■トヨタのアフター2ブランド夢のコラボは安産? それとも難産だった?
トヨタワークスとしてモータースポーツ活動を支えてきた「TRD」ブランドを擁するトヨタテクノクラフト、そしてトヨタ車のスタイルアップには欠かせないカスタマイズブランド「モデリスタ」。さらに輸出用車両の用品架装を手がける「ジェータックス」が加わり、それら3社が一体となるかたちで産声を上げた新会社が「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」(TCD)です。
2018年春から始動した新体制。異なるカルチャーが混ざり合うことでどんなクルマが生まれてくるのかはカスタム&チューニングファンにとって気になるところ。東京オートサロンでは想像のナナメ上を行くような斬新なコンセプトカーが展示されていました。
その名は「アンビバレント“RD”プリウスPHVコンセプト」。プリウスPHVというベース車の名称こそ残ってはいるものの、いい意味でその面影を残さない、まるごとイチからスクラッチされたかのような仕立てのショーカーです。
まずはその見た目のインパクト。グリルレスとなったフューチャリスティックなフロントセクションから後方へ目を移すと、ルーフ後端にはまるで魚の背びれのような大型エアロフィンが。そこにはLEDイルミネーションが仕込まれ、全方位から先進感がびしばし伝わってきます。
ですがこのデザイン、ただ迫力だけを追い求めた空想のショーカーでなく「TRD」「モデリスタ」両ブランドがこれまで大事に培ってきたソリューションから導き出されたものなのです。
開発に関わったのはそれぞれ歩みの異なる社風のなかで仕事をしてきたデザイナーたちですから、ジョインしたての頃は正直、戸惑いを感じることもあったそうです。しかしこの東京オートサロンに「TRD×モデリスタ」のコラボモデルを出すことが決まってからは心ひとつに開発に取り組んだそうです。
初期のデザインスケッチの段階では、TRD、モデリスタ等のそれぞれ出身のデザイナーが、相手のブランドを思いながらデザイン提案をしたそうです。
それにより、それまでは気づかなかった自社ブランドの強みをあらためて発見する気づきも生まれたそうです。
具体的には、モデリスタが得意とするエモーショナルなデザインが固まったあとは、TRDが誇るGT500のマシン開発にも用いられるCFD(数値流体力学)でシミュレーション。カッコだけではない、真に機能由来のデザインとしてまとめられています。「サイドカメラも先端部をウイングレット形状にし、渦を発生させ車体の微振動を抑えています」(山崎和起さん)
「フロントバンパー-の透過型イルミネーションは、先進的なイメージをより感じてもらえるように狙いました。点灯時に初めて幾何学柄が見えるサプライズも演出しています。」(高木良太さん)
こうした、3社出身者が現場でワイワイしながら作ったかのような勢いが具現化されているのが「アンビバレント“RD”プリウスPHVコンセプト」なのです。
「アンビバレント」は両面価値という意味を持ち、「RD」はTRDが掲げるRacing Developmentと、モデリスタのパーツが象徴するRefined DesignというWミーニング。「デザイン力にエンジニアリングとしての裏付けが加わることで、最高のプリウスPHVができました」(車両のまとめを担当した久世峻大さん)
よくよく見れば派手そうに見えるボディワークも、主要なボディパネルは純正のままを残しており、ガーニーフラップやディフューザーなどは市販につなげられるようなアドオンタイプの提案もなされています。まさに夢と現実を結ぶコンセプトカー。
結果的に3社が持つ技術も融合し、人と人をも結びつけた「アンビバレント“RD”プリウスPHVコンセプト」。残したものは大きかったようです。
2月14日からの大阪オートメッセ2020にも展示予定なので、実車が放つインパクトを確かめるチャンスです。
(写真:井上 誠/文:畑澤清志)
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