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■パトカーが逆走したという道路には、一方通行を示す標識がなかった!
●標識がなければ取り締まりは無効のはずなのに、警察官が検挙された理由とは!?
どうにも不可解な報道だ!
全国の警察の交通指導課、交通指導係の警察官諸氏は激しく首をひねっているのではないか。
まずは「山形県警のパトカーが一方通行を逆走・ドライブレコーダーに一部始終 『方向転換のため進入した』 山形市」と9月2日付けさくらんぼテレビ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190902-00010003-sakuranbo-l06
こう報じている。
「市道には、一方通行の標識が複数設置されているが、パトカーが進入した丁字路には標識がなく、付近住民によると、逆走が絶えない場所だという。」
運転の警察官は「一方通行とはわからなかった」という。
パトカーが侵入した経路をさくらんぼテレビは映している。なるほど、一方通行路であることを示す標識はない。
そして「パトカーが市道逆走、警官を検挙 ツイッター映像で発覚」と9月4日付け朝日新聞。
https://www.asahi.com/articles/ASM935H1DM93UZHB00Z.html
こちらの記事には写真があり、パトカーが侵入したT字路に一方通行の標識がはっきり写っている。写真にはこんな説明が。
「現場の丁字路には、パトカーが逆走したことを受け、仮設の標識が設置された」
おいおい、ちょっと待てよ! である。以下は道路交通法施行令第1条の2第1項だ。
(公安委員会の交通規制)
第一条の二 法第四条第一項の規定により都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)が信号機又は道路標識若しくは道路標示を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理してしなければならない。
たとえば右折禁止の標識の前に街路樹の葉が茂って標識が見えにくければ、標識の管理に瑕疵(ミス)があり、その右折禁止は適法な規制ではないとされる。標識に気づかず右折しても違反は成立しない。取り締まりは無効だ。
今回の山形の場合、報道を見る限り、パトカーの侵入経路からは一方通行の標識がない(なかった)。見えにくいどころの話じゃない。
ところがさくらんぼテレビはこう報じているのである。
「県警は……道路交通法違反容疑でこの警察官を検挙した。山形警察署は、『再発防止に向け、指導を徹底していく』としている。」
違反は成立しないのに、なぜ?
その「指導」、パトカーを運転する警察官に対する指導のように聞こえるけれども、「徹底」すべきは適法な標識の設置でしょ?
●これまで「待ち伏せ取り締まり」をしていた?と思わせる警察の不可解な対応
施行令の規定をあえて無視したかのような県警の発表および報道、どうにも不可解だ。絶対おかしい。
ははぁ、もしかして…と私は思う。
もしかして、標識がないせいで一方通行を逆走したクルマやバイクに対し、山形署はよく待ち伏せ取り締まりをやっていたのではないか。その取り締まりはじつはぜんぶ無効でしたとは言い出せなかったのではないか。
また、朝日新聞の記事にこんな部分がある。
「『ツイッターに逆走の映像が投稿されている』という同署への指摘をきっかけに発覚したという。」
不名誉な映像が先にネットに流れてしまったことから内々で処理できず、逆送した警察官を「検挙」して世間に溜飲を下げてもらい、同時に「警察は身内でも厳しく取り締まりますぞ」と威信を高めるアピールをした…。
現時点までの報道からは、そんな推理ができるってことで。
「あおり運転」でもそうだが、ドライブレコーダーの録画映像の『威力』はすさまじいと思う。
(今井亮一)