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●新世代カローラはゴルフ7を超えられたのか?
「新世代カローラ」である「カローラスポーツ」が登場したのは2018年。そして、この9月にカローラ、カローラツーリングが登場、「カローラ3兄弟」がいよいよ揃い踏みとなりました。
比較的コンパクトなボディで作られたオーソドックスな「カローラセダン」、若者向けの「カローラツーリング」、スポーティな味付けの「カローラスポーツ」と、用途や好みに応じて選べるように用意されており、これまでのユーザーを取り込みつつ新たな顧客創造をしていきたいトヨタの渾身のモデルです。
そんな新世代のカローラを試乗するにあたり、Cセグメントの教科書こと「ゴルフ7」と、どうしても比較しておきたくなりました。ゴルフも次期型が公開されたばかりですが、国内発売はまだ先となりため、現行モデルの最終型で最も完成度の高いゴルフTSIハイラインマイスターを持ちだしました。
果たして「新世代カローラ」は、ゴルフを超えることができたのでしょうか?
トヨタ カローラスポーツ HYBRID G”Z”
FF 車両本体価格282万4800円(消費税10%税込)
VWゴルフTSI ハイラインマイスター FF
価格367万0000円(消費税10%税込)
1.2台のスペックの違いとは?
ゴルフと同じハッチバックスタイルであるカローラスポーツのボディサイズは4,375×1,790×1,460(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1,400kg、ホイールベースは2,640mm、最小回転半径は5.3メートルです。ちなみに、今回の記事を書くにあたり、参考に試乗したカローラセダンとカローラツーリングについては、以下表にまとめていますのでご参照ください。
対するゴルフ7は、4,265×1,800×1,480(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1,320kg、ホイールベースは2,635mm、最小回転半径は5.2メートルです。
駐車場を出る瞬間、明らかにゴルフの方が小回りが利くことを体感できます。最小回転半径は、小さくしたり、もしくは(ボディが大きくなっても)維持することは、設計的にとても大変なことです。欧州車は、欧州の駐車場事情(※都市部の場合は路上に縦列駐車)が起因して、最小回転半径にとてもシビアであり、ゴルフもまた最小回転半径が小さいクルマです。
2台の最小回転半径の差は数字で表せば0.1メートルですが、このわずかな差が、狭い道でUターンできるか否か、クルマの信頼性に影響してきます。
ちなみにゴルフ8の全幅は現行ゴルフと同じ程度になるようです。肥大化が続いていたゴルフの全幅が遂に止まりました。これ以上のサイズアップはドライバビリティの低下として現れることと、ゴルフの顧客がのぞむゴルフ像とはかけ離れすぎる、という判断なのでしょう。
2.タイヤやサスペンションの特徴は?
一般的に、タイヤは幅が広がって低扁平になるほどに、突き上げとロードノイズが増大していきます。
カローラスポーツは、225/40R18ダンロップSPORTMAXX 050。「45」という低扁平率のため、想像通りの突き上げの強さとやや大き目のロードノイズを発生します。ちなみに、17インチタイヤ(215/45R17)を装着するカローラツーリングも同様にノイズが大きいという印象を受けた一方、16インチタイヤ(205/55R16)を装着したカローラセダンがやはり最も静かでした。
対するゴルフ7は、225/45R17 91WのブリヂストンTURANZA T001。Cセグメントのタイヤといえば205/55R16が主流ですので、昔と比べるとファットなタイヤに感じますが、車体側の対策が見事にできており、ショックとロードノイズの侵入は少なく感じます。
ちなみにゴルフのコンフォートラインには205/55R16、廉価版のトレンドラインには195/65R15が標準装着ですので、「18インチ以上はゴルフには不適」という判断でしょう。ちなみにハイパフォーマンスカーとなるゴルフRには225/40R18、GTI performanceに225/35R19が設定されています。
