【自動車用語辞典:電動部品「駆動用モーター」】ハイブリッドや電気自動車を動かす心臓部の仕組み

■主流は永久磁石同期モーター

●磁石を使わないモーター開発の動きも

HEVやEVなどの電動システムを構成する主要部品は、駆動用モーターとモーターを動かすインバーター、電池の3つの要素に分けることができます。このうちのモーターは、現在永久磁石同期モーターが主流となっています。

電動車で多用されている永久磁石同期モーターを中心に、駆動用モーターについて解説していきます。

●永久磁石同期モーターの構成

電動車の駆動用モーターとしては、高出力対応ができ制御性の高いACモーターが使われます。またACモーターの中では、小型軽量で効率がもっとも高い永久磁石同期モーターが主流です。

永久磁石同期モーターは、ローターに永久磁石を使い、周りのステーターはコイルを巻いた電磁石で構成します。コイルに3相の交流電流を流すことによって、回転磁界が作られ回転します。

永久磁石には、磁力の強いネオジムや添加するジスプロシウムなどの高価なレアアース(希土類元素)を使用しています。課題は、これらのレアアースの生産が中国に集中しているため、コストと調達のリスクがあることです。

●モーターの作動原理

実際にモーターを回転させるためには、永久磁石のローターに対して連続的に回転磁界を作る必要があります。3相交流は回転磁界が作りやすいため、現在の動力用モーターのほとんどは3相交流モーターです。

回転磁界は、120°位相が異なる3つの電流を制御して作ります。

鉄心にコイルを巻き、それぞれの相を放射状(スター結線)に結線します。それぞれの端子に、U、V、W相の位相差120°の交流電流を流します。それぞれのコイルには、この3相電圧の高い方のコイルにN極、低い方にS極が発生します。それぞれの相の電圧は正弦波状に変化するため、各コイルから発生するN極またはS極とその磁界も回転方向に滑らかに変化します。この回転磁界によって、モーターは回転します。

モーターの回転数は交流周波数を変化させることによって、トルクは交流電圧を増減させることによって制御します。

永久磁石同期モーター
永久磁石同期モーター
3相交流の電流/電圧
3相交流の電流/電圧

●磁石を使わないモーター

永久磁石同期モーターで使うレアアースのコストと調達リスクを回避するため、レアアースを使わない、あるいは磁石を使わないモーターの開発が進められています。

磁石を使わないモーターとして、誘導モーター(IM)とスイッチトリアクタンス(SR)モーターが有望視されています。

誘導モーターは、外側ステーターの交流電流で回転磁界を作り、電磁誘導作用でローターのコイルに誘導電流を発生させて電磁石として回転させます。調達リスクを考慮して、テスラやAudiなどの電動車で採用していますが、まだ効率は永久磁石同期モーターの約90%に対して10%~15%程度劣っています。

スイッチトリアクタンスモーターは、凸極型ローターとコイルを巻いた電磁石のステーターで構成されます。ステッピングモーターのように、このコイルに流す電流をスイッチングして、電磁石になる磁極を回転方向に次々と移動させることによって、ローターを回転させます。

将来有望なモーターと位置付けられていますが、振動と効率の改良が今後の課題です。

各種モーターの特性
各種モーターの特性
スイッチトリダクション(SR)モーター
スイッチトリダクション(SR)モーター

駆動用モーターは、標準車のエンジンに相当し、電動車の核となる重要な役割を果たしています。現在の主流は永久磁石同期モーターですが、課題は磁石で使うレアースのコストと調達リスクであり、磁石の改良や代替モーターの開発が進んでいます。

今後のPHEVとEVの普及は、電池とともに駆動用モーターの進化に大きく依存しています。

(Mr.ソラン)

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