もうひとつのディーノ。2+2GTが誕生するまで(1972-1975)【フェラーリ名鑑】

V12以外はフェラーリではない

これまでにも解説してきたとおり、フェラーリの各車に搭載されるエンジンといえば、1970年代を迎えるまでのスポーツカーレースでは、500モンディアールや750モンツァ、860モンツァ、500TR=テスタロッサなど、直列4気筒モデルを除けば他はすべてV型12気筒エンジンを搭載するものばかりだった(バンク角は60度、65度、180度などさまざまなバリエーションがあったが)。すなわちV型12気筒エンジンは、フェラーリの象徴的なエンジンであり、逆に考えればV型12気筒エンジンを持たないモデルにフェラーリのエンブレムを与えることは、エンツォ・フェラーリにとっても、またカスタマーにとっても抵抗感のあることだったともいえる。

Dino 206 S(1966)

そこで最初はレースの世界で、そして後にプロダクションモデルの世界に進出してきたのがディーノというブランドだった。ディーノもまた、1950年代終盤からレースに積極的に参戦し、V型12気筒のほかにV型6気筒エンジンやV型8気筒エンジンを搭載するモデルで1950年代から1960年代のレースシーンを華やかに彩るが、その活躍は同時にディーノという、よりコンパクトで低価格なロードカーをフェラーリに求める声を高めることになった。

ディーノのボディがスチール製に変更された理由

ディーノ・ブランドで発売された最初のロードモデルである206GT、それに続く246GT/GTSはすでに紹介しているが、ここでさらに解説を付け加える必要があるのなら、206でアルミニウム製だったボディがスチール製へと変わった理由になるだろうか。

Dino 246 GT(1972)

その理由はもちろん、生産性の向上にある。それはフィアットによるフェラーリの生産車部門の買収が大きな影響力を及ぼしたものだった。スチールのボディパネルをプレス成型するのは、大量生産には最も適した手法ともいえるが、その反面スポーツカーには大きなハンデとなる重量増を生み出してしまう。そこでフェラーリは、ミッドに搭載されるV型6気筒エンジンを2419ccに拡大。最高出力は195psとされた。それによって加速性能は前作の206GTと同等のものとする目標を立てたのだった。またこのエンジンは、ランチア・ストラトスやフィアット・ディーノ・クーペ&スパイダーにも供給されたが、スペックには差別化が図られており、ランチア用は190ps、フィアット用は180psとなっている。

Dino 308 GT/4(1973)

ベルトーネによる2+2ミッドシップ

1973年になると、ディーノ・ブランドから「308 GT/4」のネーミングを掲げたニューモデルが誕生する。直線を基調としたボディスタイルが特徴的なこのモデルは、バンク角が90度のV型8気筒エンジンをミッドシップする2+2のGT。それが初公開された同年のパリ・サロンで見る者をまず驚かせたのは、それがピニンファリーナではなく、ベルトーネによってデザインされたモデルだったということだ。

ミッドに搭載されるエンジンは2926ccのV型8気筒。バンク角は90度とされ、これはその後のフェラーリにとって伝統的な設定となる。また車名に掲げられる「308」は気筒あたりの排気量ではなく、3000ccのV型8気筒モデルであることを意味している。ちなみにこの308GT/4と同様のコンセプトをもつモデルは、ランボルギーニからウラッコとしてすでに発売されており、このウラッコと308GT/4とは常にライバル関係にあった。だがランボルギーニの経営はこの時期思わしくなく、年間2000台というデビュー当初の想定を大きく下回る状況だった。

Dino 208 GT/4(1975)

そして、1975年になるとイタリア市場専売モデルとして「208GT/4」を追加(イタリアでは2リッター以上の車両には高額な税金が課せられたため)。1976年にはディーノからフェラーリにブランドを変更。1980年までトータルで3600台強を販売した。なおディーノブランドとしては、このモデルを最後に今日に至るまでニューモデルを出していない。

【SPECIFICATION】

フェラーリ 206 S

年式:1966年
エンジン:65度V型6気筒DOHC(2バルブ)
排気量:1986cc
最高出力:162kW(220hp)/9000rpm
乾燥重量:580kg
最高速度:270km/h

ディーノ 246 GT

年式:1969年
エンジン:65度V型6気筒DOHC(2バルブ)
排気量:2419cc
最高出力:143kW(195hp)/7600rpm
乾燥重量:1080kg
最高速度:245km/h

ディーノ 308 GT/4

年式:1973年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(2バルブ)
排気量:2926cc
最高出力:188kW(255hp)/7700rpm
乾燥重量:1150kg
最高速度:250km/h

ディーノ 208 GT/4

年式:1975年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(2バルブ)
排気量:1990cc
最高出力:125kW(170hp)/7700rpm
乾燥重量:1150kg
最高速度:220km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

(GENROQ Web編集部)

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