■これぞ「人馬一体」。約240万円の軽自動車スポーツの走り
トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)から登場したGRヤリスは、272PS/370Nmのスペックはもちろん、396万円という価格設定も話題になった一因といえそうです。
昨秋に発売されたコペンGR SPORTは、「TOYOTA GAZOO Racing」のコンプリートカーのうちエントリーモデルといえる仕様です。なお、「TOYOTA GAZOO Racing」の中で最もスパイシーなのが「GRMN」、中間の「GR」、そして「GR SPORT」という位置づけになっています。
コペンGR SPORTに限らず、「GR SPORT」は、ボディ剛性や足まわりのチューニングに留めるというお約束があります。パワートレーンには手をつけない仕様なので、コペンGR SPORTも同じ。軽自動車の自主規制値を超える最高出力は与えられていません。
具体的には、フロントブレースの追加をはじめ、センターブレース形状の最適化など、ボディ剛性のバランスが向上し、造り込んだボディ剛性に対して、サスペンションのスプリングレート最適化、専用ショックアブソーバーにより、しなやかな動きと接地感のあるフラットな乗り味を追求したとしています。
■引き締まった足だが、高速域ならフラットライドに
またトヨタは、専用チューニングされた電動パワーステアリング(EPS)と相まって、ステアリング操作とクルマの動きとの一体感醸成に寄与したと説明しています。
軽だからこそのエンジンパワーを使いきれる喜び、日常生活の中でもライトウェイトスポーツらしい、意のままに車両をコントロールする「気持ち良さ」を提案するという謳い文句を掲げています。
実際に街中から走り出すと、エントリーモデルの「GR SPORT」だからといって退屈感とは無縁で、操舵に対してまったく遅れることなくノーズが向きを変え、リヤの追従性も抜群。
ノーマルのコペンは、軽スポーツだけに従来からフットワークの良さはもちろん美点ですが、鋭利さが増したハンドリングは文句なく楽しい仕上がりになっています。
KYB製のショックアブソーバーとスプリングレートが最適化されたコペンGR SPORTは、確かに足は引き締まっているものの、ボディ剛性の強化により、毎日乗っていても許容できる乗り心地といえそう。
首都高速などで少し飛ばすと際立つのが、ロードフォールディング性能の高さで、タイヤのグリップ感が手に取るように分かります。また、速度が上がるとフラットライド感が増し、良路であれば意外なほどの乗り心地の良さも顔を出してくれますので、高速道路を使ったロングドライブも楽しめそう。
コーナーでは意外なほどロール感がありますが、高速コーナリングでもコントロールしやすく、切り返した際の揺り戻しも少ないのが美点です。
しっかりしたボディや足まわりにより速いコーナリングでも怖さは少なく、もう少しパワーがあればと思うこともありました。さらに、試乗車はCVTだったため、パワートレーンの楽しさを満喫するには少し物足りなさもありましたが、MTがAT限定免許などでNGでない限り、MTをチョイスした方がよりスポーツ度が増すのは当然で、ぜひMTで「人馬一体」感の走りを楽しみたいところ。
専用レカロシートのフィット感も抜群で、日常使いでも苦にならない程度の乗降性も確保されています。
CVTは2,380,000円、5MTは2,435,000円という価格設定で、軽自動車としては決して安くはありませんが、コンパクト(ライトウェイト)スポーツの良さを知っている人を虜にする魅力を備えています。
(文/写真 塚田勝弘)