エモーショナルとシンプルは両立する! マツダ・CX-5の新しい魂動デザイン(後編)

── 次にインテリアです。SUVではインパネに重厚感を持たせるのが一般的ですが、新型はセダン系と変わりませんね

「そこはマツダ・ブランドの統一した表現を出しています。要素を減らし、あくまでもドライバーの心地よさを提供するのが目的で、車種による違いは考えていません」

── 特徴的な5角形のエアダクトのモチーフは何でしょうか?

「これは初期スケッチからの案で、5角形というより方向性を示す矢印のイメージですね。矢の先が向かい合うことで、スッと引かれた1本の線を感じ、横方向の表現が出せる。実は矢の位置はかなり悩んだ結果で、この高さがもっとも横への流れが出せるんです」

── 新型はウッドと金属の組み合わせが特徴的に見えます

「硬い素材と柔らかい素材との対比ですね。たとえば、フロントの太いシグネチャーウイングから入った空気が、同じ金属調のエアダクトから室内に入ってくる。その力強さと、ウッドの持つ暖かさとの組み合わせなど。これはドアの内張りも同じですが、コンセプトのリファイン&タフネスにつながる表現なんです」

── 最後に。エモーショナルな表現は他メーカーでも見られますが、代を重ねる度により過激になる傾向があります。では、エモーショナルとシンプルの接点はあり得るのでしょうか?

「はい、その答えはきっとあると考えています。そのひとつの回答が同時期に開発したRX-VISIONなのかもしれません。RX-VISIONは、海外のデザイン・コンテストで石庭のような日本らしさがあると評価されているんですね。であれば、困難であっても、私たちはそれをマツダの独自のデザインとして打ち出したいと考えています」

── 本日はありがとうございました。

シリーズでデザインを統一するのは簡単ですが、そのイメージを持ったまま明快な進化をさせるのは非常に難しい。そこに「大人」という発想を持ち込んだマツダは、かなりいい回答を見つけたのかもしれません。

[お話を伺った方]

マツダ株式会社
デザイン本部 チーフデザイナー
諫山慎一

(インタビュー:すぎもとたかよし)

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先代の若々しさから「大人の上質」へ。マツダ・CX-5の新しい魂動デザイン(前編)
https://clicccar.com/2017/03/28/456539/

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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