徳大寺先生もびっくり!自動運転レベル3も搭載された新型メルセデスSクラスから見えるその時代の「最高」とは?【清水和夫のクルマたちよこんにちは・Vol.6】

■ついに登場、自動運転レベル3搭載の7代目メルセデスSクラス!

●『メルセデス』か『ベンツ』か…おじさんはどう呼ぶ?

7代目となるメルセデスのフラッグシップであるSクラスがフルモデルチェンジしたね。どんな技術が搭載されているのか、とても気になるなぁ。

7代目メルセデスベンツSクラス
ついに発表された7代目メルセデスベンツSクラス。

ところで、日本のおじさんたちはメルセデスとは呼ばずに『ベンツ』と呼ぶ人が多い。そもそも『メルセデス』はダイムラー社のクルマだったけど、売るのはフランスの貴族たちだったので、フランス語的発音の実存する女の子の名前『メルセデス』を車名にしたのです。苦肉の策という感じだな。

日本ではメルセデスは発音が難しいので、『ベンツ』とシンプルに呼ばれていたんだね。そのベンツ、昔は怖いお兄さんたちが乗るクルマの代表だったし、黒塗りのSクラスのベンツは威厳もあり、どんな人が後ろの席に乗っているのだろうか…と思うと、ちょっと怖かった。

7代目Sクラスのコクピット
7代目Sクラスのコクピット。

●地雷を踏んでも壊れない特別仕様の3代目Sクラスがある!?

自分の記憶が薄れてきているけど、たしか3代目Sクラス(1991年~)がスイスのジュネーブショーで発表されたとき、メルセデスのブースの裏に秘密の部屋が用意されていた。

3代目Sクラス
3代目Sクラスには何があっても壊れない特別仕様があった!

某国の大統領が乗る防弾仕様のSクラスが置かれていたのよ。〇〇口径の拳銃で打たれてもフロントガラスは割れないとか、地雷を踏んでも床に穴が空かないとか説明を受けました。ドアを開けてみたけど、片手では閉められないくらい重かったね。

さすがに、日本では記事にしない!という約束で、こっそりと見せてもらえたのであります。

とにかく、世界の高級車の代表選手のような存在のSクラスは、常に最新のテクノロジーを満載していたわけです。

●Sクラスは気品か威厳か…

M120のV12エンジン
M120のV12エンジン

もうひとつの思い出は、メルセデス初のV12が3代目から採用されましたけど、「BMWが先にV12を出していたので、意地でメルセデスもV12か!」と思ったね。

で、Sクラスという名前はこの3代目の途中でモデル名を変えたのです。

そうそう、デザインでは2代目のW126(1979年~)までが気品のある高級車だったけど、3代目から威厳にイメージが変わってしまったよね。グローバル化と関係があったのかどうか、当時のデザイナーに聞いてみたいと思うのです。

Sクラスは気品か威厳か
1982年にデビューしたW201(左/190)、1984年登場のW124(中/Eクラス)、1979年に誕生したW126(右/Sクラス)。

おかしかったのは5代目のSクラス(2005年~)。5.5LのV12エンジンに、更にターボを搭載したのです。当時のメルセデス部門のトップであるユルゲン・フーバート社長に「なぜダー!?」とディナーのときに聞くと、その答えが素敵だった。

「誰が一番か教えなくちゃ」。

同席していた徳大寺有恒先生もびっくり! メルセデスの広報担当は…。

「聞かなかったことにしてね」

と慌てていた。

6代目は環境問題を前にして、大きな高級車に厳しい目が向けらていましたが、V6ディーゼルでCO2を下げることに必死でした。このモデルはガソリン・ハイブリットもラインアップされていたり、ディーゼルの直列6気筒も登場しています。電動化とディーゼル、まさに百花繚乱のパワートレーン大作戦だったな。

●世界初発表、自動運転レベル3を早く味わいたい!

そして、ついに7代目Sクラスが2020年に発表され、デジタル技術を駆使したMBUXや自動運転技術が満載されているのです。

自動運転レベル3
踏切も認識、自動運転レベル3搭載です。早く試したいね!

レベル3を搭載する自動運転の市販車はおそらくホンダが世界初になると思うけど、今のところホンダの技術発表がないので、ニュースとしてはSクラスが世界で初めて自動運転レベル3のメルセデスを発表したのですね。

7代目Sクラスのフェイス
ドイツでは2020年9月中旬に受注が開始されるそうですが、日本導入の時期は不明だそうです。

デザインでは気品から威厳へ変化してきたものの、7代目のSクラスはどんなデザイン・イメージを醸し出すのか、楽しみですね。しかも、時速60km/hまでですが、自動で走る機能を早く味わいたいものですな。

1991年当時の清水和夫さん
3代目Sクラスが発表された、1991年当時の清水和夫さん(左)。

(清水 和夫/画像:メルセデスベンツ)

この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
続きを見る
閉じる