【自動車用語辞典:電動部品「ニッケル水素電池」】プリウスで一気に普及。コストと安全面に優れた2次電池

■正極は水酸化ニッケル、負極は水素吸蔵合金を用いる

●将来的にはリチウムイオンが優勢に

電動車にとって、車載2次電池はもっとも重要な部品のひとつです。電気エネルギーを供給する放電や、逆に得られたエネルギーを電気として充電する役目を担っています。

1997年の初代プリウス以降、トヨタを中心にHEVで採用されているニッケル水素電池について、解説していきます。

●2次電池とは

自動車用の電池は、正極と負極で別々に起こる酸化・還元反応を利用した化学電池で、充電による蓄電ができる2次電池です。充電することによって電気エネルギーを化学エネルギーの形で蓄え、放電時には化学エネルギーを再度電気エネルギーに変換して、充放電を繰り返します。

電池の能力を示す指標には、次のようなものがあります。

・バッテリ容量 (Ah)
蓄電可能なエネルギーで、一定の電流値で何時間放電できるかの指標です。例えば、容量10Ahとは、10Aの放電を1時間持続できる電気エネルギーを示しています。

・充電率 (%)
満充電100%に対する充電量の割合を、充電率SOC(State of Charge)として表します。

・エネルギー密度 (Wh/kg)
電池重量あたりの蓄電可能なエネルギーです。EVでは、満充電時の航続距離に関係します。

・出力密度 (W/kg)
電池重量あたりの瞬時に入出力できる電力です。瞬発力、加速性能を示すので、HEVで重視されます。

各種電池のエネルギー・出力密度
各種電池のエネルギー・出力密度
ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の比較
ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の比較

●ニッケル水素電池の作動原理

ニッケル水素電池は、エネルギー密度など性能的にはリチウムイオン電池に劣りますが、コストと安全面では優れています。エネルギー密度が小さいのでPHEVやEVには適さず、用途はHEVに限られます。

ニッケル水素電池は、正極に水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、負極に水素吸蔵合金(M)、これらをセパレータで隔離して、電解質は水酸化カリウム(KOH)で構成されています。

放電時には、水素原子Hが負極の活物質であるMHから正極の活物質NiOOHへ移動し、正極の活物質はNi(OH)2になります。
充電時には、水素原子Hが正極の放電生成物のNi(OH)2から負極の放電生成物のMへ移動し、負極はMHとなります。

放電 )  MH + NiOOH → M + Ni(OH)2  

充電 )  MH + NiOOH ← M + Ni(OH)2

ニッケル水素電池の作動原理
ニッケル水素電池の作動原理

●今後のニッケル水素電池は

プリウスをはじめ、初期のHEVでは、コストと安全性の面からニッケル水素電池が多用されました。しかしこの10年の間に、リチウムイオン電池のコストや安全面の改良が飛躍的に進み、HEV用でもリチウムイオン電池を使うクルマが増えています。

トヨタは、1997年の初代プリウス以降HEVには、ニッケル水素電池を使い続けています。しかし、4代目プリウスは、ニッケル水素とリチウムイオン電池の両仕様を用意して、2つの電池を使い分けています。

●トヨタのこだわり

なぜ、トヨタはニッケル水素電池にこだわるのでしょうか。

トヨタは、すでに20年以上HEV用電池として、ニッケル水素電池を使い続けています。開発や生産技術、リサイクルやリユースも進めて相当の投資を行っています。そのため、簡単にリチウムイオン電池に切り替えることができないという会社の事情があると思われます。


コストを優先するHEVなら、ニッケル水素電池を使うという選択肢はあるかもしれません。しかし、性能(燃費)を優先するなら、やはりリチウムイオン電池を選択するのが妥当だと思います。PHEVやEVではリチウムイオン電池しか使えないので、将来を見越しても正しい選択だと思います。

トヨタがニッケル水素電池を使い続けるのは、技術というよりは会社事情ではないでしょうか。

(Mr.ソラン)

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