■フロントサスペンション考察
フロントサスペンションは、カローラシリーズもゴルフも、ストラット式です。ロアリンクを「トラバンリンクブッシュ」と「コンプレッションロッドリンクブッシュ」の2つを介してサブフレームへとつなぎ、そのサブフレームを車体のサイドメンバーや車体フロアへと締結しています。サブフレームから伸びるアーム長さは、サスペンションの横剛性に影響を及ぼしますので短くしたいところですが、その点は2台とも同様であり、配置と剛性が差は無いようです。
ただし、異なる点もあります。それは直進性に大きく影響する「キャスター角」です。通常、ストラット式の場合だと、キャスター角を付けた方がステアリングの復元力が高まり、直進性が上がります。(※正確にはキャスタートレイルとニューマチックトレイルといったジオメトリの関係性ですが、ここでは割愛)。簡易的にキャスター角を見るために、フル転舵したタイヤの垂直角度をみると、ゴルフのほうが、傾き角がよりついているように見えます。詳しい角度はアライメント測定をしないと分かりませんが、ゴルフの直進性の良さには、この点が大きく影響していると思われます。
■リアサスペンション考察
今回のカローラシリーズのトピックとして、リアサスを全車ダブルウィッシュボーン化したことが挙げられます。この10〜20年でトーションビーム式サスペンションの性能が進化したとはいえ、左右独立懸架サスと、そうでないサスでは走りに差が出ます。廉価なFF車の場合、4WD仕様であるなど、余程の事情がないとリアサスはトーションビーム式となるのが一般的(※旧型アルファードでさえトーションビーム式だった)であり、ここからも、カローラシリーズに対する、トヨタの力の入れ様が伝わってきます。
ただし気になったのがロードノイズです。タイヤサイズが今回試乗したゴルフと同等の17インチを装着したカローラツーリングで、終始ロードノイズが大きめに聞こえるのは、残念なところです。
ゴルフは、1.2 TSIモデルにはリヤトーションビーム式ですが、その他は4リンクのマルチリンク形式です。部品数をできるだけ削減して量産することでコストを下げる「MQB」を狙っていた中での作り分けは、何かしらの事情があるようですが、それはさておきリアサスに求められる安定性、乗り心地、ロードノイズの基本素養の面で、ゴルフは優れており、優秀なサスペンションをもつクルマといえます。
3.エンジンの特徴は?
試乗したカローラスポーツのエンジンは、直列4気筒1.8リットルハイブリッドに電気式無段変速機の組み合わせです。燃費は驚異の34.2km/L(WLTCモード)、実燃費も20km/L程と大変良好な燃費でした。
EV走行モードスイッチも備えており、静かで滑らかな走り心地ですが、発電時にはエンジンから大き目のノイズを発生します。「ガー」という音の周波数が高く、車内に響くため、質感としてあまりよろしくありません。この「芝刈り機サウンド」は、せっかく静かなハイブリッドの良さを、スポイルしているように感じます。ただし1.8リットルガソリンエンジンの使用は、トルクフルであったり、パンチのある加速をするわけではありませんが、終始静かなサウンドで余計な音が鳴らないため、快適性はこちらの方が上に感じます。
対するゴルフは直列4気筒1.4リットルTSIガソリンエンジンに、7速DCTの組み合わせです。燃費は18.1km/L(JC08モード)、実燃費は13km/L程でした。燃費はカローラハイブリッドの方が圧倒しており、実際にガソリンを入れる量が半分程度ですみました(※一般道と高速道路、アイドリングなど、絶対値は参考としてみていただきたい)。
絶対的なパワーはありませんが、ゼロ発進時に前へ押し出される様な、「早開き」のアクセル特性のため、小気味いい良いスタートができます。ただし、ドライバーによっては急加速しやすいとも取れるので、乗り換えた直後は注意が必要です。
車両諸元やサスペンションの素性だけでクルマの良し悪しは決められませんので、「カローラシリーズがゴルフに並んだか?」は、別記事で解説していきます。
次回は、同じハッチバックである「カローラスポーツ」と「ゴルフ」の、室内の広さや荷室の使い勝手について、比較をした結果をご紹介します。
(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)