【自動車用語辞典:電動部品「インバーター」】電流の変換だけでなくモーターの効率的な動作も担う重要部品

■交流変換の他、周波数や電圧の調整も行う

●最近はモーターと一体化されるケースも

電動車の駆動用ACモーターを制御するパワーコントロールユニットのインバーターは、モーターとともに電動車の基幹部品です。単に直流電源を交流に変換するだけでなく、効率的にモーターを駆動させるために周波数や電圧を調整する重要な役目を担っています。

駆動用モーターを運転状況に応じて精度良く制御するインバーターについて、解説していきます。

●パワーコントロールユニットの概要

パワーコントロールユニット(PCU)は、電動車でモーターを駆動させるなど電源電圧を調整する装置です。PCUは、主として以下で構成されます。

・昇圧コンバーター
バッテリ電圧をモーターの制御電圧に昇圧

・インバーター
駆動用モーターを制御するために直流電圧を交流電圧に変換

・DCDCコンバーター
高圧のバッテリ電圧を機能部品や車載電子機器用の12Vに降圧

中でもインバーターは、直流電源をACモーター用の交流電圧に変換し、運転状況に応じて駆動モーターの回転数と出力を制御する重要な役割を担っている中核部品です。

●インバーターの役割

通常ACモーターは、位相差120°の3相交流で駆動します。インバーターは、直流電源を3相の交流に変換し、周波数や電圧を制御します。

直流からモーターを駆動させる交流に変換するのは、高周波PWM(パルス幅変調)制御を利用します。PWMは、直流電源をスイッチングしてパルス状の電圧を作り、パルス幅を変化させることによって電圧値を変える手法です。パルス幅を一定でなく高周波で細かく変調すれば、滑らかな正弦波の交流に変換できます。

また減速時には、交流から直流に変換して減速回生の電力を回収するという役割も担っています。

PWMによる電圧調整
PWM(パルス幅変調制御)による電圧調整
高周波PWMによるインバーターの仕組み
高周波PWMによるインバーターの仕組み

●PWMインバーター回路によるモーター駆動

高周波PWMのスイッチングは、パワートランジスターのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)とダイオードを組み合わせたブリッジ回路で行います。6個のブリッジ回路のIGBTを制御することによって、位相差120°の3相交流を作り出します。

モーターのU、V、Wの3端子にそれぞれの交流電圧を印加します。コイルには、この3相電圧の高い方のコイルにN極、低い方にS極が発生します。それぞれの相の電圧は正弦波状に変化するため、各コイルから発生するN極またはS極とその磁界も回転方向に滑らかに変化します。この回転磁界によって、モーターは回転します。

3相交流モーターのインバーター作動原理
3相交流モーターのインバーター作動原理

●将来有望なSiCインバーター

モーターは負荷がかかると発熱し、高電圧を高速でスイッチングするインバーター(IGBT)も発熱します。効率低下や最悪の焼損を防止するため、通常インバーターはモーターと共通で水冷します。

現在、インバーターで最も注目されているのは、パワー素子のSiC(シリコンカーバイト)化です。従来のSi(シリコン)製に対して、SiCはスイッチング損失が少なく電力変換効率が高いため、発熱が大幅に低減します。その分、冷却システムを最大で半分程度まで小型化できるので、次世代の電動車に欠かせない部品と位置付けられています。

すでに一部の少量生産の電動車で採用されている例はありますが、コストが高いなどの課題があり、本格的な量産は2000年以降と予想されています。


最近は、モーターとインバーターを一体化したシステムが増えています。スペースの有効利用や高圧配線が不要などのメリットがありますが、そのためにはインバーターの小型化が必要です。

冷却性能に優れたSiCインバーターに期待するところ大です。

(Mr.ソラン)

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