年度途中でクルマを手放したら支払った税金はどうなるの?【クルマの税金基礎知識・2022年版】

■クルマにかかる税金は、クルマを手放したら返ってくる?

クルマとお金
クルマに対しては多くのお金がかかります。税金や保険料の流れを知ることで、無駄な税や保険料負担が減っていくでしょう

毎年5月は自動車税の支払時期です。2020年から「自動車税種別割」と名称が変更されましたが、クルマを保有している人にとっては名前が変わっただけで、納税の内容は変わっていません。2022年の納期限は5月31日です。

クルマにかかる税金は非常に多くの種類がありますが、これらの税金は、クルマを手放したら返ってくるのでしょうか。今回はクルマを手放した時の、クルマに関する税金の流れについて解説していきます。

●「還付」と「返金」は違うということを理解する

お金が返ってくるという意味では、還付も返金も同じ意味ですが、「どこから」「誰から」お金が戻ってくるのかという点で意味が異なります。税金によく使われる「還付」という表現は、行政機関などが税金や押収物を所有者に返すという意味があり、「返金」はその名の通りお金を戻すということです。

直接行政からユーザーにお金が戻る「還付」と、税金の支払い義務者が変わり今まで払っていたお金が単純に戻される「返金」とでは、手続きの流れもお金が戻ってくる仕組みも変わるので注意が必要です。

●「還付」されるのは、抹消手続きを行った時

クルマの税金
クルマに対してかけられている税金の一部は、抹消手続きで還付されます。「還付」と「返金」は意味が違うことも理解しておくと万全です

自動車税種別割や自動車重量税は、抹消手続きを行うことで、余分に支払った税金が「還付」されます。これは自動車税や自動車重量税が前払いの税金という特性があるからです。

たとえば自動車税の場合、当年の4月1日にクルマの使用者であるユーザーに対し、翌年3月までのクルマの使用にかかる税金を徴収しています。つまり今年の5月に支払った自動車税種別割は、来年の3月31日までクルマを使用するために、あらかじめ支払っている税金ということになります。

車検時に支払う自動車重量税についても同様の性格があり、乗用車の場合には車検有効期間である向こう2年間、クルマを使用するために支払っている税金です。

したがって、期間満了を前にクルマを手放し、抹消手続きを行う(ナンバープレートを返納して、公道を走れないようにする)ことで、税金の「還付」を受けることができるのです。

自動車税種別割に関しては、一時抹消を行うことで還付手続きが発生し、自動車重量税については永久抹消を行うことで還付手続きが発生します。

「一時抹消」とは一時的にナンバーを外し、車検有効期限を切ってしまうことで、クルマを使用できないようにする手続きのことです。一時抹消したクルマは、再度車検を取得し登録手続きを行うことで、公道を走れるようになります。

対して「永久抹消」は、その後に登録手続きを行うことができません。永久に公道を走る権利を失わせる手続きになります。廃車手続きにイメージが最も近いのが「永久抹消」です。

●名義変更の際にトラブルが発生しやすい自動車税

自動車税
名義変更のために必要な書類。手続きは管轄の陸運事務所で行います

クルマを個人間で売買したり、ディーラーや買取業者に下取りや買取りで売却した際に行われるのが名義変更です。クルマを売却・下取りに出した際には、抹消手続きが行われると思っているユーザーが多いですが、実際にはクルマに残った車検期間を生かすために、買取を行った業者の名前に名義変更されるケースが大半です。

また、一時抹消を行うことで新たにクルマを使用する際には多くの手続きと費用がかかるため、抹消手続きではなく名義変更を行うのが一般的です。

先に挙げた通り、抹消手続きを行えば行政機関からの還付が受けられますが、ほとんどのクルマの売買の場合には、その後に廃車が決定している場合であっても、抹消手続きではなく名義変更が先立って行われるために、自動車税種別割の還付は行われないことが多いです。

名義変更手続きでは、新たなクルマの所有者に対して自動車税種別割の納税義務は発生せず、そのクルマに支払われた自動車税をそのまま使用することができます。

ただし、これでは旧ユーザーは、自分がクルマを使っていない期間の分の自動車税の支払いが発生し、新ユーザーは自動車税を支払わずにクルマを使うことができるので、税負担の不公平が生じます。

そのため、通例として、新ユーザーは旧ユーザーに対して、自動車税種別割の残月数分の金額を支払う形をとるのが基本です。これにより、新ユーザーは自分が使用する期間の自動車税種別割相当額を支払い、旧ユーザーは抹消による還付を受けたのと同じようなお金のやり取りをすることになります。

これは行政機関が仲立ちしているわけではなく、個人間や顧客とお店の間で行われているお金のやり取りであることを理解しておきましょう。

自動車ディーラーや買取業者ではしっかりとこの手続きを踏まえて、自動車税種別割の返金が行われていることが多いですが、個人間売買の場合には、あらかじめしっかりと自動車税種別割分の支払いについて取り決めを行っておくことが重要です。

●自動車重量税や自賠責保険料などは買取価格に含まれている

商談
目に見える形で戻ってくることが少ない自動車重量税や自賠責保険料、下取りや買取りの際には、その金額に何が含まれているのかも確認する必要があります

自動車税種別割については、返金のような形で手元に目に見えるお金として戻ってくるケースが多いですが、自動車重量税や自賠責保険などは、残月数分を現金でユーザーに戻すというケースはほとんど無く、多くの場合は下取価格や買取価格に上乗せする形でユーザーへの返金をしています。

明細にいくらと明示されるケースは少なく、提示された下取金額の中に還付されるべき税や保険料が含まれていると認識しておきましょう。少々不透明な方法ですが、このやり方が一般的になっているため、クルマを売却する際には戻ってくる税金や保険料に留意しながら話を進めていくといいでしょう。

●まとめ

ちょっとわかりにくい、クルマに関する税金の行方について解説してきました。

クルマを手放す際には、支払った税金がどういう形で戻っているのかを確認し、理解しながら進めていきましょう。多くの税負担があるクルマですから、税金に対するしっかりとした知識を持つことが、ユーザー側にも必要になってきています。

(文:佐々木 亘)

※この記事は2022年5月6日に再編集しました。

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この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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