アウディ TTシリーズがブラッシュアップ。トップモデルのTTSクーペを試す

Audi TTS Coupe

アウディ TTS クーペ

TTシリーズがマイナーチェンジし商品力を大幅にアップ

バウハウスデザインを取り入れてセンセーションを巻き起こした初代アウディ TTは、1998年の登場から今年で20周年。そして三代目となる現行モデルが、この度マイナーチェンジを行った。

一番のお買い得となるのはベースモデルの「TTクーペ40 TFSI」。そのパワーユニットは1.8TFSI(直噴ターボ)から2.0TFSIへとスイッチし、出力も17ps/70Nmアップの197ps/320Nmへと向上している。駆動方式はFWDで、トランススミッションは7速Sトロニックだ。

またその外観も、これまではオプション装備だった「Sライン」のデザインが標準装備となり、バンパー/サイドスカート/リヤディフューザーをエアロひと巻きスタイルアップ。その顔つきも、最新モデルでフェイスリフトしたR8と同イメージのヘキサゴン型シングルフレームグリルへと改められた。

シリーズ最強の286ps/380Nmを誇る「TTSクーペ」

そして今回試乗したのは、上位機種となる「TTSクーペ」である。搭載されるパワーユニットは専用チューンを受けた2.0TSFIで、クワトロ系のスタンダードモデル「TTクーペ/ロードスター45TFSI quattro」と同排気量ながら、その出力は230ps/370Nmから286ps/380Nmにまで跳ね上がる。

ここに組み合わされるトランスミッションは6速のSトロニック。その理由は言及されなかったが、湿式多版クラッチでより強大なトルクを柔軟に受けとめるためだろう。

さて、そんなTTSクーペをドライブして、最初に感じるのはエンジンの気持ちよさだった。TTに限ったことではないが、アウディ製の直列4気筒ターボはその吹け上がりに一切のムダがない、と筆者は常々思う。ブーストの掛かり方にオーバーシュート感や遅れ感がなく、正確無比にパワーを出す感触がたまらない。

たとえばジャーマンスリーで比べるとBMWは弾ける感じが強く、エモーショナル。メルセデスは重厚にしてNAライク。対してアウディの4気筒は、軽やかかつ精緻なのだ。

常用回転域からフラットにトルクを引き出す直4ターボ

1800rpmの常用域から発揮される最大トルクは5200rpmまでフラットに続き、ちょうどそのピークを迎えたあたりから今度は、回転力を使ってパワーを引き出していく。グワッとトルクで車体を押し進め、惰力が付いたところで理想的に車速の伸びをつくっていく。まさに理想的なパワーの出し方だと思う。

加速中に強大なトルクを感じながらもドライバーが目線をぶらさないでいられるのは、クワトロのトラクションが車体を安定させているから。そしてデジタル化されたタコメーターの針がレッドゾーンを迎えると、スタンバイされた次のギヤが瞬時につながる。

完璧なるロボタイズドシフトを退屈だと感じないのは、点火カットと同時に“ヴォッ!”と唸るエンジンサウンドが、演出をはらみながらも運転にメリハリを付けるから。電光石火のシフトチェンジは加速抜けを最小限に抑え、すぐさま背中をシートに押しつける。冷徹無比なその仕事っぷりこそが、アウディユニットの真骨頂なのである。

ダイナミックなフットワークと安定したハンドリング

取り付け剛性の高いステアリングと、ソリッドな座り心地のSスポーツシート。バーチャルコクピットを中心に据えたインテリアは、彫刻のように彫りが深い。丸形の三連エアーベントやスイッチ類はドライバーを囲み込むように配置され、その雰囲気はまるで自家用戦闘機である。

こうしたパワーユニットの楽しさを支えるのは、安定性を軸とするフットワークだ。 特に標準装備されるマグネティックライドダンパーのダンピングは秀逸で、足下の18インチタイヤを巧みにコントロールする。アウディドライブセレクトは状況に応じてエフィシエンシー/コンフォート/ダイナミックと選択可能だが、筆者の個人的なベストは“オート”。これを選ぶことで通常はしなやかにダンパーを伸縮させながらも、入力が高まったときにはこれをグッと引き締める。磁性流体の反応速度を使い、コンフォートとダイナミックの両方を日常から手に入れるこの贅沢さこそ、アウディのイメージにふさわしい。

