街でみかける三輪の乗り物。必要なのは「普通免許?」「二輪免許?」【クルマにまつわる免許・資格おさらい】

■三輪車に乗るには特別な免許が必要?

大迫力のトライクも3輪車の仲間です
大迫力のトライクも3輪車の仲間です

道路を走っていて、時折見かける三輪の乗りもの。

昔からあるスクーターの一種で、ピザの配達などで使われているものもあったりしますが、乗り手もヘルメットを被っていたりいなかったり、ナンバーも見慣れないものもあったりして、いまいち分かりにくいジャンルかもしれません。

「そもそも三輪車の免許ってあるの?」「なんでヘルメットを被ってないの?」などと疑問が沸いてくることもありますね。

なかでも、フロントタイヤが二輪のものは、まだまだレア。どんな免許で乗れるのでしょう。

三輪車とひとくちにいっても、カタチもサイズもさまざまで、運転免許にもいくつか区分があります。大きくは、バイク系(自動二輪)の免許のもの、自動車系(四輪)の免許のものに分かれます。

まずは自動二輪免許の種別の範囲内で運転できるものを紹介します。

●フロント2輪車は自動二輪免許で運転できる

ヤマハ トリシティ
ヤマハ トリシティ

フロントが二輪となる三輪車は排気量に応じて、それぞれ該当する自動二輪免許となる、小型限定普通自動二輪免許、普通自動二輪免許で運転ができます。

たとえばヤマハのトリシティ・シリーズは、排気量に125ccと155cc、300ccの3種類がラインアップされており、自動変速機構付きなので各々のAT限定免許で乗ることが可能です。

このほか、海外のモデルにも該当する車種がいくつかあります。

実はこれらの三輪車は、2009年に改定された道路交通法により新しくできた「特定普通自動二輪車」というジャンルに入ります。

以前は四輪車の扱いに入っていましたが、車体を傾けてのコーナーリングができるなど、二輪車の動きに似ているということから改正されたものです。

このジャンルに入るのは、以下の4つの項目をすべてクリアしている必要があります。

・3個の車輪を備えていること
・車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に配置されていること
・同一線上の車軸における車輪の接地部中心点を通る直線の距離(トレッド)が460mm未満であること
・車輪及び車体の一部又は全部を傾斜して旋回する構造を有すること

この改正により、以前は普通自動車運転免許が必要だったものが、排気量に応じた自動二輪免許で運転できることとなった代わりに、ヘルメットの着用が義務付けられました。

このほか、排気量51〜250ccの三輪車、道路運送車両法によるところの側車(サイドカー)付き軽二輪車も、自動二輪免許で運転ができます。ただし全幅が1.3m以下などの制限が付きます。

●トライクは普通自動車免許で乗れる!

それでは、自動車運転免許の範囲に入るものはというと、三輪車でも同一車軸上の駆動輪が2輪あるものが該当します。

たとえばトライク。トライクは二輪車をアレンジして、リアタイアを二輪とした、上から見ると二等辺三角形のようなカタチをした三輪車です。

51cc以上のトライクは道路運送車両法では側車付き自動二輪車となりますが、道路交通法では普通自動車に入ります。ポイントは左右の後輪に駆動力を与えていることで、これに該当する、側車側の車輪にもドライブシャフトが付くような側車付きの二輪車も同じです。

ときおり見かける青色ナンバーの三輪バギー(や四輪バギー)は、道路運送車両法で50cc以下のミニカーと呼ばれる区分に入ります。

排気量が小さいものの、道路交通法では三輪であっても四輪と同じ普通自動車となり、普通自動車運転免許が必要となります。それでヘルメットを被らずとも運転できるということになります。

●2輪免許にもさまざまな区分が・・

自動二輪についての免許も、その区分をおさらいしてみましょう。

ホンダ スーパーカブ50
ホンダ スーパーカブ50

最初は原動機付き自転車免許。ホンダスーパーカブ50など、排気量50cc以下の第一種原動機付自転車に乗ることができます。ちなみに、スズキe-Let’sなど、電動の場合は定格出力0.6kW以下となります。

ヤマハ E-Vino
ヤマハ E-Vino

法定最高速度は30km/hとなっており、大きな交差点での2段階右折が必要など、上位の車両とは扱いが異なる部分が多いのも特徴です。原動機付き自転車免許は普通自動車免許を取ると同時に取得できる二輪免許でもあります。

