広さを中途半端に追わない、思い切りの良さが光るV40のデザイン

ボルボと言えば850や940のカクカクしたエステートだろう! という声も分かりますが、大容量エステートはV70あたりに任せておいて、V40がズバリ意識したのはスポーティさを強く打ち出しているAクラスや1シリーズなどのようです。

 

Cセグメントの多士済々、強烈なメンバーが揃うなかでボルボが取った手法は、クーペのようなスタイリッシュなフォルム。居住性や容量重視の荷室よりもデザイン性を重視した、兄貴分のV60の後をトレースしたかのような手法です。

 

ボルボV40は、C30とV50を統合する形で生まれた5ドアハッチバックですが、C30のデザインも手がけたエクステリアデザイナーのサイモン・ラマー氏が来日し、デザインのポイントを紹介してくれました。

 

なんでもデザインでも安全装備でも「ドイツのライバルとって頭痛のタネ」になるような存在を目指したそうで、エクステリアではV字シェープと横長のグリル、波を打ったかのような流麗なフォルムは路上での確かな存在感を狙ったそうです。

こちらがボルボP1800で、V40のリヤドアのフック形状として継承されています

 

弧を描くルーフラインと、右肩上がりのショルダーラインによるサイドビューはまさにクーペの常套手段で、リヤドアにあるフック形状のキャラクターラインは、名車ボルボ「P1800」へのオマージュとのこと。

 

また、同氏はC30の外観デザインを手がけただけあって、後ろ姿もなかなか印象的です。クーペのC30ほどではないですが、寝かされたリヤウインドウと6角形のテールゲートによるインパクトは、比較的コンサバティブなデザインの多いCセグメントのリヤビューの中でも個性的で、目を引くのは間違いありません。

 

インテリアは「人を中心にデザインし、単なる人間工学には終わらず、広く感じられるように」というのがテーマ。スカンジナビアンのエッセンスが漂うクールなインパネは、お馴染みのセンタースタックをはじめ、こちらも個性という点では濃いものがあります。

 

ただし、センターパネルに数多くのスイッチを配し、さらにステアリングコラム左側から生えるレバーとステアリングスイッチも操作させるインターフェイスは洗練されているとは言いがたく、完全に慣れるにはかなりの時間を要する印象です。

 

ユニークといえば、「Elegance」、「Eco」、「Performance」というメーターのカラーとデザインを変えられるデジタルメーターもほかにはない意匠です。Ecoは省エネ運転を、Performanceは加速しやすい環境をメーター表示で与えているのが特徴。この3モードはどのモードでも出力の違いはないそうなので、自分の足でセッティングするためのメーターデザインの変更という、ギミックといってしまえばそうですが、デジタルメーターでも、オモチャっぽいチープさはありませんし、遊び心も評価できます。

 

メーターデザインを「Eco」にするとグリーンになり、エンジンの温度計の替わりにEcoガイドを表示。中央にはカメラで拾った標識による制限速度もされます

気になる居住性は、身長171cmの筆者がドラポジを決めた後ろで膝前には20cmほど、頭上には手の平2枚ほどの空間しか残りません。とくにヘッドクリアランスは不足気味で、やや圧迫感もあります。しかし、シートは大きくて座面の前後長、背もたれの天地高も十分に確保されていますし、厚みもたっぷり。大型のヘッドレストは後席に座らないときは、倒して後方視界を確保することもできます。

 

荷室容量はV40が335〜1032Lで、1シリーズは360〜1200L、Aクラスは341〜1157Lとライバルよりも下回っていますが、フロアボードの下にサブトランクを備え、さらに不ドアボードを立てて固定することで仕切りとしても使えます。その際にはフック付きになり、エコバッグなどを掛けられるなど、細部に工夫が凝らされています。

 

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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