ニッサンGT-R NISMO 2020年モデル初試乗! 第3世代の到達点として記憶に残る完成度

Nissan GT-R NISMO MY20

ニッサン GT-R ニスモ 2020年モデル

大きな節目に行なわれた大改良

実は今年はPGC10型初代スカイラインGT-Rの登場から50年、R32型スカイラインGT-Rのデビューから30年という「GT-R」にとっては大きな節目の年である。この記念すべき年に、2007年に発表されてから12年目を迎えた第3世代GT-R、現行R35型が改良を受けて、2020年モデルとして発売を開始した。

前回のMY17では、主に基準車に大きな改良が施された。出力向上、空力の改善、ボディ剛性アップ、内装の刷新等々が行なわれたことで、まさに現CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)の田村宏志氏がかつて手がけたR34型スカイラインGT-RのM-Specを彷彿させる上質な1台へと進化を果たしたのだ。

今回の新型では、この基準車も改良されているのだが、より多くの力が注がれたのはGT-Rの“Rサイド”とも言うべき「GT-R NISMO」の方である。この新しいGT-R NISMOを、今回はドイツの一般道、速度無制限区間を含むアウトバーン、そしてラウジッツリンクサーキットという舞台で、とことん試すことができた。

狙いはトータルバランス!

新しいGT-R NISMOでは、トータルバランスを徹底的に追求したという。そう聞くと何やら面白みがなさそうにも思えるが、要するに狙ったのはパワーを突出させるのではなく、コーナリング性能もブレーキング性能も、それと肩を並べるレベルにまで引き上げることで、パワーを使い切れるマシンにすることだったと言っていい。実際、最高出力600ps、最大トルク652Nmという数値は従来と変わっていないが、ボディ、空力、サスペンション、ブレーキ、そしてエンジン等々、隅々にまで手が入れられて、パフォーマンス、そして走りのクオリティを格段に高めている。

まずエンジンは、ターボチャージャーが刷新された。翼枚数を11枚から10枚に減らすなどして質量を14.5%、慣性で24%も低減しながら、形状の吟味により過給圧低下を防ぎ、またフロー効率を向上させることで、出力は不変ながらアクセルオン時のレスポンスを20%も高めている。6速DCTはRモードの制御に手が入れられ、更にエギゾーストシステムのサウンドもチューニング。チタン製らしい青く輝くフィニッシャーで、その存在をアピールする。

細部に渡る軽量化に、ブレーキの強化も

もっとも大きなトピックが軽量化だ。外板パネルにはPCM(プリプレグ・コンプレッション;・モールディング)工法で作られたカーボンファイバー製パーツを多用。フロントフェンダーで4.5kg、エンジンフードで2kg、ルーフで4kgを、それぞれ削り取っている。更に、そのフロントフェンダーにはエアアウトレットが開けられて、ダウンフォースを稼ぐだけでなくエンジン冷却性能の向上も実現した。

ブレンボとの共同開発となるカーボンセラミックブレーキの採用も注目だ。前410mm、後390mmという大径ローターには、1000度を超える温度下でも変色しない黄色でペイントされた新開発キャリパーが組み合わされ、更にパッドも世界初採用の摩材を使っているという。これは制動力の向上はもちろん軽量化にも貢献していて、4輪合計で実に16.3kgのバネ下重量低減に繋がった。

タイヤも新開発で、接地面積を11%、グリップ力を7%向上させ、コーナリングフォースは5%高めたという。新形状の9スポークホイールは、4輪で合計100gを削り取っている。軽量化とは、こういうことの積み重ねなのだ。ダンパーは伸び側が20%、圧側が5%ソフトになっているが、これは軽量化に合わせたものだという。

室内では、RACARO製の専用シートの軽量化、高剛性化が進められ、ホールド性も高められた。これは車両のパフォーマンスが向上したことで、従来のシートでは不足するようになったという実践的な理由に拠る変更である。

そのシートは、率直に言って快適性にはあまり貢献していないが、それでも車両トータルで見れば、乗り心地は格段に向上している。実はスプリングは現行型よりリアが若干硬められているということだが、ダンパー、そしてタイヤの改良、更にはバネ下の軽量化の成果だろう。乗り味はしなやかで、上質な硬さなどと評したくなる仕上がりだ。これなら長距離ドライブも、少なくとも運転している側にとっては苦にはならないだろう。

一体感が増したドライブフィール

エンジンもひと言、好感触である。アクセルレスポンスは目に見えて鋭くなり、吹け上がりも軽快だ。欲を言えば、高速巡航時のエンジン回転数の高さは気にはなる。DCTが6速で、しかも遮音が最低限でしかないことのせいだろう。ギアがもう1段欲しくなるのは事実だ。

