フォルクスワーゲンが北米や欧州仕様のディーゼルエンジン車に搭載していたことで世界的な問題となり、また大量のリコールを発生させたディフィートデバイス(検査時のみ排ガスをクリーンにする違反装置)が、メルセデスのディーゼルエンジンにも使われていたと欧州で報じられています。
Cクラス、GLCクラス、Vitoの3モデルが対象で、ドイツ国内だけで23.8万台、欧州全体では77.4万台に違法プログラムが搭載され、リコールが必要になるといった内容です。
台数的にはわずかといえますが、注目度は高まっています。たとえば、イギリスの公共放送BBCでは、”Daimler forced to recall Mercedes with defeat devices” と、ダイムラーが意図的にディフィートデバイスを使っていたと記事タイトルで大きく扱い、また記事内でもエミッションをごまかす違法プログラムを搭載していたと明記しているほどです。
こうしたニュースは、ドイツ連邦自動車局をソースとしているものですが、一方でダイムラー側は意図的なディフィートデバイスではなく、あくまでもエンジン保護プログラムの問題であるとしています。つまり、プログラム修正の必要は認めつつも、そこに悪意や違法性は認めないというスタンスです。
とはいえ、フォルクスワーゲンの違法プログラム問題が「ディーゼルゲート」として話題となった2015年の段階で、ダイムラーは多数のディーゼルモデルにおいてプログラムの修正を行なっています。今回のドイツ連邦自動車局による指摘は初めてというわけではないのです。
「ディーゼルゲート」により落ちたブランドイメージを回復する狙いなのか、ここ数年のフォルクスワーゲンは電動化を前面に押し出しています。そうした関係からか、ドイツ系ブランドではメルセデスがディーゼルエンジンを進化させるといったキャラクターを担う状況になっていました。最新のモジュール設計によるディーゼルエンジン「OM654」は、その象徴といえるユニットです。
市場規模を考えると、欧州全体で77万台余りというリコール対象台数は、そうした「ディーゼル推し」の方針を変えるほどのものではないかもしれません。しかし、メルセデスもディフィートデバイスを使っていたという報道によって市場マインドがガラリと変わる可能性も考えられます。今回の報道は、ドイツを軸にEVシフトが大いに進む潮目になるかもしれません。
(山本晋也)