【自動車用語辞典:電動部品「全固体電池」】電解液を固体電解質に置き換えた次世代の2次電池

■エネルギー密度をリチウムイオン電池の2倍にできる

●低コストの量産技術の確立が急務

現在電動車の車載電池としては、リチウムイオン電池が主流ですが、EVでは航続距離が短いことやコストが高いなどの課題があります。リチウムイオン電池は、構成材料の改良によって日々進化し続けていますが、一方で最近全固体電池の開発が進み注目されています。

電解液の代わりに固体の電解質を使う次世代の全固体電池について、解説していきます。

●全固体電池とは

現在ほとんどの電動車は、車載電池としてリチウムイオン電池を採用しています。実用化されているEV用電池の中で、もっともエネルギー密度が高いためです。

リチウムイオン電池は、正極と負極、セパレータ、電解液で構成されています。電極の化学反応で発生するリチウムイオンが電極間を行き来することによって、充電と放電を繰り返します。

全固体電池は、その名の通りすべて固体で構成されています。リチウムイオン電池と類似のメカニズムを利用しますが、電解液が固体電解質に代わります。固体電解質の中をイオンが行き来することによって、充電と放電を繰り返します。

リチウムイオン電池と全固体電池
リチウムイオン電池と全固体電池の違い

●固体電解質によるエネルギー密度の向上

全固体電池は、高いエネルギー密度と出力密度の実現によって、航続距離を伸ばし充電時間も短くできるポテンシャルを持っています。理論上は、リチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度が達成できると言われています。

性能が向上できるのは、電解質が固体であるため電極が溶出しにくく、電解液に比べて電気化学的に安定性が高い材料が使いやすいためです。電解液では使えなかった出力電圧が高い、電流容量密度が高い電極材料が利用できます。

また、電解液の漏れの心配がなく、電池のパッケージングが簡素にできることもエネルギー密度の向上に貢献します。電池設計の自由度が高いことで、同じ容量のリチウムイオン電池よりもコンパクトにできます。

●リチウムイオン電池に対するメリット

性能向上の他にも、リチウムイオン電池に比べて多くのメリットがあります。

・安全性
リチウムイオン電池の課題のひとつに、発火に代表される安全性の問題があります。全固体電池は、無機系の固体電解質を用いるため、安定性が高く発火の可能性は極めて低くなります。

・作動温度の拡大
リチウムイオン電池は、低温ではリチウムイオンの移動抵抗が大きくなり、高温ではセパレータが溶融するため作動温度が限定されます。全固体電池では、それらのリスクが回避されるため作動温度が広くなります。

・劣化の抑制
電解液と負極の反応に起因する容量低下や内部抵抗の上昇による劣化は、高温になるほど進行します。固体電解質では、これらの影響を受けづらく劣化が抑えられます。

●今後の課題は

全固体電池では、現行のリチウムイオン電池で必要な電解液の液注工程が不要です。その点では、電池の扱いが容易で将来的には生産性が高くなる可能性はあります。ただし、現在は材料生産や量産技術が確立できておらず、安定した量産工程、特に低コストで製造する技術の確立が急務です。


トヨタは、2020年前半に全固体電池を搭載したEVを市場に投入する計画を進めています。その他にも、多くの電池メーカーや半導体メーカーなどが実用化に向けて開発を進めています。

リチウムイオン電池も大幅な性能向上が期待されており、2025年頃には電池の二極化が進むと予想されます。

(Mr.ソラン)

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