インチアップといったら、クルマの世界ではホイールのインチアップを指すことが多いでしょう。正確にはホイールのリム径をより大きなものに交換すること。ホイールを変えたら、そのぶんタイヤ側で外径やタイヤ幅などのサイズを調整する必要があります。
それを踏まえてインチアップすることのメリットやデメリット。その情報は巷にあふれています。ホイールをインチアップし、同時にタイヤを低扁平率化すると、接地面積が拡大したり、サイドウォールが低くなるので、コーナリング、ブレーキング、操縦安定性など運動性能が向上し、なおかつスタイリッシュな足まわりを演出できる、というのが巷で言われる一般論です。だけどその反面、ばね下が重くなったり、不整地や轍(わだち)では逆にハンドルを取られやすくなるなど、デメリットも潜んでいます。
面白い事例をご紹介しましょう。グッドイヤー屈指のハイグリップラジアルにして、クラブマン達から絶大な支持を得るEAGLE RS Sport S-SPEC。そのラインアップの中にはトヨタ86/スバルBRZへの装着を想定した専用モデル「EAGLE RS Sport 86 S-SPEC」が用意されています。これは単一車種への専用モデルであるにもかかわらず、17インチが1サイズ(215/45R17)、18インチが2サイズ(215/40R18、225/40R18)と、合計3サイズが展開されています。なお、メーカー純正では205/55R16、215/45R17となります。
あらためてサイズを見比べると、純正と同サイズの17インチに比べて18インチは扁平率が低く、そして幅が拡がっていることが分かりますね。きっちりロードインデックス(負荷能力)を確保しつつ、外径もほとんど同じに。これぞインチアップのセオリー通り。他の車種やサイズでインチアップする際には、こういう事例を参考に。もちろん、信頼できるタイヤホイール専門店であれば、懇切丁寧に相談に乗ってくれるでしょう。なお、今年になって追加発売されたGTエアロパッケージではフロント215/40R18、リヤ225/40R18と、まさにEAGLE RS Sport 86 S-SPECとドンピシャでした。
86/BRZと、EAGLE RS Sport 86 S-SPECとの組み合わせならば、装着するホイールやブレーキ、サスペンションの選択肢がぐっと拡がりそうですね。なお、たとえ同じ銘柄であってもサイズによって当然乗り味は変わってきます。17インチのほうが乗り心地が良くて、静粛性も高い。そして純正のホイールがそのまま使えるぶんリーズナブルです。だけれどもサーキットでタイムを詰めるのなら、接地面積が広く応答性に優れた18インチが有利となるそうです。逆にサーキットであっても、86/BRZならではのコントロール性を楽しむのなら17インチ。費用を抑えられることも手伝って、ガンガン走って練習したい人にもオススメですね。または、エンジンがパワーアップしているようなチューニングカーならば18インチがいいでしょう。ホイールの選定によってはより大きなブレーキシステムを投入することも可能となります。
こうした事例にあるようにインチアップする際には、多種多様なアフターホイールのかっこよさに浮き立つ前に、まずは愛車の使い方をきっちりと見極め、装着するタイヤ銘柄から調査したほうが、幸せなインチアップ生活を送れるかもしれません。
(文:中三川 大地/写真:市 健治)
【関連リンク】
日本グッドイヤー株式会社
http://www.goodyear.co.jp/index.php
EAGLE RS Sport S-SPEC 製品ページ
http://www.goodyear.co.jp/products/tires/eaglerssport/eaglerssport.html