【自動車用語辞典:電動部品「概説」】EVの急速な進化を支える中核部品の仕組み

■モーター、インバーター、2次電池が電動車の3大要素

●ワイヤレス充電もまもなく実現の気配

環境対応技術としてHEVやPHEV、EVなどの電動車は、この10年で大きな進化を遂げ、急速に普及しています。EVの急速な進化に貢献しているのは、モーターとそれを動かすインバーター、2次電池の3大要素部品です。

電動車の3大要素部品と電動車固有の電動部品について、解説していきます。

●さまざまなモーター

モーターには、いろいろな種類があり、標準エンジン車でも多用されています。例えば、エンジン関係だけでもスターターや電動スロットル、燃料ポンプなど、車体側も含めると100個程度のモーターが使われています。一般的に使われているのは、低コストで簡易な直流DCモーターでブラシモーターやブラシレスモーター、ステッピングモーターです。

電動車を動かす駆動用モーターには、エンジンと同等の役目を果たすために制御性に優れ高出力が求められます。小型EVの一部を除けば、一般的には交流ACモーターが使われます。

ACモーターの中では、小型で高出力の永久磁石同期モーターが主流です。ただし、永久磁石に希少なネオジムなどのレアアース(希土類)を使うため、コストが高く調達のリスクがあることが課題です。

●レアアースの調達リスク

レアースのネオジム磁石では、磁力を強化するためDy(ジスプロシウム)やTb(テルビウム)などを添加しています。

DyやTbの生産量は中国に集中しているため、現行のネオジム磁石を使う限り、中国の政策に影響されてコストと調達のリスクがあります。2010年には、中国がレアアースの輸出を規制したことがありました。

●インバーターの役割

通常ACモーターは、位相差120°の3相交流で駆動させます。インバーターは、直流電源を3相の交流に変換し、周波数や電圧を制御します。直流から交流に変換するのは、高周波PWM(パルス幅変調)制御を利用します。

PWMは、直流電源をスイッチングしてパルス状の電圧を作り、パルス幅を変化させることによって電圧値を変える手法です。高速のスイッチングは、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスター)で行います。パルス幅を一定でなく高周波で細かく変調すれば、滑らかな正弦波の交流に変換できます。

3相交流モーターの作動原理
3相交流モーターの作動原理

●2次電池とは

自動車用の電池は、正極と負極で別々に起こる酸化・還元反応を利用した化学電池で、充電による蓄電ができる2次電池です。2次電池の中では、リチウムイオン電池が最も軽量で高性能なので、現在は電動車用電池の主流となっています。

トヨタ・プリウスHEVは、初代から安価で安全なニッケル水素電池を使っています。ただ4代目プリウスでは、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の2仕様を用意しています。この10年の間にリチウムイオン電池は、課題であったコストと安全性などが大きく改善されて、HEVでもリチウムイオン電池へのシフトが進んでいます。モーター走行が多いPHEVとEVでは、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池の採用が必須です。

また将来電池として期待されている全固体電池が、2020年代前半には実用化される見込みです。これにより、高いエネルギー密度とリチウムイオン電池の課題である安全性などが大きく改善される可能性があります。

各種電池のエネルギー・出力密度
各種電池のエネルギー・出力密度
ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の比較
ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の比較

●充電システム

EVとPHEVでは、外部電源によって車載電池を充電する必要があります。EVやPHEVの課題のひとつは、充電時間が長いことです。

充電電圧や電流を上げて充電時間を短縮する試みとともに、注目されているのはワイヤレス充電です。ドライバーから充電の手間を開放するメリットがあり、また将来的には走行しながら充電できるシステムへと進化する可能性があります。


この10年の急速な電動化技術の進化は、言い換えれば3大要素部品であるモーターとインバーター、2次電池の改良に支えられています。

本章では、3大要素部品と電動車固有の部品である充電システムなどを、詳細に解説します。

(Mr.ソラン)

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