■ディープラーニングにより表情と動作から眠気を推定する技術は自動運転に必須の技術
今年も日本最大の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019横浜(主催:公益社団法人 自動車技術会)」が開催されています。会場はおなじみのパシフィコ横浜。自動車メーカーからサプライヤー、各種パーツメーカーなどなど624社が出展しています。登録制ながら無料で誰でも入ることのできる展示会ですが、その内容は完全プロ仕様。いわゆるB to Bをメインとした展示会です。それは開催期間が水曜日~金曜日(2019年の開催期間は5月22日~5月24日)というスケジュールからも感じられます。
とはいえ、熱心な自動車ファンが多く訪れています。いまやマニアの間では『人テク』や『人クル』といった愛称で呼ばれるほどおなじみのイベント。自動車ファンにとっては、自動車メーカーが最新モデルであったり、近未来のテクノロジーを展示しているのをチェックするのも楽しみのひとつとなっているのではないでしょうか。
さて、トヨタ自動車のブースでは、遠目にはまるで受付のように見える展示がありました。しかし、ここは受付ではありません。手前にみえる白い物体は机ではなく、赤外線カメラと距離センサーが埋め込まれた装置です。これにより、人物の表情やポーズを認識することができます。
左上のディスプレイが示しているように赤外線カメラでは目と口の状況を検出、距離センサーでは顔の向きや手の動きなどの動作を検知します。こうしてセンサーで得られた情報を元に、ディープラーニングにより鍛えた覚醒度推定システムによってドライバーの状況を検出します。具体的には、ドライバー自身でさえ気付いていない覚醒度の低下(眠気)を判定できるというのです。
いま日本国内で最先端の自動運転技術というと自動運転レベル2におけるハンズオフ(手放し運転)ですが、その条件としてはドライバーモニタリングシステムが必須です。今後、自動運転が進んでいったとしても、完全自動運転に至るまでの期間においてはドライバーの状況をモニターするシステムへのニーズは高まり、その精度も求められることになるでしょう。
トヨタが研究している「覚醒度推定」システムは、そうした自動運転技術の進化において欠かせない機能。将来性のある非常に重要な技術なのです。
現時点では自動運転技術の進化を支える監視機能として研究が進んでいるということですが、さらに体調不良まで検知できるようになってヘルプネットのような機能と連動するようなことになれば……。自動運転技術はドライバーの命を守るシステムへと発展することが期待できそうです。
(山本晋也)