一方、減速時にはカーボンセラミックブレーキが、低速域、低温域でさえ抜群のコントロール性、そして制動力を見せつける。これまでの経験からカーボンセラミックブレーキへ不信感を抱いている人ほど、驚くに違いない。

もちろん、その真価がフルに発揮できるのはサーキットである。実は今回、ラウジッツリンクではMY17と最新型の乗り比べもできたのだが、その印象は鮮烈としか言いようのないものだった。

加速力は依然、圧巻としか言いようがなく、フル加速ではどこから踏んでも仰け反るかのようなダッシュを見せる。しかも新型はアクセルを踏み込んだ瞬間のピックアップが良く、しかもその先も軽やかに吹け上がる高いリニアリティを示すから、凄まじい速さとはいえ、一体感はより強まっている。それでいてトップエンドでは二段ロケットに火が点いたかのようなもうひと伸びを見せるのだ。その快感の前では思わず、貪るように右足に力を入れてしまう。

こうした場面ではギア比には特に不満を感じさせない。欲を言えば、多少ショックが増えてもいいから、もっとガツガツと繋いでくれてもいいくらいだ。

コーナリングも軽やか、ブレーキの効きも抜群!

加速もいいが、カーボンセラミックブレーキの減速も素晴らしい。タッチも制動力も文句のつけようが無く、まさに背後からいきなり首根っこを掴まれたかのように速度を殺していく。しかも、どれだけ200km/hオーバーからのフルブレーキングを繰り返しても、まったくフィーリングが変化しないのだ。それでいて微妙な制動力のコントロールも自在だから、ターンインの際の大きな助けにもなる。

そして何より進化が如実だったのがコーナリングだ。操舵に対する応答は非常にリニアで、実に軽やかに曲がる。奥で更に深くなっていくようなコーナーでは、リアがこれまでのGT-Rのイメージ以上の高い接地性を示すせいもあり、ややラインが膨らんでいく、舵角が大きくなる傾向も見られたが、これは前輪のキャンバー角の設定などで調整できるだろう。

比較すると、同じコースで乗ったMY17は旋回時に鼻先やルーフの重さを感じさせ、少し行き過ぎただけでアンダーステアが露呈するし、引き戻そうとすると逆にリバース傾向になりやすかった。単体で見れば決して悪くはないはずなのだが・・・新型の進化、一体感は想像を超えていたと言えそうだ。

改善されたターボラグ

コーナー立ち上がりでも、MY17は全開にした途端に前が浮くような挙動を見せた。2020年モデルの盤石の接地感との差は大きい。実はこれ、エンジンの出力特性も影響しているという。MY17ではターボラグの後の急激なパワーの盛り上がりが姿勢変化に繋がっていた。2020年モデルはパワーの出方がリニアになっているし、更にリアサスペンションのスプリングもわずかに硬められたことで、姿勢が安定したのだ。

とにかく新型のフットワークは正確性が高く、一体感に富み、軽快そのもので、コントロール性も抜群に高い。リアのじりじりとした流れ方などは、これまでのモデルではなかなか味わえなかったような感触で、どんな風にでも自在に操れるという気分にさせてくれる。

まさにトータルバランス重視で磨き上げられたその走りは、600psものパワーをまったく持て余すことなく使える、もしくは使える気にさせる凄まじくハイレベルな仕上がりで、もっと走りたい、走り続けたいという思いに駆られてしまった。GT-Rの走り、情感という面でも遂にこんな領域まで来たのか・・・と、感慨もひとしおだ。

値上げに見合った価値はある!

これだけの進化、あるいは深化の代償として、現時点では未発表の価格は、決して安くはないようである。MY17に対しても相当な値上げとなりそうだが、ざっくりした数字を聞くところでは、グローバルレベルでパフォーマンスを考えれば、決して高過ぎるというものではなさそうである。

新型ニッサンGT-R NISMO。第3世代GT-Rのひとつの到達点として記憶に残りそうな1台であることは間違いない。もしも予算が許すなら、手に入れておいて後悔は無いはずだ。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

【SPECIFICATIONS】

ニッサン GT-R ニスモ MY20

エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3.8リッター
圧縮比:9.0
最高出力:441kW(600ps)/6800rpm
最大トルク:652Nm/3600 – 5600rpm
最大エンジン回転数:7100rpm
トランスミッション:6速DCT
駆動方式:AWD
キャリパー:前ブレンボ製6ピストン 後ブレンボ製4ピストンモノブロック
ローター径:前410×38 後390×32mm

(GENROQ Web編集部)

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