「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)」では、FSR(Field Support Robot)と呼ばれるフィールド競技サポートロボットもトヨタが開発しています。
FSR(Field Support Robot)は、円盤投げ、やり投げ、ハンマー投げ、こん棒投げの競技を文字どおりサポートするロボット。最大積載量はハンマー2つ分の16kg。
FSRは最高速20km/hで自律走行し、投てき物が落下すると補助員が取りに行く際にAIが補助員を認識して2mほど後ろを追従。投てき物を補助員がFSRに搭載し、モデルにタッチすることで、返却地点まで自律走行で戻ります。返却地点で停止すると、別の補助員が投てき物を回収しモデルにタッチすることで、待機場所に自律走行で戻ります。
お馴染みのお掃除ロボットのようなイメージですが、芝を傷めないルートを走行する、人が障害物を回避するといった機能も搭載されています。さらに補助員が止まると、約2m後方で止まります。
センサーは180°のカメラが搭載されているほか、障害物検知は赤外線と360°検知するライダーが搭載されています。お掃除ロボットのようなイメージといいましたが、センサーはかなり高度。こうした技術は工場のもの作りの要素技術が応用されています。自律走行のシステムは、要素技術を使って約半年でここまで開発したそうです。
自律走行の自車位置確認は、事前に製作された3D地図、そして、メインとしてライダーを使い、GPSのアンテナも補助的に搭載されています。
また、万一の故障に備えて(強制終了スイッチも用意)、かなり信頼性が担保されているほか、いざという時はラジコンモードも搭載してバックアップ。さらに、複数台の体制を敷くそう。
ほかにも、コミュニケーションライトも用意されています。FSRの上部のライトが光ることで、FSRが何を見ているのか、何を考えているのかを知らせるライト。「あなたのことを見ています」というのが分かります。アイコンタクトのようなものを人とFSRの間で作りたいとしています。
同ロボットの狙いは回収時間短縮と運営スタッフの労力低減で、従来は人力に頼ることが多かったり、従来の回収マシンはラジコンで操作していたことから80m先の投てき物を回収するなど、大変な面があったそう。今後、「東京2020」組織委員会、国際陸上競技連盟と連携し、東京2020大会に向けた技術開発を行うとしています。
(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、長野達郎)