日本初!話題のマレーシア車、プロトン サトリア・ネオでサーキットレースを走ってみた。

3月2日に袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたレーシングECO耐久に話題のマレーシア車、プロトン サトリア・ネオの市販第一号車が出場。なんと、筆者である私、北森が選手として参加させていただくこととなりました。

全日本ラリーや全日本ジムカーナで活躍中のプロトン サトリア・ネオですが、サーキットで乗るとどうなのか。非常に興味深い、というか好奇心でワクワクしっぱなしのスタート直前のスターティンググリッドの写真が下。

オーナーは一番右の青いレーシングスーツの方、ずらやん鈴木氏。普段は生くす子ちゃんとして活躍している前田まみちゃんもレースクイーンとして応援に駆けつけてくれました。

チートドライバーとしてスタートを担当してくれたのは、スーパー耐久のチームNOPROでSt5クラスのデミオに乗る野上達也選手。ちなみにチームNOPROもこのレースにエントリーしているために2チーム掛け持ちでのドライブです。

申し込み順のゼッケン番号がぞのままグリッド位置となり、18番グリッドからスタートした野上選手。2周目には5~6位にポジションを上げてくるという快挙。1.6リッター113馬力のエンジンでもコーナーリングスピードで詰めに詰める。コーナーではランサーエボリューションに迫るほどの勢いを見せていました。

今回乗せていただいたプロトン サトリア・ネオの仕様は、モータースポーツ応援パッケージといわれるCUSCOの機械式LSDに乗車定員5名仕様のロールバーを装着した特別仕様のCタイプに準拠。そこにCUSCO製のサスペンションキットZERO3とストラットタワーバー、リアにもタワーバーを装着。そしてPROTON R3ブランドのエアロを装着した、いわば走り系フルオプションの仕様です。タイヤはアジアっぽさを狙って?フェデラルSS595RS-Rの15インチ。エンジンやミッションに関しては全くのノーマル。

乗り味は国産のFF車と明らかに違います。特にリアサスペンションの粘りが格別!タイトコーナーでは加重移動で簡単に向きを変えられるほどリアを振り回せるのですが、高速コーナーではこれがライフ後半のフェデラルのタイヤか?と思うくらいべったりとタイヤを食いつかせるサスペンションの粘りを見せます。さすがマルチリンク式リアサスペンションの恩恵はかなり大きい。タイヤがヨコハマのネオバ08やダンロップのディレッツァZⅡであれば、もう一段速いコーナーリングスピードが発揮できるはず。

ボディーの強さもあってか、競技用のCUSCO Zero3というサスペンションキットを装着しても、高速コーナーで片側に荷重のかかる状態でボディーがミシリともいわない。ボディーが応力から逃げないので、だから固い足でもタイヤが逃げずに食いついていき非常に走りやすい

サスペンション形式と同様にコーナーリングの重要なファクターとなるホイールベースとトレッドの数値がまた絶妙。ホイールベースが2440mm、トレッドが1470mmで、その比率1.65という黄金比。駆動方式やエンジン搭載位置に違いはあるにせよ、名車といわれたスポーツカーのほとんどが、これくらいの数値と比率になっています。このくらいの数値のクルマはタイヤの場所が非常につかみ易く、コーナーの想定ラインやクリッピングポイントの寄せに威力を発揮します。

最近の新車にしては時代遅れともいえる油圧パワーステアリングですが、ことサーキット走行ではこちらのほうが乗りやすい。路面の状況がつかみ易く、ステアリングの手応えでフロントタイヤの様子が、まさに手に取るようにわかります。電動パワステだと一枚フィルターが入った感じがしますからね。

マニュアルシフトの操作感も、シビックType-R程ではないにせよ、カクカクと決まります。シフトレバーの剛性感も強いので、コーナーリング中の強引なシフトにもしっかり応えてくれそうです。

実際のラップタイムも、スタートドライバーの野上選手が最大5千回転のエンジン回転数の縛りの中で1分30秒台でコンスタントに周回。第2ドライバーは筆者が担当で1分37秒台が最高。平均的には1分4o秒台。第3ドライバーはもうちょっとフリーダムなエンジン回転縛りで1分29秒台。途中給油が出来ない4時間耐久のため、第3ドライバーには泣く泣くペースダウンのサインを出してしまうことになりましたが…。

しかし、全てのコーナーで通常選択するギアの1段高いところ、2速のコーナーなら3速で、といったドライビングでのタイムとして考えてみると、軽量化をしていない113馬力のエンジン搭載車としては悪くないラップタイムであるといえます。

筆者の所有車であるヨコハマのネオバ07を履いた6N型フォルクスワーゲン ポロGTIでも同じレースに出場したことがありますが、このときに出したベストラップは1分40秒。そこから比べるとこのサトリア・ネオは3秒以上タイムアップしたにも関わらず、緊張感が極端に少ないリラックスした状態で走ることができました。

今回のような無給油縛りの耐久レースでサトリア・ネオの欠点を上げるとすれば、燃料計の指針が若干不正確なところ。満タンから半分までの針の動きがゆっくりで、そこから先が加速度的に動いていきます。そしてエンプティ直前がまたゆっくり。最終的なラストの針1本分はかなり正確なようです。

燃料計を信用しすぎて前半を飛ばしすぎたために、第4ドライバーから最終ドライバーにチェンジするときに燃料警告ランプが点灯。最終ドライバーのオーナーは完走目指してかなりのペースダウンを余儀なくされ、終始2分台で走行しなくてはならないという可愛そうな状況に…。しかし、サトリア・ネオの楽しさをオーナー以外がしっかり堪能させていただいたということです。…オーナーさん、ごめんなさい。

42リッターのタンクに給油量が40.39リッターという脅威の給油量。オーナーさんまで飛ばしていたらリタイア?オーナーさんの頑張りで無事に完走を果たしたサトリア・ネオの初サーキットレース。先ずは、めでたしめでたし。

新車から起こした今回の仕様でオプション部品、諸税、法定費用、自賠責保険まで含めた乗り出し価格はおおよそ250万円。リーズナブルにもほどがあるというプロトン サトリア・ネオ。燃料計の表示など、ちょっとしたアジアンクオリティなところがありますが、これほど乗っての楽しさと価格のバランスが優れているクルマはないのではないでしょうか?

(文・写真:北森涼介)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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