そしてTTSのハンドリングには一切冒険がない。センターデフを持たないFWDベースの4WD制御は安定志向で、サスペンションセッティングも極めてオーソドックスなアンダーステア基調だ。しかしだからこそより多くの人々が、286psの出力を安全に味わうことができている。

スポーツカーらしさを演出するソリッドな乗り心地

唯一気になることがあるとすれば、その乗り心地がややソリッドなこと。具体的にはスプリングレートがやや硬すぎることだ。

いまや高級スポーツカーは高い走行性能に対して乗り心地をしっかり抑えるのが身だしなみ。TTSクーペもギリギリこれを両立しているとは思うのだが、TTというキャラクターを考えれば、もっと乗り心地をしなやかに振ってもよい。マニアを喜ばせるハンドリングを敢えて持たせないのなら、乗り心地は快適であって欲しい。

いってみればTTというスポーツカーは、A3のクーペ版だ。しかしA3をドーピングしたRS3が怒濤の速さとしなやかな乗り心地を高く両立するのに対して、より軽量なボディを持つTTSクーペ(RS3はスポーツバックで1590kg、セダンで1600kg。対してTTSは1460kg)が、バンカラ風味になっているのは少し不思議である。

TTSクーペに対して、通常領域でのボディ剛性不足は感じない。もしかしたらアルミとスチールを組み合わせるASF(アウディスペースフレーム)の、特にアルミシャシー部分が高いスプリングレートと反発し合っているのかもしれない

はたまたケイマンGTSやM2コンペティションの活躍で、敢えてわかりやすい辛口な乗り味としているのかもしれないが、アウディの真意はわからない。もしTTSクーペの上位機種であるTTRSが登場したら、その乗り味は先代の例を考えればさらに硬い乗り心地となるだろう。そしてこのスパルタンさを受け入れるかどうかが、TTのハイエンドモデルを選ぶ分岐点になって行くと思われる。

ミドルスポーツカー部門のセグメントリーダー

個人的に思うのは、TTSクーペはまだしもTTRSに限っては、A4と同じ縦置きエンジン+センターデフ式のクワトロを採用して欲しいということだ。常用域でよりフロントの駆動力を減らし、リヤタイヤの蹴り出しを多くすることが可能となれば、足まわりを固めずともその旋回性はさらに上がる。

なんだかんだ言ってもミドルスポーツカー・セグメントでアウディTTはセグメントリーダーである。安価なFWDモデルを持つ強みが効いて、一番の売れ行きを誇るという。だからこそ売れ筋はFWDベースのモデルに任せ、TTSクーペ以上のモデルには、特別にセンターデフ式のクワトロを搭載して欲しい。

そうすればTTは“お洒落番長”を卒業して、本物のスポーツカーになれると思うのである。いや廉価版でこうした売れ筋を備え、ハイエンドモデルで真の実力を示せると思うのだ。

未来への可能性を感じさせるTTシリーズ

次期型は縦置きエンジンモジュールであるMLB Evoを採用するというウワサもあり、かたやシュリンクするミドル・スポーツカー市場に対してTTがディスコンになるという正反対の話も出ている。さらに前後輪をモーターが駆動するようになれば、エンジンの縦置き/横置き論争などハナからなくなる。

つまり未来を予測することなど全くできはしないのだが、ともかくアウディ TTというスポーツカーには、まだまだ可能性が沢山残されている。 そんなことを感じた試乗であった。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

アウディ TTSクーペ

ボディサイズ:全長4200 全幅1830 全高1370mm
ホイールベース:2505mm
トレッド:前1565 後1545mm
車両重量:1460kg

エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ インタークーラー付ターボ
総排気量:1984cc
圧縮比:9.6
最高出力:210kW(286ps)/5300-6200rpm
最大トルク:380Nm/1850-5200rpm
トランスミッション:6速DCT

駆動方式:4WD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ウィッシュボーン
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後245/40R18
燃料消費率(JC08):11.8km/L
車両本体価格:799万円(税込)

【問い合わせ】
アウディフリーダイヤル TEL  0120-598106

(GENROQ Web編集部)

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