エアサス仕様のインプレッサWRX STIでアメリカ各地のタイムアタックレースを総なめ! 全米が注目する若きレコードブレイカーの素顔

エアサスを履く最強タイムアタッカー

エアサス仕様の鷹目インプ(GDB)で各地のコースレコードを連発!

アメリカ・ロサンゼルスから北におよそ70km。アグア・ダルシーは峡谷にある小さな田舎町だ。コーディ・マイルズは、その牧場と荒野が広がる自然豊かな場所で生まれ育った。家族が所有する15エーカーの土地(東京ドームより広い)が昔からの遊び場で、3歳の時には父親に与えられたオフロードバイクに乗っていた。

クルマの運転も、免許取得はおろか背が低くてろくに前が見えない時から体で覚え始める。安全が守られた敷地内で後輪駆動のファミリーカーを走らせていると、ドリフトやカウンターステアを自然と体得できたという。初めて買ったトヨタ・タコマでは、自らいじってメカニズムも学習。その頃から身につけたドラテクと知識が、気鋭のタイムアタッカーとして活躍する今に活きている。

OPTIONを含むチューニング雑誌を読み漁り、とりわけ日本のスポーツカーへの憧れを募らせていった10代後半。アルバイトでお金を貯めて、ついには念願だった07年式スバルWRX STI(日本ではインプレッサWRX STI)を購入する。だが、クルマを手に入れた帰路になんとエンジンがブロー。なんとかクルマを運んで近所のプロショップで見てもらったところ、水平対向の宿命でもあるオイル漏れが原因で中身はボロボロ。完全に使い物にならなくなっていた。

誰しも心が折れそうな状況だが、コーディは違った。EJ25を元の状態に戻すだけでなく、高品質なアフターパーツを使って、よりハイスペックなものに作り変えることを決意。またもバイトと節約に明け暮れる日々を自ら選んだ。

荒れ地の多い地元の道を車高が高いトラックで走ることに慣れていたコーディ。ある時WRX STIでも同じような快適さと便利さを実現できないかと、エアサスペンションに目をつけた。そこで出会ったのが現在彼のスポンサーにもなっているAir Lift Performanceだった。

コーディが真剣にタイムアタックに取り組み始めたのは2015年シーズンから。南カリフォルニアのサーキットを転戦するRedline Time Attackシリーズのストリートクラスで、参戦初年度にも関わらず全8戦中5戦で優勝を飾り、いきなりシリーズチャンピオンに輝いた。続く16年も同シリーズで4勝したのに加え、新たに参戦したGlobal Time AttackシリーズのストリートAWDクラスでも3勝してチャンピオンを獲得。そのうちロード・アトランタの1分31秒26と、ルイジアナ州にあるNOLAの1分48秒63というタイムはコースレコードとなっている。

そんな爆発的パフォーマンスを発揮するWRX STIの細部を、改めてチェックしていこう。

心臓部のEJ25は、スポンサーでもあるRenner Racing Developmentが用意してくれたクローズドデッキをベースに、ManleyのコンロッドやWisecoのピストン、EFR7163ターボなど高品質なパーツを投入。最高出力は500hp(約506ps)、最大トルクは500lb-ft(約69.1kgm)を誇る。

その他、Killer Bのオイルコントロールデバイスや、最初にこのエンジンを見てくれたYimi SportのカスタムAOSを使用し、憎きオイル&ブローバイ関連の問題もクリアした。

エクステリアはタイムアタッカー仕様ならではのフォルムだ。Wasp CompositesのシャーシマウントスプリッターやAPR Performanceのウイングなど、タイムアタックに欠かせない大型の空力デバイスを装備。コーディが自ら製作したカナードは2018シーズンから導入した自信作だ。インタークーラーの前置き化にともないボンネットスクープをKS-Tech製メッシュプレートで塞ぐ一方、空気の抜けを作るSingular Motorsportsのフードルーバーを追加している。

コクピットもスパルタンな作り込みとなる。ステアリングホイールは最近日本でも話題のGrip Royalをチョイス。バケットシートと5点式ハーネスもアメリカンブランドのRacetechとTeamtech製だ。

Autopower Industryの4点式ロールケージには、友人の力を借りて追加のバーやガセットを新たに溶接した。エアサスコントローラーはセンターパネルにビルトインされており、その上にあるCobbのアクセスポートV3で過給圧などのデータをチェックできる。

そして注目の足回り。撮影時はMBの18インチホイールとポテンザRE-71Rの組み合わせだったが、現在はよりワイドなambit製ホイールとフェデラル製タイヤにチェンジ。Air Lift Performanceのエアサスは、トランクにコンプレッサーとアルミタンクを設置し、3Hマネージメントという車高と空気圧の両方を調整できる制御システムを採用する。トランクの奥には燃料タンクから安定して燃料を供給するRedium Engineeringのフューエルサージタンクを設置する。

「本当にエアサスでタイムアタックして問題ないの?」と聞くと、ほらきたと言わんばかりにコーディは笑みを浮かべた。「もともとは普段乗りにいいと思ったから選んだんだけど、タイムアタックでもまったく問題ないよ。前後それぞれで空気圧を調整できるからコンディションに合わせてアジャストすることも可能なんだ。同じ質問はこれまで何度となくされてきたけど、言葉で説明するのは難しいから行動で示すようにしているんだ。答えは僕のタイムが証明しているよ(笑)」。

2018シーズンは、まず6月にミシガン州で開催されたGRIDLIFE(音楽とモータースポーツを融合した注目のイベント)に参戦し、さっそくクラス優勝をゲット。純粋培養の若きタイムアタッカー。その活躍から、しばらくは目が離せそうにない。

Photo:Akio HIRANO  Text:Hideo KOBAYASHI

web option編集部

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