左側通行で左ハンドル? 日本仕様なら右ハンドルにすべし!【ココがおかしい日本のクルマ&交通事情・第二回】

携帯電話のガラパゴス化とか言われることも多いけど、じつは日本の自動車社会もかなりのガラパゴス。おかしなことが当たり前に扱われている日本の自動車社会のあれこれを、自動車ジャーナリストの諸星陽一がぶった切ります。

「輸入車」「外車」を「左ハンドル」と呼んだ時代もあった。

今では輸入車と言われることが多い外車をその昔は「左ハンドル」と表現していた時代があります。日本はクルマは左、人は右……というルールですので、右ハンドル仕様が正しいハンドル位置です。イギリスを除く欧州とアメリカはクルマが右側通行なので左ハンドル仕様となっています。そうした国から輸入されたクルマは左ハンドルだったので、左ハンドルであることがステータスとされた時代があります。

今でこそ、日本向けのクルマの多くは右ハンドルになりましたが、今でも左ハンドルしか存在しないクルマもありますし、あえて左ハンドルを選ぶ人も少なからずいます。シート、ステアリング、ペダルの位置からだけドライビングポジションを考えたとき、左ハンドルがメインの車種の場合、左ハンドル仕様のほうがこの関係がいいことが多いのは事実です。また、左ハンドルの場合は左側にホイールハウスがあるのでフットレストの位置を最適化しやすいという利点があります。しかし、一方通行のサーキットを走るわけではありません。走るのは一般公道の左側車線です。ですから右側にハンドルが付いていることが“正しいドライビングポジションの基本中の基本です”。ときどき「●●●は左ハンドル仕様こそ正しいドライビングが得られる」といったような表現がみられますが、自動車評論家の仕事は“ちゃんとした右ハンドル仕様を作ってこい”と提言することだと私は思います。

本国では左ハンドルでも日本仕様は右ハンドルの輸入車も増えている。

また、右ハンドルに直されたクルマでもウインカーの位置まで変更されていることはまずありません。右ハンドルであっても、ウインカーレバーは左、ワイパーは右というままです。これじゃあ、運転しづらくてしかたありません。日本の自動車メーカーが左ハンドル車を作る場合、多くはレバー位置も変更します。日本車がそうしてユーザーの使い勝手を考えて作っているのに、輸入車がそうならないのはなんだか日本のユーザーが軽視されている、わかりやすく言えばナメらている、という気持ちになります。

左ハンドル仕様に対応するために料金支払機を2つ設置したりとインフラが負担するコストも増えます。ショッピングモールの駐車場なら百歩譲って許しますが、有料道路の料金所や公共駐車場の料金所でこれはおかしい。左ハンドル車は余分な料金所用システムの差額を払ってもいいんじゃないでしょうか?

自国のハンドル位置(右側通行なら左ハンドル)と逆向きのハンドル位置が許されない国も多く存在します。日本も外圧に負けることなく、そういう方向性を打ち出していってほしいものです。ウインカーレバーの位置も含めて。

(文・諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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