【自動車用語辞典:電動部品「いろいろなモーター」】小さいものから駆動用まで。自動車に用いられるモーターの仕組み

■制御電流によりDCモーターとACモーターに大別される

●永久磁石に使うネオジムには調達リスクが伴う

電動車の駆動モーターとしては、一般的にはACモーターの永久磁石同期モーターが使われています。駆動モーター以外にも、自動車にはDCモーターやACモーターなどさまざまなタイプのモーターが使用されています。

自動車で使われているモーターとその原理や特徴について、解説していきます。

●モーターの動作原理

回転軸を持つ永久磁石の周りで磁石を回すと、回転する磁力によって永久磁石が引き付けられて回転します。モーターでは、磁石を回す代わりにコイルを巻いた電磁石のコイル電流を切り替える、または多相の交流によって回転磁界を発生させて回転させます。

モーターは、ローター(回転子)とステーター(固定子)で構成されます。ローターとステーターは、一方を永久磁石、他方を電磁石としてDC電流またAC電流の制御によって磁界を回転させるのが一般的です。永久磁石を使わないモーターも開発されています。

●DCモーター

DCモーターとしては、低コストが優先される場合にはブラシ付DCモーター、低騒音・長寿命が重視される場合はブラシレスDCモーターが使われます。また、位置制御にはステッピングモーターが使われます。

ブラシ付DCモーターは、ローターに電磁石を、ステーターに永久磁石を使います。ローターのコイル端子には整流子があり、自動的に磁界が変化するようになっており電流を流すことで回転が維持できます。ブラシの騒音や摩耗が問題なることもあり、徐々にブラシレス化に移行しています。

ブラシレスDCモーターは、電界効果トランジスターのスイッチングでコイルに流れる電流を切り替え、回転磁界を発生させます。ホール素子で磁石位置を検知して、最適な電流切り替えを行います。電動パワステや電動オイルポンプなどブラシ付からの変更が増えています。

ステッピングモーターは、ローターに永久磁石を、ステーターに複数の電磁石を使います。複数の電磁石のコイルのひとつに電流を流すと、ローターが電磁石に引き付けられます。その瞬間に電磁石をOFFにして、回転方向の次の電磁石のコイル電流をONにします。これを連続的に行うことによって、ローターは回転を維持します。

ブラシ付きDCモーター
ブラシ付きDCモーター
ステッピングモーター
ステッピングモーター

●ACモーター

ACモーターには、永久磁石同期モーターと誘導モーターがあります。違いは、永久磁石を使っているかどうかです。誘導モーターは、磁石を使わずに誘導電流によってトルクを発生させます。

永久磁石同期モーターは、電動車の駆動モーターに使われています。

永久磁石をローターに取り付け、外側ステーターの電磁石のコイルに多相(3相)交流を流して、回転磁界を発生させます。小型で高出力ですが、永久磁石にネオジムなどの高価なレアアース(希土類元素)が多量に使われてコストが高いことが課題です。

誘導モーターは、外側ステーターの交流電流で回転磁界を作り、電磁誘導作用でローターのコイルに誘導電流を発生させて電磁石として回転させます。ローターに高価な永久磁石を使わないことが最大の利点ですが、効率が低いのが課題です。

低コストや永久磁石の調達リスクを考慮して、テスラやAudiなどの電動車で採用されています。

●ネオジムの使用

電動車の駆動用として主流の永久磁石同期モーターでは、効率の良いネオジム磁石を使用しています。しかし、ネオジムや添加するジスプロシウムの生産は中国に集中しているため、調達とコスト上昇のリスクがあります。

ネオジム量を減らす、ネオジムを使わない、磁石を使わないモーターの開発が進められています。

永久磁石同期モーター
永久磁石同期モーター

自動車には、小さいものから駆動用まで含めると100程度のモーターが使われています。それぞれの用途に合わせて、最適なモーターが選定されています。

電動車の駆動用モーターは、従来の常用運転や定格運転でなく、エンジンのように広い運転領域で使われます。現在コストは高いですが、小型高出力で制御性の高い永久磁石同期モーターが多用されています。

(Mr.ソラン)

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