さて、取り替え可能な外板に杉、フレームに樺(かば)、フロアに欅(けやき)、シートに栓(せん)など、用途に応じた木材を使い、日本古来の伝統技法により組み付けられている「SETSUNA」ですが、細部にまでこだわりが貫かれています。
まず、木を使っているのに滑らかさを感じさせるサイドビューが象徴的ですが、材料の木は、時間をかけゆっくりとしならせることで、ボディラインは船のような美しいカーブを、フロントからの眺めは七角形を、側面や上方からでは紡錘形を描いています。
人が手間暇を掛けて塗った漆である「拭き漆」という技法もそのひとつで、木目を生かすため、ドアミラーやシート、ステアリングホイール、ボディの帯状のラインなどに拭き漆を採用。
一般的に知られている「塗って重ねていく」本漆ではなく、塗っては表面を拭くことを繰り返し、木目に沿って漆が定着し、木目と漆のコンビネーションが際立つ技法だそう。
「拭き漆」により、初期の美しさもさることながら、時を経て使い込まれることで濃淡や色合いが変わり、世界にひとつだけの味わいを醸し出すそうですから、年月を経た「SETSUNA」を見てみたいところ。
見た目も印象的なシートは、木で作られた公園のベンチのように「誰をも優しく迎え、包み込むような、そんな柔らかな表情を持つシートを」という想いを具現化。「栓(せん)」の木に漆が塗られていて、身体が主に触れるところには革が貼られています。
こだわりは「木」だけではありません。アルミ製メーターは、アルミケースの中の短針は時間(1周=24時間)、長針は月日(1周=365日)を表し、「年」を刻む設計となっています。「家族と時を刻む100年メーター」という想いが込められているそうですが、まさに同コンセプトカーに合っています。
エンブレムは「刹那エンブレム」と命名され、「刹那の積み重ね」を円と放射状のデザインにより表現されていて、一秒一秒を刻む時計のようでもあり、刹那に咲く花のようでもあるデザインを採用。
アルミはメーターだけでなく、木と木の間に効果的に配置されています。ホイールキャップやステアリングホイール、シートなどにアルミニウムが使用されていて、木々との調和を図り、美しいコントラストを表現しているそうです。
さらに、「様々な材料とその組み合わせから創出される美しさ、それらが変わることを愛でる経年美を味わえる」と、木や革だけではなく、金属も傷がつき愛着を持てる材料ではないか、ということから金属も採用されているそうです。
(塚田勝弘)
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