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■FM多重放送や光/電波ビーコンを利用
●ITS(高度道路交通システム)推進項目のひとつ
VICS(Vehicle Information and Communication System)は、道路交通情報通信システムです。VICSは、渋滞情報や交通障害情報、交通規制情報などをリアルタイムでカーナビに提供します。
FM多重放送を利用するFM-VICSと、光または電波を利用するビーコンVICSそれぞれの役割と仕組みについて、解説していきます。
●VICSとは
VICSは、各都道府県警察と道路管理施設が収集した交通状況に関する情報を日本道路交通情報センターが受け取り、VICSセンターからFM多重放送やビーコンを介してカーナビに情報を提供するシステムです。
VICSによって提供される道路情報は、渋滞情報や通行止めなどの交通障害情報、車線規制等の交通規制情報、高速道路や幹線道路での所要時間、駐車場情報などです。情報は、ラジオや道路掲示板、カーナビを通してドライバーに提供されます。
ドライバーは常時、VICSによって提供された周辺の交通情報を確認しながら最適なルートを選択できます。カーナビの地図上に、文字情報や渋滞箇所、規制箇所が分かりやすく表示されるので、道路表示板のように見過ごすことがありません。

●VICSの仕組み
VICSには、FM-VICSと電波ビーコンVICS、光ビーコンVICSの3種類があります。
FM-VICSは、NHKのFM多重放送を使ってデータの通信が行われます。電波ビーコンVICSは高速道路に設置された電波ビーコンという発信機から、光ビーコンVICSは一般道路に設置された光ビーコンから、情報が発信されます。
一般的なカーナビには、FM-VICS用の受信機が標準装備されていますが、ビーコンVICSに対応するためには別途ビーコンユニットが必要です。
●FM-VICS
FM-VICSは、FM多重放送を利用し広域エリアの道路交通情報を提供します。情報は、全国のNHK放送センター(53の基幹局と465の中継局)から提供されます。
FM多重放送では、エリアごとに区切られた情報が発信され、カーナビを搭載したクルマが移動する範囲で最も受信感度の高い(最寄りの)放送局の電波情報を自動的に受信します。
●電波ビーコンVICS
電波ビーコンは、高速道路の高度な道路管理システムを完成させる上で欠かせない存在です。
電波ビーコンの受信エリアは、ビーコン直下の約20mの範囲です。FM多重放送や光ビーコンに比べると、伝送速度が遅く送信できるデータ容量も少ないですが、前方1000km内の渋滞情報や規制情報、インターチェンジ間の所要時間が提供されるメリットがあります。
●光ビーコンVICS
光ビーコンは、一般道路(主に交通量の多い市街地)の前方30km内と後方10km内のVICS情報を提供します。提供される情報は、渋滞情報や規制情報、所要時間、駐車場の空き状況などです。
特徴は、センサーも兼ねた双方向通信で、情報提供だけでなく車両を特定し区間所要時間も計測できます。双方向通信を行うためには、1つのセンサーで1台のクルマを検知する必要があるので、受信エリアはビーコン設置場所直下の3.5mの狭域です。
ビーコンVICSの情報を利用して、渋滞を回避するダイナミックルートガイダンスが可能なカーナビもあります。

VICSは、人と車と道路の間で情報をやり取りする一体化システムを構築する「ITS(高度道路交通システム)」推進項目のひとつです。
VICSの高度化が進めば、ドライバーにとっての利便性だけでなく、渋滞が解消され輸送効率が上がり、交通事故も減少するなど運転環境と道路環境の大幅な改良が期待できます。
(Mr.ソラン)