千代田区でタクシーが暴走し死者を出す。警察も国交省も抜本的な再発防止を行う気、無し

■なぜ暴走事故は起きるのか? 再発防止策はあるのか?

●千代田区の歩行者とドライバーが死亡する暴走事故

千代田区役所前でタクシーが暴走し、歩道に居た女性などに突っ込み死亡させる痛ましい事故が9月11日に起きた。車両の損傷具合から衝突速度を想定すると、最低で60km/h。64歳のドライバーは意識不明の重体で搬送され、翌12日に死亡したと報じられている。エアバッグも展開しているし、この程度の損傷度合いで重体になることは考えられないため、突然の体調不良などの可能性大きい(心臓疾患や脳疾患は身体が突っ張るためアクセル全開になりやすい)。

池袋の暴走にも言えることながら、事故は普通に生活していた人が突如災厄に巻き込まれてしまう。本来なら事故原因をしっかり分析し、再発防止策を考えないとならないのだけれど、日本の警察は物理的な調査を得意としない。犯人捜しに終始。警察が一番好む事故原因は「スピードの出し過ぎでハンドルを切り損ねた」。もちろん最後の原因はそうなのかもしれない。けれど事故に至った理由も突き止め再発防止策を打つべき。

●暴走事故を防ぐ方法は?

トヨタの『踏み間違い加速抑制システムII』
トヨタの『踏み間違い加速抑制システムII』

千代田区役所前の暴走事故と同じケースは何度も発生している。池袋の暴走事故のようなケースだって多い。現在販売しているクルマで千代田区役所の事故を防止出来そうなのは、トヨタが一部車種に搭載可能な『踏み間違い加速抑制システムII』(30km/h以下で突如アクセル全開になったらノロノロ走行となる)のみ。池袋の暴走事故を防ぐシステムは現時点で無し。もちろんその気になれば出来るが、国交省が認可しない。

少し具体的に書くと、前方の信号が赤になっていたり横断歩道だったらカメラで認識し速度落とすことは可能。ただそれを認可すると、国交省が巨費を投じて進めている「信号情報をビーコンなどでクルマに送り制御する」というITSなど不要になってしまう。30km/h制限の表示を認識して40km/h程度しか出ないようにすることも簡単。40km/hなら現在の自動ブレーキで歩行者や障害物を検知しての急制動を掛けられます。

写真はイメージです
写真はイメージです

これまた現時点でも採用しようという動きになっていない。クルマは今日も制御不能になってしまう危険性を持っていると言うことだ。だとしたら歩行者は自己防衛しなけばならないだろう。なのに警察は「横断歩道で必ず止まれ」。そして止まらなかったクルマが悪いと言う。当然ながらクルマは止まるものだと歩行者も考える。私の孫には「横断歩道の信号が青になっても左右を必ず見て渡れ」と教えてます。クルマ、必ず止まるワケじゃない。

●東京パラリンピック開催中のeパレット歩行者接触事故からわかること

先日、東京オリンピックの選手村で自動運転車eパレットが歩行者と接触事故を起こした。事故の概要は私のWebで分析しているが、多重の安全対策をしたって必ず”漏れ”も出てくる。eパレットの事故、極めて珍しいことに警察は”犯人捜しをしない”ことになりそうだけれど、自動運転の事故防止策を構築すると「単純な歩行者優先」にならないと思う。歩行者優先だとクルマは止まってばかりになり、移動の道具じゃなくなります。

歩行者優先だと移動手段として成り立たない

下は狭い道からバス通りに飛び出してくる自転車。タイミング悪ければ衝突する。子供の頃から続く歩行者優先意識のまま「軽車両」となる自転車に乗ってしまう。歩行者の移動速度なら車両から見ていて停止可能。けれど自転車の移動速度だとブレーキは間に合わない。eパレットの事故と全く同じパターンだ。そもそも自転車は降りて押している状況以外、軽車両。加えて手前に自転車用の一時停止ペイントもある。

●国や行政が守ってくれるのを待つよりもまずは自分で自分の身を守るべし

はたまたガードレールすらない車道のすぐ横で遊んでいる子供もいる。明らかに危険。この距離で急に動かれたらブレーキだって間に合わない。おそらく親や学校が車道の危険性を教えていないんだと思う。根っ子は東京オリンピックの選手村やバス通りに飛び出してくる自転車と同じ。警察や、もう少し大きいくくりで考えたら国がホンキで痛ましい事故を防ごうと考えているのなら、抜本的な総合交通システムを考えるべきだ。

それまでドライバーとして出来ることは、今まで以上に慎重になることだけ。さらに痛ましい事故が起き(高齢者の比率が急増すると看過出来なくなると思う)、国として本格的な対策をしようという流れになるまではいかんともしがたい。また、自分の子供や孫などには信号が青でも左右の安全確認をして渡るよう教えるしかない。歩行者が自ら安全を確認すれば、少なくとも横断歩道での事故から自分の身は守れる。

著者国沢光宏