょ。こういうことは本来、運転免許の試験に出るべきと思うんですけどね。

今井亮一【いまい・りょういち】
交通違反・取り締まりを取材、研究し続けて約40年、行政文書の開示請求に熱中して約20年。裁判傍聴マニアになって17年目。『なんでこれが交通違反なの!?』(草思社)など著書多数。雑誌やテレビ等々での肩書きは「交通ジャーナリスト」。2020年の目標は東京航空計器の新型オービス(レーザー式)の裁判を傍聴すること!

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反則金を払わなければ「ほぼ100%不起訴」! その裏付けデータを公開する!!
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