リニューアルされた「フィアット500X」に試乗! アーバンSUVの新潮流を築く

Fiat 500X

フィアット チンクエチェント エックス

内外デザインをブラッシュアップして新エンジンを採用

フィアット500と同じ顔をしたコンパクトSUV「フィアット500X」が3年ぶりに改良を施された。主だった変更点はエンジンと外観だ。いや、“それだけ”と言ってもいい。 でも、それでよいのである。

新開発1.4リッター直4“Fire Fly”は出力と燃費を向上

エンジンは1.4リッター(正確には1368cc)だった直列4気筒ターボ(140ps/270Nm)が、新開発の“Fire Fly”ターボへと変更された。軽量かつ放熱性に優れるオールアルミ製の直列4気筒ユニットは便宜上1.3リッターと名乗るものの、実際は1331ccへと排気量をダウンサイジング。燃焼室形状の見直しや、マルチエア方式の動弁系制御を最大限に活用しながら、実に151ps/230Nmのパワー&トルクを発揮するに至った。

ちなみにこれは、日本が誇るホットハッチ「スイフトスポーツ」(1371cc:140ps/230Nm)と同数値であり、従来型から+11ps/+40Nmもの出力アップとなる。なおかつWLTCモードで13.5km/リットルと、10%も燃費を改善している(欧州値)。

この他に機能面では現代水準機能としてACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を基軸とした各種先進安全装備が標準化された。

“500”ロゴをモチーフにした前後ランプとSUVスタイル

またバイキセノンタイプのヘッドライトとリヤコンビライトはアバルト124スパイダーばりにLED化され、フィアット500のロゴマークをモチーフに上下を分割するデザインが施された。もちろん、デイライトも分割型LEDだ(全てCross仕様)。

さらに先代よりもよりクロスオーバーらしさを引き立たせたバンパーが前後装着される。 だが、主立った進化はこれだけ。冒頭にも述べた通り、それでよいのだ。

なぜなら500Xを選ぶユーザーにとって今回のような化粧直しは購入動機に関わる重要な変更点であるし、このクルマは「変わらない良さ」もしっかり併せ持っているからである。

進化した走りと“変わらない良さ”を巧みに融合

さて、実際の乗り味は前期型の操縦性に対して、少しだけおっとり感が増したと感じた。 転がり抵抗を重んじる現代的な17インチタイヤのせいか、イタリアンらしい操舵における初期のレスポンスのリニアリティは、少し鈍った気がする。

パスタ感覚で言えば“塩をもうひと振り”。もしくはゆで時間を少しだけ短めに。MINIクロスオーバーほどとは言わないが初期の操舵レスポンスを立ち上げることができれば、よりそのキャラクターは鮮明になった気がする。

そういう意味ではこの500Xに“アバルト”仕様なんかが登場したら最高に面白そうだ。

ただ、そこから先のロール感、荷重がタイヤにしっかりと乗った領域は従来通りもっちりと穏やかなハンドリングで、懐深いコーナリングと、毎日乗っても飽きの来ない乗り心地の良さの両方がたっぷり楽しめる。

151psの最高出力と13.5km/リットルの低燃費を両立

そして、ここに新型エンジンがピリッと辛みを効かせる。

低速から素早く立ち上がるブーストは気持ち良く常用トルクを稼ぎ出す。ステアリング同様少し重たく設えられたアクセルペダルは、このトルクをミリ単位で操るのにドンピシャなセッティングで、こうした部分にテストドライバーたちの手腕を垣間見ることができる。

いざアクセルを踏み込めば、6500rpmのレッドゾーンまでエンジンがスカッ!と回る。この高回転でのパンチ力が、従来モデルよりも進化したポイントだろうか。決して速くはないのだが、体感的に満足感が高い。そのサウンドは決して甲高くはないが、“ゴーン!”と骨太で心地良い。

唯一残念なポイントがあるとすれば、6速DCTの制御だ。

特に次のギヤへとシフトチェンジする際のクラッチワークがパーシャルスロットル状態だと緩慢で、せっかくのデュアルクラッチなのに加速感が途切れる。

また長い信号待ちでアイドリングストップすると、走り出すときにエンジン始動やクラッチミートがワンテンポ遅れる。

ただこうした詰めの甘さがあっても、まったく憎めないから困ってしまう。

そういうときはアクセルをちょっと強めに踏み込んで速度を乗せてやり、アクセルを“スパッ”と離してからパドルで次のギヤをシフト! そうすればギヤはスムーズにつながり、タイムラグなく加速してくれる。2速のギヤ比が高いなら、それを覚えて3速からはシフトダウンしなければいい。

エトセトラ、エトセトラ。

対話を楽しみながらのシティクルーズが真骨頂

こんな風にクルマと対話しながら、腰のあるサスペンションと快活なエンジンを駆使していると、ただ街中を走っているだけなのに心が弾んでくる。

もちろん技術的な怠慢を許すわけではないのだが、この運転の仕方にはマニュアルトランスミッションで親しんだ彼らの運転スタイルが反映されている気がする。

むしろ今後技術的な問題が解決されても、こうした動的高揚感は、失って欲しくない。 これこそが日常を楽しむ天才、イタリア人の作る“マッキナ”である。

誰もが振り向く都会的センスに溢れた500X

最後に後期型の500Xは、前期型ユーザーの声を反映し、日本仕様だとFFのみのラインナップとなった。実状4WD仕様は上級装備を求めるために購入したユーザーが多く、燃費の良さを加味してFWDにレザーシートやLEDライトといった装備を用意した“Crossパッケージ”が主力に。ファブリックシートのベース車両は受注生産となる。

チンクエチェントは可愛いけれど、ちょっと小さくてファンシーに過ぎる。 そんな風に二の足を踏んでいた男性にこそ、500Xを選んで欲しい。

サイドサポートを効かせながらも柔らかく乗り手を包むレザーシートや、操作系のシッカリとした剛性感。意外なほどに骨太で誠実、そしてキザな乗り味や作りに、感度の高い人ほど心を奪わるはずである。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

PHOTO/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)

【SPECIFICATIONS】

フィアット 500X Cross

ボディサイズ:全長4280 全幅1795 全高1610mm
ホイールベース:2570mm
トレッド:前後1545mm
車両重量:1440kg
エンジン:直列4気筒マルチエア16バルブ インタークーラー付ターボ
総排気量:1331cc
圧縮比:10.5
最高出力:111kW(151ps)/5500rpm
最大トルク:270Nm/1850rpm
トランスミッション:6速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後215/55R17
燃料消費率(WLTC):13.5km/L
車両本体価格:334万円(税込)

【問い合わせ】
CIAO FIAT TEL 0120-404-053

(GENROQ Web編集部)

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