【実録:ベントレーの車検代はいくらかかる? 第1話】「ピーコックブルー」のコンチネンタルR

○31歳の経営者、愛車はベントレー
唐突ですが、私は自動車業界を中心とした広告代理業やコンサルティング業を主力事業とする会社を営む、先日31歳になったばかりの経営者です。そして、愛車はベントレーです。

ここまで聞いて、「お、クルマが好きなんですね!」というリアクションをされる方は極まれで、ほとんどの方が「お金持ちなんですね」という反応をされることは経験上明らかです。30歳そこそこという年齢と、「コンサルティング業」という実態のわかりにくい商売をしていることも手伝い、なんだか怪しい人なのではという顔をされたことも一度や二度ではありません。

しかし、私をよく知る友人たちは、私が自他ともに認めるエンスージアストであることを公言してはばからないでしょう。今でこそご縁があって会社を経営していますが、社長になってベントレーを買ったのではなく、まだサラリーマン時代の27歳の冬、年収にして300万円台の頃に96回もの長期ローンを組んでベントレーを購入したのです。その時の波瀾万丈なストーリーはまた別の機会に改めたいと思いますが、そこから私の人生は文字通り大きく変わり、それから3年後に独立することとなりました。会社名は、ベントレーのボディカラーである[ピーコックブルー]を採用しました。

さて、そんな私のベントレーが、この度車検を迎えました。正確に言えば、1年ほど前に車検は切れていたのですが、私自身多忙だったことに加え、平たく言えばお金がなかったりなどの事情もあり、しばらく倉庫で保管していました。当然、走行することはありませんでした。そんなベントレーの車検事情を、お伝えしたいと思います。

○ピーコックブルーのコンチネンタルR
本題に入る前に、私のベントレーについてかんたんに紹介しておきましょう。クルマに明るい読者諸氏なら、ベントレーのどんなモデルを購入したのか気になっていることでしょう。私が手に入れたのは、コンチネンタルRというクーペです。ピーコックブルーの外装色に、サンドストーンというベージュ系の色に染められたコノリーレザーの内装、心臓部には6.75リットルのV8エンジンを搭載する、新車価格は4000万円にも及ぶ、当時世界で最も高価なモデルの1つです。コンチネンタルRは、1275台というベントレーとしては決して少なくない数が生産されたモデルですが、バブル崩壊後の1992年以降に販売された、しかも2ドアクーペということもあり、日本への輸入はそれほど多くはありません。その後の海外流出も加味すると、現在日本に生息しているのは多く見積もっても数十台というところでしょうか。そういう意味では、稀少車と呼んで差し支えないでしょう。

私のコンチネンタルRは1996年式で、ありていに言えばマイナーチェンジ後の後期モデルです(ベントレーでは伝統的にマイナーチェンジという呼び方をしませんが)。購入当時の走行距離が約9万キロということに加え、右ハンドル仕様ということもあり、比較的リーズナブルなプライスタグが付けられていました。余談ですが、当時も現在もベントレーはおよそ9割が左ハンドル仕様であり、右ハンドル仕様の方がリセールバリューが悪くなるというのがふつうです。ただ、エンスージアスティックな私の視点から言えば、本場英国の右ハンドル仕様の方が好ましかったことは言うまでもありません。そうして、私は良い買い物をしたという満足感とともに、そして96回、つまり向こう8年間の自分への前借りと引き換えに、ピーコックブルーのコンチネンタルRを手に入れたのでした。

(ピーコックブルー・瓜生 洋明)