映画ボンドは、1995年『ゴールデンアイ』から2002年『007ダイ・アナザー・デイ』までの4作が5代目ピアース・ブロスナンでした。アイルランド人のブロスナンは、スコットランド人コネリーの次に私の好きなボンドです。題名は忘れましたが、007前の映画で暗殺者を演じましたが、端正な容貌と冷酷さに魅せられました。
そうそう、原作者イアン・フレミングは、コネリーのボンドに大満足し、第3作『2度しか生きない(邦題『007は2度死ぬ』)で、ボンドの父はスコットランド人、母がスイス人と明かしました。
さて、ブロスナンの3作は、BMW協賛期でもありました。六本木の1995『ゴールデンアイ』試写会は、たしかBMWジャパンの協賛でした。もう一社のスポンサーがボランジェ・シャンパンで、試写会でふるまわれました。以来、映画007とボランジェの付き合いは長いようです。脱線しますが、私個人的好みはテタンジェです。フレミングの原作『カジノ・ロワイヤル』でボンドはソムリエに勧められ、テタンジェ43を注文します。もちろん、私の懐ではヴィンテージは、とても無理。通販5000円止まりでしょうか。
本題のBMWです。『007ゴールデンアイ』では、Z3のデビューが期待させました。装備部長 Qが「自爆装置(捕獲の危機で)、そしてヘッドランプ背後にスティンガー・ミサイル搭載」と説明します。映画中では、小型機で到着するボンドを出迎えるだけでした。しかし、前宣伝の効果は絶大で、BMWアメリカは「007・Z3」100台を市販しました。
ここで、皆さんにスゴイZ3をお見せしましょう。ミュンヘンのBMWクラシックは、まさに2、4輪の宝庫です。Z3の1台がなんとV12を積んでいるのです。
Z3は直4と直6シリーズがありました。社内で超弩級を作れないかという話がで、高性能車部門Mワークスのサムライが「850のV12が積める」、「まさか!?」、「やってみましょうか。」かくして1台だけのZ3M・V12が出来たのです。
ブロスナンの第2作、『007トウモロー・ネバー・ダイ』では、2台のBMWがZ3の埋め合わせをして余りある大暴れをします。また脱線します。ブロスナン期の秘密機関トップMは女性です。女王陛下から騎士号受勲した大女優、名前に“デイム”称号がつくジュディ・デンチ、ただただひれ伏します。
ボンドはドイツで秘密機関所有BMW・750iLを受けとります。場所はエイヴィス・レンタカーで、Qがエイヴィスのユニフォームを着て登場。ボンネットの青白エンブレムがせり上がり現れるのが鋼線切断回転のこぎり。
ルールにはミサイル発射機、リアバンパー下がマキビシ放出装置、もちろんタイアはランフラットで自動空気圧上昇機能あり。
アクションシーンで、ボンドはエリクソン製携帯電話でリモート運転をします。『無人』750iLが駐車ビルを駆け回り、壁を突き破り飛翔、レンタカー・オフィスに自動返車となります。この750iLのダブルコクピットをご覧に入れます。無人運転に見えますが、ちゃんとリアシートにリクライニング姿勢、ディスプレイで外を見るスタントドライバーがいたのです。
この作品のもう1台のBMWがR1200Cスーパーバイクです。発表されたばかりの新型で、ボンドが駆り、中国秘密機関のウエイ・リン大佐を乗せ、サイゴン市中を悪漢のレンジローバーに追われ爆走します。ウエイ・リンを演じるのは中国系マレイシア人女優ミシェル・ヨーで、アクションシーンを自ら演じることて有名です。私生活では、元フェラーリF1監督・役員、現FIA(世界モータースポーツ元締)、ジャン・トッドのパートナーです。
なんだって無残な扱いを受けるのが、1999年『007ワールド・イズ・ノット・イナフ』のBMW・Z8でした。BMWは数個のモックアップと試作車を提供したといいます。Z8は、名車507の夢をもう一度と、BMWが少数製作した高性能ラグジュリーカーです。
『チョッパー(ぶった切り刃物)とはヘリコプターのニックネームですが、悪党のヘリ、文字通り巨大チェーンソーをぶら下げ、港湾設備を手当たり次第切りまくります。ボンドは、リモート運転でZ8を始動、なんとかミサイル1発発射し、チョッパーを撃墜します。しかし、落下したチェーンソーがZ8を縦方向まっぷたつに切断します。ボンドの、「アーアッ!」の嘆声が聞こえそう。
(山口 京一)