F1のグリッドガール廃止。日本の「レースクイーン」への影響を考える

日本で言うところの「レースクイーン」はスポンサー企業のロゴが入った衣装を身にまとって笑顔を振りまいて立っているだけ、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、そうではありません。

まず第一の業務としてスターティンググリッドに並ぶマシンのドライバーを直射日光や雨から守る、ということが上げられます。上の写真にしても麗しいポージングをしながらもドライバーを完璧に直射日光から守っています。

特にフォーミュラーカーは屋根が無いので雨ともなればドライバーはずぶ濡れになります。身を挺してその雨からドライバーを守るのがレースクイーンです。自分は雨に濡れてもドライバーは濡らさない、というところにプロ意識を持つレースクイーンは大変に数多いのです。だからこそレースクイーンは傘が必須アイテムなのです。

また、レース終了後にパルクフェルメにドライバーを迎えに行き、ドリンクを渡したり脱いだヘルメットを受け取るというのもレースクイーンの大事な仕事。

レースクイーンの発祥は日本だといわれており、鈴鹿8耐もしくは富士グランドチャンピオンシリーズのどちらかが始祖という説もあります。今までお伝えした内容の業務を行っていた女性スタッフにスポンサーロゴの衣装を着せてみたら大人気となったことが始まりで、そこから専任の女性スタッフがレースクイーンになっていったというのが定説です。

F1で言うところのグリッドガールとは全く違うもので、チームスタッフからの派生で誕生したものであるということはお解かりいただけたと思います。そして現在のレースクイーンの仕事には、上記業務のほかにスポンサーの商品やサービスをアピールするという広告宣伝業務も加わっています。

スーパーフォーミュラーやスーパー耐久などののスタート進行では、コントロールライン上に集合してセレモニーに参加するなどしてスポンサーのアピールを行います。またスーパー耐久のD-Station Fresh Angelsのように、参戦チームが大会スポンサーとなることでチーム所属のレースクイーンが大会のイメージガールと兼任になることもあります。

WEC世界耐久選手権などグリッドガールがはじめからいないカテゴリーの国際レースでは、開催国のアピールのためにセレモニーイベントを行いますが、そこに登場するキャストはレースクイーンとは別の存在となります。

これらを踏まえて今回のF1グリッドガール廃止の件を考えてみると、選出採用の手順や業務の内容などの違いから日本のレースクイーンに直ちに影響があるとは考えにくいと思います。

そして一説にある性差別問題でも、F1グリッドガール廃止の件が発表されてから多くの現役レースクイーンやレースクイーン経験者がtwitterなどのSNSで「差別を感じない」といい、また「レースクイーンという仕事に誇りを持っている」と発言しています。

この発表があってからさまざまな議論が起こっていますが、誇りが持てる仕事と胸を張って言える方々がいるのだ、ということは念頭においていただきたいと思います。

(写真・文:松永和浩)

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https://clicccar.com/2018/02/01/555659/

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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