単独では16歳から取得でき、適性試験と学科試験をクリアすれば、実技は講習のみ(実技は試験ではない)ということから、一番身近な運転免許といえるでしょう。

ホンダ PCX160
ホンダ PCX160

そして、小型限定普通自動二輪免許とAT小型限定普通自動二輪免許は、125cc以下の車両が範疇。この免許で乗ることができる車両は、排気量50ccを超え125cc以下(電動の場合 定格出力0.6kW超〜1kW以下)のバイクです。

このジャンルは少し複雑で、道路運送車両法では第二種原動機付自転車、道路交通法では普通自動二輪車(小型)に分類されています。またシートがあれば2名乗車が可能となりますが、車両の区分から高速道路の走行はできません。

ホンダ CB400
ホンダ CB400

普通自動二輪免許、AT限定普通自動二輪免許では、400cc以下のバイクに乗ることができ、この区分から高速道路の走行が可能となります。いずれも16歳以上に受験資格があり、AT限定では自動変速機付きの車両のみが運転できます。もちろん2名乗車が可能で、250cc以上の車両には車検があるのも特徴です。

実際に販売されているこの区分の最小排気量の車両としては150ccのものが多く見られ、高速道路を走行できる一番小さな乗り物ということになります。

ホンダ ゴールドウィング ツアー
ホンダ ゴールドウィング ツアー

さらに上を目指すなら、大型自動二輪免許、AT限定大型自動二輪免許があります。これらは18歳以上が受験でき、AT限定では650ccまでの自動変速機付きの車両が運転できます。ちなみに、650cc以上の車両は変速機に関わらず、大型自動二輪免許が必要です。

この大型の2つの免許は試験に事前審査があるのが特徴で、車体引き起こし、スタンドのかけ方・戻し方、車体の支え方、取り回しについて操作可能かどうかをチェックされます。

教習所ではどの区分の二輪車でも審査を行う場合もありますが、試験科目にあるのは大型自動二輪のみですから、不安であれば普通自動二輪からチャレンジしてみるのも手かもしれません。

なお、2023年7月1日から、特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード等)に関する交通方法等に関する規定が施行されることになりました。

●電動キックボードは16歳以下が公道走行NG!

特定小型原動機付自転車は、道路交通法施行規則において次のような基準が定められています。

車体の大きさ:全長190cm以下、幅60cm以下
車体の構造:定格出力0.6kW以下、時速20kmを超える速度を出すことができない、走行中に最高速度の設定を変更できない、AT機構搭載、道路運送車両の保安基準第66条の17に規定する最高速度表示灯を備えている

これらの基準を満たさないものは、形状が電動キックボードであっても、特定小型原動機付自転車とはみなされず、一般原動機付自転車又は自動車に応じた交通ルールが適用されます。

特定小型原動機付自転車は、自賠責への加入、およびナンバープレートの取り付けも義務づけられています。

また、運転免許は必要ないものの、16歳未満のユーザーは運転禁止となっているのにくわえて、16歳未満のユーザーに対して特定小型原動機付自転車を提供することも禁止されています(違反した場合、6月以下の懲役または10万円以下の罰金が科される可能性があります)。

当然ですが、飲酒運転やスマホを見ながらの運転も禁止。二人乗りをすることも出来ません。各種道路標識に従い通行することはもちろん、横断歩道での歩行者の優先、緊急自動車の優先など、基本的な交通ルールを遵守することが求められます。さらに、乗車時はヘルメット着用の努力義務も課されています。ちなみに、言うまでもありませんが右折時は「2段階右折」をしなければいけません。

新たな二輪モビリティとして徐々に見かけることも増えてきた電動キックボードですが、交通社会に対して大きな責任を負う一員であることを、各人が充分に意識して乗ることが重要です。ちょっとした油断が大きな事故に繋がりかねない乗り物であることを理解したうえで、自分、そして周囲の安全のため、乗車する前には必ず交通ルールを一通り確認しておきましょう。

※2021年8月31日の記事を2023年5月19日に追記・再編集しました。

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この記事の著者

古川教夫 近影

古川教夫

1972年4月23日生。千葉県出身。茨城大学理学部地球科学科卒。幼稚園の大きな積み木でジープを作って乗っていた車好き。幌ジムニーで野外調査、九州の噴火の火山灰を房総で探して卒論を書き大学卒業。
ネカフェ店長兼サーバー管理業を経て、WEB担当として編プロ入社。車関連部署に移籍し、RX-7やレガシィ、ハイエース・キャピングカーなどの車種別専門誌を約20年担当。家族の介護をきっかけに起業。福祉車輌取扱士の資格を取得。現在は自動車メディアで編集・執筆のほか、WEBサイトのアンカー業務を生業とする。
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