最新D型に試乗、スバルBRZはワンランク上のクーペになった

市場環境の変化というのは、直接的なライバルではないにせよ、マツダ・ロードスターのフルモデルチェンジやホンダS660といったニューモデルが登場したことにあります。

2012年にスバルBRZ(兄弟車のトヨタ86も)がデビューしたときには、国産モデルとしては長らく空白エリアとなっていた、2.0リッターのスポーツクーペで、しかもFRという駆動方式であることも希少性の存在感を示していました。

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しかし、2015年になって後輪駆動を採用した国産のオープン2シーターが登場。FRスポーツクーペとしての存在感が揺らぐわけではありませんが、クローズドクーペならではの割安感が出てきました。

なにしろ、新型ロードスターは1.5リッターエンジンで、249万4800円~314万2800円の価格帯。軽自動車で、3気筒ターボを積むS660は、198万円~218万円のメーカー希望小売価格となっています。

一方、BRZのメーカー希望小売価格は240万8400円~300万7800円のゾーン。屋根が開くことにかかるコストや、その代えがたい魅力を考えれば、比較するのは妥当ではないかもしれませんが、後輪駆動の身近なスポーツカーとしてみると、BRZには割安感という新たな魅力が生まれているのが2015年モデルで得た新たな立ち位置といえそうです。

走りにおいて、話題のオープン2シーターと比べると、排気量の余裕もあってトルク感にアドバンテージがあります。ちょっとした坂道でもシフトダウンすることなく、エンジンの力で登っていけるのです。その反面、スポーツクーペとしては比較的に小排気量で軽快さを感じていた部分については、相対的に大人びているように感じます。

つまり、マニュアルシフト操作を積極的に楽しみたいというマインドを重視するならば、軽量なオープン2シーターに魅力があるように感じます。BRZ単独での機能がダウンしたわけではなく、あくまで比較する相手が変わった(登場した)ことでの印象の変化といえましょう。

価格的にはお買い得感を増しながら、走りの面では余裕を感じさせるものになっているのです。

アプライドDになって、落ち着き感を向上させたハンドリングは、そうした市場環境による「お兄さん的キャラクター」へのシフトに、偶然でしょうが、マッチしたものといえそう。

スポーツクーペとしての熟成も進み、ワンランク上のイメージへ変身しつつあるBRZです。 

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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