【夢を現実に】スープラ愛ほとばしるアメリカの少年が描いた夢、それは20年という長い年月を経て結実した。

ティーンエイジャーの頃に憧れたドリームカーを手に入れ、資金と歳月をかけて理想とするクルマへと仕上げていく。クチで言うほど簡単ではなく、ときには挫折する可能性も大いに秘めた「贅沢な遊び」。幸運にもそれを極めることのできた、ひとりのオーナーを紹介しよう。


JDM meets Hot Rod - 信念と幸運の導き -

ディテールに強烈な拘りを込めてSEMAショー2015トップ10を達成

フェラーリのロッソコルサに染め抜かれたJZA80スープラ。オーナーのエンリケ・ムニョスは、テレビゲームのCGクリエイターを生業としている。エンジニアだった父親の影響を受け、子供の頃から身の回りにコンピュータがある環境で育った。専門誌に掲載されたコードを打つことに没頭する少年だったと言う。

そんなエンリケを夢中にさせた、もうひとつの宝物がクルマだ。高校生になると、友人達とロングビーチで夜な夜な行われていたストリートレースを見物。ある時、その友人が持っていたポスターに描かれたレーシングカーにハートを奪われる。

当時のJGTCに参戦していた2台のスープラ。ハイテクを象徴するジャパニーズカーに強烈な衝撃を受け、いつかそのクルマを手に入れたいという夢を抱くようになった。資金を貯め、ようやくパーフェクトな条件を備えた車両と巡り合ったのが23歳の頃。すぐさま購入して夢のファーストステップを踏んだ。

2003年には東京オートサロンを初めて訪れ、会場で織戸学サンがプロデュースするオリジナルブランド『RIDOX』のエアロパーツに一目惚れ。その場でGTウイングを売って欲しいと直談判した。アメリカへの送料がかかることも意に介さず、熱意を込めて自分がそれをどれだけ必要としているかをアピールした。こうと決めたことには一直線。何が何でも実現すると意志を貫く。昔からそういう性分なのだと言う。

車体を探すと同時に、スープラを理想の姿へと導いてくれるプロフェッショナルも探していたエンリケ。リサーチを開始した当時、スープラのチューニングは東海岸のほうが盛んで、なかでも彼が興味を惹かれたチューナーはニューヨークのクイーンズを拠点としていた。

諸事情も重なり、思うようにカスタムを進められない時期を過ごしたエンリケだったが、あるとき不意に幸運が舞い込む。例のニューヨークを拠点にしていたチューナー、双子のファブリケーターであるエリックとマークのコジェルフ兄弟がカリフォルニアへと移転し、『ツインズ・ターボ』というショップを開店したのだ。

さっそくコンタクトを取ったエンリケは、それまで溜めに溜めていた構想を兄弟にぶつける。想定よりも予算がかかることがわかり、それからさらに2年をかけて資金を貯めると、その情熱と粘りに感銘を受けた兄弟もオファーを快諾。そうしてプロジェクトが本格始動したのは、クルマの購入から11年が経過した2012年のことだった。

エンリケが最もこだわったのは、JDMであるスープラをホットロッドの精神をもとにモディファイすること。

多くの日本人にとって『ホットロッド』というと「旧いアメ車をベースにしたカスタム」といった漠然としたイメージしか浮かばないものだが、それは「最先端テクノロジーと伝統のクラフトマンシップを駆使し、とことんディテールにもこだわった、美しくて速いクルマ作り」という、確固たる思想と手法を指すのだ。

そのホットロッドの哲学に基づき、パーツのクオリティ、素材や色の使い方、仕上がりの美しさなどなど、時間と費用をかけた分、妥協のないモディファイを施したスープラは、2015年のSEMAショーにおいて、栄えあるバトル・オブ・ザ・ビルダーズ・トップ10に選出された。全米のカスタム業界で最も栄誉ある賞を獲得したのである。情熱を糧に憧れを現実のものとしたエンリケ。彼のスープラは、カスタムには強い信念が必要であることを教えてくれる。

Photo:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI

Full Race製のエキマニと4インチダウンパイプを使用し、インタークーラーは上部に取り外し可能なダクトを載せたVマウントと呼ぶ特徴的なレイアウトを実現。HKSカムやID2000インジェクターが投入され、エタノール燃料のE85に対応するボッシュ製フューエルポンプとフレックスフューエルセンサーも取り付けられている。エンジンベイを構成するメタルワークやワイヤリング、カスタムハーネスで接続するMoTeCのチューニングなどは、それぞれ専業の職人の手に委ねられた。ネジ1本からクランプに至るまで、細部の品質にこだわったのも、エンリケが言う「ホットロッドの精神」なのである。

2JZ-GTEはシンプルさと美しさを優先し、ターボチャージャーには大径のプレシジョン6766を採用。

BBSモータースポーツのコンペティションスペック・ホイールであるE88をリバレル。ピアスボルトとバルブキャップはすべてARP製だが、なかでもバルブキャップは世界に2セットしかないうちのひとつで、SEMA出展時にエンジンルーム内のボルトがすべてARPだったことに感動した関係者からプレゼントされたものだとか。タイヤはトーヨーのプロクセスR888だ。

エクステリアは日本からはるばる直輸入したRIDOXのボディキットを投入。JGTCのスープラに魅せられてカスタマイズに目覚めたエンリケにとって、夢をそのまま形にしたようなスタイリングが生み出された。ボンネットとディフューザーもJDMを代表するトップシークレット製で、ドアミラーはガナドール製。カスタムLEDで製作したターンシグナルは、純正よりも細身でクールなところがお気に入り。

インパネ全面とクロモリのロールケージには手縫いのレザーを丁寧に張り合わせ、ルーフライナーにはアルカンターラを採用。

ブラックレザー製のレカロシートの背面と座面には、ビンテージのピンバッジを取り付けたカスタムレザーを追加した。

助手席の足元にはポルシェのカーペットを張ったリッドが備わり、取り外すと中にエンジン制御を司るMoTeC M820が鎮座する。

日本びいきのオーナー、エンリケ・ムニョスは空手や相撲などの格闘技も愛好。本業においては日本のユーザーも多い大人気オンラインゲーム“Overwatch(オーバーウォッチ)”のグラフィック制作を担当した。ジブリ映画や日本のRPGに通じる世界観も味わえるゲームだが、日本の文化がアメリカのクリエイターにも影響を与えていることは、喜ばしい限りである。

Builders

Overall Master Builders: Twins Turbo Motorsports, Eric & Marc Kozeluh, Carlos Valenzuela, Ly kuy, Dasanti Yem/Custom metal work and ducting: Mark DelongPaint: Buddha Concept Designs, Long & Jim LeInterior: Gabe’s Custom Interiors, Gabriel Lopez, Jesus Lopez, Gabe Jr. Lopez, Adrian Lopez, Carlos LopezWiring: GP Motorsports, Greg Pyles/Tuning: TunedbyShaneT, Shane Tecklenburg

web option編集部

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